ここまで、年末の特別企画として、2008年の渋谷で起こった重大ニュースを座談会形式で振り返ってきました。後半は、これまで話題に上ったニュースとともに、2009年の渋谷キーワードについて考えてみました。
まつゆうさん
「ヤプログ!」プロデューサー
1978年生まれ。ブログ「プチレディブログ matsu-you's eye!!」にて、‘かわいい’ものを発掘中。 »もっと詳しく
杉浦太一さん
「CINRA」代表
1982年生まれ。カルチャー情報サイト「CINRA.NET」にて、若手アーティストを紹介中。 »もっと詳しく
『発信から編集へ』
杉浦さん:前半のブックファーストの移転で1つのシンボルが失われた、っていう話もそうなんですが、いまの渋谷って、個性的なものがなくなってきているんじゃないか、という気がしています。副都心線が繋がったり、チェーン店が増えたり。
編集部:確かに副都心線が開業したことで、駅周辺の再開発には拍車がかかっていますね。地価が上がって、個人でやっているような小さなお店は撤退せざるをえない。
杉浦さん:僕は、渋谷って、このままだと新宿に近づいていくんじゃないかなかと思うんですよ。どこかのお店に行ったり、何気なくよくいる場所だったり、自分がその街にいることを「選んだ」意識があんまりない、みたいな。ただ、それを、僕はあんまり悪いことじゃないと思ってて。渋谷って、東横線とか、半蔵門線とか、井の頭線とか、JRとか、いろいろな路線が繋がっている街じゃないですか。例えば、東横線をとってみると、中目黒とか学芸大学とか、沿線の駅があって、その沿線からの発信情報もあります。未来の渋谷には、そういう沿線の駅から発信されてくる情報も、集約して発信していけるような、そんな力があったらいいなぁって思います。自分たちで発信していく、っていうよりも、周りの声を「編集」していくような感じに近いのかな。アーティストというよりもプロデューサー、みたいな。そういうイメージを持っていますね。
編集部:なるほど。より楽しむためには、高い編集能力が求められますね。
杉浦さん:そうですね。
編集部:では、まつゆうさん、お願いします。
まつゆうさん:セコンドっていう文字が書けなかったんで、15で止めたんですが…。
『SHIBUYA15』
まつゆうさん:渋谷15秒、っていう意味なんです。私、いつもデジタルムービーカメラ 「Xacti (ザクティ)」を持ち歩いているんですね。それで、最近はちょっとやってないんですが、15秒で撮った渋谷の風景をブログにアップしてて。
編集部:あ、観たことあります。「eyeVio」や「YouTube」に上げているやつでしょ。
まつゆうさん:私、もともと渋谷の近くに住んでいたこともあって、小さい頃から今でも、遊ぶ場所はほぼ渋谷なんですよね。だから、新しい渋谷も知ってるし、古い渋谷も知ってるし、今の渋谷でみんなが見えるものも見えないものも、他の人より見えてるな、って自分で思うんです。でも、渋谷で働く人たちからしたら、いまの渋谷のイメージって割と凝り固まっていますよね。私からすると「そんなの渋谷じゃない!」っていう気持ちがあって。だから、私や友だちが遊んでいる本当に日常の風景として、15秒間だけ渋谷を動画で切り取って、ほとんど編集しないで、サイトにアップして垂れ流しにする、っていうのを、趣味でやっているんですよ。去年は何となくやっていただけだったんですが、渋谷がどんどん変わって、急に今までの渋谷じゃなくなっちゃったりするので、来年はそれをもっと本格的にやっていこうって思っています。
編集部:15秒という長さに理由はあるんですか?
まつゆうさん:動画の1分って、めちゃめちゃ長いんですよね。私、以前コマーシャルのモデルをやってて、すごいたくさんのCMに出させてもらったんですね。で、CMの時間枠の15秒間って、絶妙な長さだと思ってるんですよ。来年はいろんな渋谷の15秒CMをやりたい、って思ってます。世界の人、地方の人、あと、渋谷にいるけどそれを知らない人に「ちいさな渋谷」を15秒間で見て欲しいですね。
編集部:すばらしいですね。では、シモダさん。
シモダさん:なんかねぇ、どんどん発表したくなくなってくる…(笑)
『246の歩道橋は大丈夫なのか』 → たばこ
シモダさん:僕はねぇ、タバコ! その上にある「246の歩道橋は大丈夫なのか」っていうのはねえ、まぁ消したんですけど…なんかねえ、柔らかいんですよ。
一同:確かに!
