渋谷駅にほど近く、渋谷ヒカリエに隣接する「宮益坂ビルディング(宮益アパート)」は、渋谷の長老とも言える存在感のある建物だ。1953(昭和28)年、日本初の「鉄筋コンクリート造分譲集合住宅」として誕生。11階地下1階建ての住宅には2基エレベーターが備えられ、当初はエレベーターガールが同乗していたほどの超高級住宅だった。各部屋にはセントラルヒーティングが完備され、ビル内には交換手による電話、ダストボックス、郵便投函用のメールシューターなど、当時の最先端設備が備えられていたという。当初は1階が店舗、2〜4階が事務所、5階以上が住宅として分譲されていたが、渋谷の街の変化とともに住宅部分の事務所化・賃貸化が進み、最近では区分所有者がほとんど居住していない状況となっていた。
築60年以上を超え、建物の外壁や給排水管などの老朽化が進む中で、約25年前から建替え計画が練られてきたが、区分所有者間の合意形成がなかなか進まず、建替え決議までにかなり長い時間を要してきたという経緯がある。2012年の決議成立を受け、2016年からようやく本格的な工事が始動。建替え後は、15階地下2階建ての複合用途型マンションに生まれ変わるそうだ。1階に店舗、2〜4階に事務所、5〜15階に住居(152戸)で構成。また将来的にマンション3階レベルで銀座線の上に設置が計画されている歩行者用デッキと接続し、渋谷駅や道玄坂方面への移動の利便性が高まるという。竣工は、2020年の予定。渋谷駅東口の再開発と同時に、宮益坂の風景の一つであった宮益坂ビルディングも一新されることになる。