かつて東急百貨店東横店西館9階にあった劇場「東横ホール」には、彫刻家イサム・ノグチがデザインを手がけた緞帳(どんちょう)が下がっていた。その緞帳の作品タイトルは「NO END(無窮)」――「久しい過去に始まって、変わらず続くこと」という思いが込められている。「東横ターミナルデパート(東横店)」の営業終了は、まさに「緞帳を下ろすこと」を意味するが、イサム・ノグチが込めた「NO END」の思いと同じく、「ターミナルデパート」が築き上げてきたカルチャーは、これからも消え失せるものではない。
この特集企画では、鉄道、百貨店、建築、アート、エンタテイメントといった視点から再評価を行い、戦前から85年の歴史を持つ「東横ターミナルデパート」が果たしてきた役割を客観的な立場から捉え直してみました。建物が解体されると、人びとの記憶も次第に消え失せていくが、同特集が「ターミナルデパートの記憶」として、後世までアーカイブされていくことを切に願いたい。