「渋谷パルコ」の建替えと同時並行で、現在、公園通り沿いの渋谷区庁舎の建替え工事も進んでいる。前回の東京五輪(1964年)の開催に合わせて、在日米軍向けの住宅「ワシントンハイツ」の跡地に、国立代々木競技場やNHK放送センターと共に建設されたのが、「渋谷公会堂」を含む「渋谷区役所」だ。
「渋公(シブコー)」と呼ばれ、ロックバンドなどのコンサート会場として親しまれてきた渋谷公会堂は、もともとは東京五輪の重量挙げ競技の会場として建設されたもの。五輪後の1965年、渋谷区役所は神南一丁目(旧電力館のあった場所)から同所に移転すると共に、渋谷公会堂はコンサートホールへと改修された。建設から半世紀を経て建物の老朽化などが進む中で、新庁舎と新公会堂は、分譲マンションを含む計3棟で建替え工事が進んでいる。
新庁舎は地上15階地下2階、新公会堂は地上6階地下2階。また隣接する敷地(4,565平方メートル)には、高さ136.5m、地上39階・地下4階の超高層分譲マンション(総戸数505戸)が建設される。三井不動産、三井不動産レジデンシャル、日本設計の3社グループは新庁舎および公会堂を建設する対価として、敷地の一部(4,565平方メートル)を70年の定期借地(権利金211億円予定)で借り受け、分譲マンションを建設するという事業スキーム。これに伴い、渋谷区は建築費の負担ゼロで新庁舎・新公会堂の整備を行うという。完成は2018年度を予定。
さらに公園通りの先、渋谷区新庁舎にほど近い「NHK放送センター」も2020年の東京五輪の終了を待って、建替え工事が本格的に始まる。東館(昭和40年竣工)、西館(昭和43年竣工)、本館(昭和47年竣工)、NHKホール(昭和47年竣工)、北館(昭和63年竣工)、ふれあいホール(平成16年竣工)の計6つの既存施設は、継続使用する「NHKホール」を除き、ニュースセンターなどが入る「情報棟」(地上9階、2025年)、映像・音声スタジオなどが入る「制作事務棟」(地上18階、前期:2030年、後期:2035年)、スタジオパークなどが入る「公開棟」(地上4階、2035年)の3棟体制に変更。工期は、2020年〜2036年までの計16年をかけながら、段階的な解体と建設を同時に進めていくという。
次の50年を見据えて、渋谷では「駅周辺」から「公園通り一帯」へと再開発の波が広がっている。キーとなるのは、やはり2020年の東京五輪。渋谷パルコなど公園通り計画(仮称)は五輪前に建設を終了し、国内外の来街者拡大に伴う「五輪景気」などを見込む。その一方、オリンピック中継などを支えるNHKは、五輪後に落ち着いてから本格的な工事を進めていくようだ。いずれにしても2020年の東京五輪を軸として、「渋谷のまち」が大きく変わろうとしている。