編集部:JR渋谷駅西口(南改札口)を出た左手の歩道橋ですね。
シモダさん:そうそう。あそこの地面が柔らかすぎて、2009年、なんか起こるんじゃないの!?っていうのを書いたんですけど、これまでの話の流れを聞いてると、ちょっとどうなんかと…
まつゆうさん:や、でもこれすごい重要ですよ。私もそう思ってた!
杉浦さん:うん、重要です。
シモダさん:そう、柔らか…いや、タバコのほうをしゃべらせて下さい(笑)!あの、2008年になってから、急にタバコが変わったと思うんですよ。僕は東横線を使っているんですが、ちょうどその柔らかい歩道橋のある西口のトイレ前に、喫煙所がありますよね。あそこに群がる喫煙者の量が増えたような気がするんですよね。僕も喫煙者なんで、これまではあんまり気にしていなかったんですが、最近タバコの匂いが、もうブワーッて来るようになって。これは、もうほんとに喫煙者が1カ所に集められて、集まったところを一気にたたきつぶされる予兆のような気がして…
編集部:わかります。上から何か爆弾でも落とされたら、一気につぶせますもんね。
シモダさん:僕もヘビースモーカーなんですが、タバコはマナーを守ればいいと思うんです。けど、街を見ていると、本当に潰しにかかられてるなって思ってて。
宮本さん:さっきカフェの話がでましたが、ハイ・スコアの一角ってカフェが固まってるじゃないですか。あの辺りに以前STUSSY(ステューシー)があったんですが、今はカフェになってるのって、わかりますか?
一同:ありますあります。
宮本さん:あそこだけ全面禁煙なんですよね。ほかのカフェはタバコを吸っている人も吸わない人も一緒くたなんですけど、吸わない人オンリーのカフェがポンッとできて。逆に言えば、上手い商売のやり方ですよね。
まつゆうさん:そこって流行ってるんですか?
宮本さん:うーん?どうでしょう?オープン初日はすごい安かったんですよね。
杉浦さん:僕はノースモーキングっていう看板をみて、選択肢から外しました(笑)
宮本さん:あと、最近歩きタバコをする女の人をこの周辺ですごいよく見ますね。タバコを吸う女性が増えてきた、っていうのもあるんでしょうけど。
まつゆうさん:私、タバコがすごい苦手なんですよね。よくタバコを吸いながら歩いてる人の煙で気持ち悪くなることがあります。あと、体がぶつかって、服にタバコを付けられたことがあったり、子連れの友だちと歩いていて、子供の目のところに火があったり…。
シモダさん:あぁ、それ、JTがCMやってますね。
まつゆうさん:喫煙所にタバコを吸う人たちが集まっているのも、その近く通ると臭いからイヤなんですよね。だから吸わない立場からも、もっとタバコを吸える場所を増やすとか、どうにかしてくれないと、歩きタバコは増えるし、喫煙所の周りは臭いし…。
シモダさん:以前は、渋谷って、タバコ屋の前とかカフェの前に、灰皿だけ置いてありましたよね。それが最近なくなった。
まつゆうさん:えー、どうしてですか?
シモダさん:まぁ吸うなってことなんじゃ…あれ?渋谷って、路上喫煙禁止でしたっけ?
編集部:渋谷区では、条例ではなくルールです。マナーとして呼びかけているという形ですね。会社の中ではどんな風になっているんですか?
