JR渋谷駅から最も近い“オアシス”といえば、駅から徒歩約5分、山手線沿いに位置する宮下公園だ。広さ1万808平方メートルの園内には木々がうっそうと茂り、昼間でも少し薄暗いほど。買い物途中の若者や近隣で働く人々が一休みする姿が目立つほか、スポーツを楽しむサークルや子どもたちも集まり、駅近くの貴重な緑地として幅広く利用されている。とはいえ、「空中公園」として開業してから半世紀を経て、建物の老朽化が叫ばれる中で、宮下公園及び駐車場は渋谷駅周辺の再開発と連携し、渋谷川から原宿方面への緑を形成する新しい都市空間として見直しが図られている。
そもそも宮下公園が誕生したのは、戦後間もない1948年。当時、駅前の東横百貨店を除いて周囲には高い建物はなく、渋谷川と宇田川に挟まれた野原が整備された程度の公園だった。それが1964年の東京オリンピック開催に伴って河川が暗渠化され、さらに近い将来に訪れるであろう自動車社会を予測し、1966年に下に駐車場、上に公園を持つ空中公園として整備される。当時は空中公園が珍しく、大きな話題を集めたという。建設から半世紀以上を経て老朽化や耐震不安などが生じる中、にぎわい創出する「緑と水の空間」の形成や、駅再開発と連携する駅と公園のアクセス強化、さらに2020年の東京五輪を迎えるにふさわしい公園としての整備を目的とし、渋谷区は公募型プロポーザルを開始。2014年8月に宮下公園等整備事業の事業者として、三井不動産が選定された。「宮下公園等整備事業」の計画案によれば、宮下公園を従来の空中公園と同じく「立体都市公園」として維持しながら、より明るく地域に開かれた公園として整備を行う。メインの公園のほか、243台が収容できる「新渋谷駐車場」や、3階建ての「商業施設」、200室程度の「宿泊施設(ホテル)」などが複合する施設へと大胆な変身を計画する。そのほか、渋谷駅方面のアクセスを強化する歩行者ネットワークの形成や、地域の防災機能も高めるという。
建設費は新庁舎のスキームと同じく、公園の敷地の一部を30年間の定期借地権として三井不動産に貸付し、商業施設やホテルの建設を行う。これに伴い、新宮下公園の建設費に対する財政負担の軽減を見込む。開業は2019年8月を予定。