「食」をテーマに悲しくも可笑しい人間模様を描いた映画「飯と乙女」@ユーロスペース
「食」と「ブッダ」をテーマに悲しくも可笑しい人間模様を描いた映画「飯と乙女」が2011年6月18日、渋谷ユーロスペースで公開が始まる。コンビニ、スーパー、ファーストフードなど、手を伸ばそうとすれば簡単に食べ物が手に入る「飽食の時代」。一方、ストレスによる過食症に拒食症、はたまた消費期限切れや農薬残留、遺伝子組み換え食品、さらに最近では放射能汚染に至るまで、現代人は食にまつわる問題に常に悩まされ続けている。人間は食べなければ生きられない。しかし食べていくこと、生きていくことは苦しみでもある――「すべての苦しみはおよそ食糧から生ずる」という仏陀(ブッダ)の言葉をテーマとした同作品は、人間の欲望の一つである「食欲」を巡って苦悩する人びとの様子を描いた群像劇。
ストーリーは、料理を人に食べてもらうことを生き甲斐で渋谷のダイニングバーで働く女性(砂織)と、そのお店の常連客でありながら、他人の作ったものが一切食べられない男性(九条)。同棲中の彼氏が働こうとしないストレスから過食症となった女性(美江)と、美江の妊娠告白以来、消息不明となった男性(小日向)。大皿料理をたいらげる大食漢の妻(咲枝)と、会社経営難から家族を食べさせていくことに悩む夫(小中)。あまりの空腹のため愛娘(結美)の弁当を食べてしまった小中は、そんな自分に嫌気が差し「即身仏」になるため、段ボールハウスへ篭ってしまう・・・。そんな「食」に苦しむ3組の男女の織りなす味わいあるストーリー展開で、現代人の抱える心の闇を浮き彫りとする。タイトルの「食と乙女」は、テーマ曲になっているフランツ・シューベルト作曲の弦楽四重奏第十四番「死と乙女」から取ったもの。病に倒れ死を前にした乙女と死へと誘う悪魔の対話を描いたシューベルトの旋律は、生気と悲哀に満ちたストーリー構成にも重なり合う。
監督・脚本・編集の三役をこなすのは、長編映画デビューとなる栗村実さん。1971年生まれの栗村さんは大学を卒業後、コロンビア・カレッジ・ハリウッド映画学科で学び、帰国後にギャガ・コミュニケーションズで制作を経験。2000年よりフリーランスとして映像制作を始め、2005年に短編「スタジオワーク」を監督。同年に映画配給・制作会社「ナインマイルズ」を設立し、映画「ヤッターマン」(日活)のメイキングや映画「人生に乾杯!」の買い付けなどに携わってきた。「自社の資金で撮れるものを撮ろう。何とか映画祭に出して、そこから劇場公開に繋げよう」という栗村さんの強い思いから始まった同作品は、第61回ベルリン国際映画祭 Culinary Cinema(食の映画)部門正式作品、第32回モスクワ国際映画祭 NETPAC(最優秀アジア映画賞)受賞、第11回アジアティカ映画祭 審査員特別賞 観客賞受賞など海外で高い評価を得て、今回の国内での劇場公開に至った。
出演は「名前のない女たち」で鮮烈な印象を残した新進女優・佐久間麻由さん、元宝塚でテレビ・映画へと活躍の場を拡げ続ける田中里枝さん、「板尾創路の脱獄王」の脚本を手がけるなどマルチな才能を発揮する増本庄一郎さんらなど。
公開を記念し、6月18日(土)上映後に佐久間麻由さん、田中里枝さん、上村聡さん、菊池透さん、増本庄一郎さん、栗村実監督さんらの舞台挨拶を予定。さらに6月21日(火)上映前、「<死と乙女>演奏イベント」としてシューベルト弦楽四重奏第十四番「死と乙女」より劇中使用部分で構成した特別バージョンを生演奏を予定(東京原宿カルテット、約13分間)
「飯と乙女」
2010年/日本/カラー/75分/HD 英題:Food and the Maiden
© 2010 9miles, inc.
○期間:2011年6月18日〜
○劇場:ユーロスペース
○料金:一般1700円/大学・専門学校生1400円/会員・シニア1200円/高校生800円/中学生以下500円
○監督・脚本・編集:栗村実
○出演:佐久間麻由、田中里枝、岡村多加江、上村聡、岸建太朗、菊池透、増本庄一郎など
○公式HP:http://www.9miles.net/meshiotome/
○制作:ナインマイルズ
○配給:フェイス・トゥ・フェイス
(2011/06/15)