シモダさん:会社もいま禁煙ブームですね。これまで、喫煙所でのコミュニケーションが多かったんですよ。禁煙したら誘い合うことがなくなって、雑談ができなくなりましたね。
宮本さん:渋谷区限定タバコもありますよね。
編集:そうですか。初耳ですそれ。
宮本さん:あの、あそこにタバコ屋さんあるじゃないですか。すごい匂いを放っているトンカツ屋さんの近く。あそこで売っているんですよ、渋谷区限定パッケージ。渋谷のクリエーターとかに引っ掛けて、パッケージも違いますよ、っていう。しかも売り切れでした(笑)
シモダさん:2009年はちょっとたばこの締め付けがもっと厳しなると思いますよ。
編集部:社会派ですねぇ!
シモダさん:海外だと、タバコって700円とか800円とかするでしょ?日本でのタバコの値上がりの話は、今年はなくなりましたけどね。でもこれからどんどんクリーンな感じになっていくんちゃいますか?
まつゆう:800円になっても吸います?
シモダさん:うーん吸ってる気がしますね。今はヘビースモーカーなんで、それは辞めると思いますけど。
宮本さん:タバコを辞める人って、スパッと辞めますよね。
シモダさん:いま手持ちのたばこを、箱ごとギュッと握りつぶして捨てられたら辞められるって言いますね。「何本残ってるかなぁ」ってちょっと見ちゃったりする人は辞められない。
杉浦さん:決意の問題ですね(笑)
編集部:ありがとうございます。では、最後に宮本さんお願いします。
宮本さん:はい。僕は、来年は「変わる」っていう。
『変革 ※価値観が多様化/街が多様化する年』
宮本さん:価値観が多様化する年かな、と。ただ、さっきの杉浦さんの「どう編集していくか」という話じゃないですけど、良い風に変わるのか、悪い風に変わるのかは、わからないですよね。ヤマダ電機(LAVI渋谷)も、H&Mも、今は盛り上がって名前が出てきていますが、結局はチェーン店。オープンしてしばらくして慣れちゃうと、新宿と変わらなくなります。それって、無個性になるってことでもあるし、選択肢が増えるってことでもあると思いますね。
編集部:撮影で「渋谷の街」に出て感じることってありますか?
宮本さん:多分皆さんの話してる渋谷って、駅から109方面ってイメージが強いと思うんですよね。一般的にもそうでしょうし。でもスナップの撮影では、原宿の方面も渋谷ってイメージを持っています。で、原宿でも、神宮前の交差点にあるGAPから青山側って、高級ブランドばかりじゃないですか。でも逆にギャップから原宿側って、表参道ヒルズができたくらいで、「聖域」って言うと変なんですけど、あんまり今も昔も変わりませんよね。だから、もう少し広い視野で渋谷を捉えると、これから、銀座と新宿が繋がったような街になっていくんじゃないかな、って気がしますね。
編集部:ありがとうございます。ではちょっと僕も。
『CHANGE』
編集部:オバマさんのマネですが。一番大きいのは、やっぱり「オリンピック」かなぁ。実は、いまある渋谷の遺産って、1964年の「東京オリンピック」のときに出来たんですよね。渋谷川と宇田川が暗渠になって今のキャットストリートになっていたり、代々木公園ができたり、高速道路も246も青山通りもオリンピックをきっかけに整備されました。だから、もし次のオリンピックが東京に決まったら、渋谷の街ってものすごく変わるんじゃないかと思うんですよ。良い意味でも悪い意味でも、オリンピックが決まる決まらないが、渋谷の今後の変化に大きく関わってくるんじゃないかなぁって思いますね。
まつゆうさん:オリンピックが決まる可能性って、どれくらいあるんですか?
編集部:私の聞く限りでは、低くはないと思いますよ。
まつゆうさん:私は是非やって欲しい。オリンピックが近所でやっていたら、やっぱり観に行きますよね。遠くの国でやってたら行けないじゃないですか。近所でオリンピックっていうのは、死ぬまでに1回。こんなチャンスって、ないですからね。
編集部:そうですよね。発表は来年2009年10月2日らしいので、まぁ楽しみに待つとしましょう。
みなさん、今日は長い時間お付き合い頂きありがとうございました。
また来年も、この座談会を恒例化していきたいと考えていますので、宜しくお願いします。