GEIDAI-CINEMA #4 /GEIDAI-ANIMATION 01+
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■GEIDAI-CINEMA #4 映画専攻第4期生全修了作品 作品解説=筒井武文(映画監督)
『海への扉』
2010/HD/16:9/カラー/70分
監督・脚本:大橋礼子/出演:兼子舜、富田理生、大浦龍宇一、ガダルカナル・タカ、洞口依子、千浦僚
女子学生が投げた紙飛行機がお目当の偽大学生に届かず、考古学の准教授が拾ったことにはじまるクラシックな三角関係のドラマである。いまどきになぜと思われるメロドラマへの挑戦なのだが、細部のアイデアが生き、理屈抜きの愛の世界の構築に成功している。大橋礼子は、恋愛とは地に足が着かぬ者同士の行為だと信じている。これは比喩ではない。偽大学生のケンは仕事の新聞配達を当然、自転車で廻っている。女子学生のハルが大教室の机の上を跳ね上がりながら駆けるのもその故だ。足が地面より数センチでも浮いていることが恋愛の条件なのである。ここでの求愛の儀式を見よ。かくして、女は自転車の男と自動車の男の間に挟まれる。主役トリオの葛藤も見ごたえ充分だが、洞口依子の突飛な母親や、うだつのあがらない新聞配達の先輩など周りの登場人物の隅々まで愛が感じられるのが好ましい。そうした描写の積み重ねが、後半の痛ましさを生むのである。
『CAGE』
2010/HD/16:9/カラー/61分
監督:栗本慎介/出演:中丸新将、大谷英子、内田雅樹、玉城タイシ、比嘉玲子、筒井真理子
市役所の生真面目な公務員元宮が犯罪の臭いを嗅ぎ取り、妄想と紙一重の危うさで、女性を守ろうと素人探偵を演じはじめる。まず冒頭が素晴らしい。森の木々をなめるキャメラが重ねられるうちに、アイリス画面になり、バードウォチングの公務員の視点へと導かれる。ここで、覗き見るという主題が提示され、やがて婚姻届を出しにきた女性を監視するため、隣争太のマンションの屋上へと登るのである。そこから覗かれる彼女の部屋が何とも鳥籠のようであり、電話でのやり取りとあいまって、倒錯的な距離の意識にどきどきさせられる。寝たきりの実の娘の身代わりのような擬似的な父娘関係が進行していく。アメリカ映画というより、フランス製ノワールに近しい感触は、栗本慎介の持ち味なのだろう。濃密なサスペンスに酔わされる一篇である。
『テト』
2010/HD/16:9/カラー/104分
監督・脚本:後閑広/出演:阿部翔平、安藤サクラ
東京湾に浮かぶ落下傘。国の諜報員訓練生テトが落下地点の計測に失敗したのだ。テトは水を含み重い落下傘を引きずり、泥濘を進む。一方、鬱屈を抱えた女子高生ハト子は、傷だらけの猫の飛び降り自殺を目撃する。親なしで育ったテトは、孤児出身の劇団に潜入するミッションを与えられるが、ここら辺から、映画は曖昧な時空を漂いだし、自己の不確定性に直面するテトは、まるでスパイ映画から時代劇まで、さまざまなジャンル映画を漂流する試練を与えられているかのようだ。これは、後閑広による現代への批評でもあるのだろう。猫の落下の鮮烈さしかり、終盤のコインランドリーのガラスに映る白馬のイメージの衝撃しかり。そんななか、テトが拾った古い地球儀が狂言回しのように、運命を暗示する。それでも、テトとハト子に託される未来が安直なハッピーエンドでないだけに、より感動的だ。
『浮雲』
2010/16mm/4:3/カラー/55分
監督・脚本:長谷部大輔/出演:梶田豊土、松元夢子、野村喜和夫、淡島小鞠、ほたる、愛葉るび、岡部尚、西本竜樹、工藤和馬
タイトルに騙されてはいけない。これは徹底してダークな大人の童話である。クモスケという何を考えているかさっぱり判らない男が主人公なのだが、この徹底的な虚無性がピンク映画的変態家族ものに融合し、とんでもない畸形性を帯びてゆく。ぬけぬけと挿入される浮雲が、クモスケの浮遊性を象徴しているのかもしれない。クモスケは結婚した元カノの家に転がり込むのだが、そこには寝たきりの妹がいて、夫は連続婦女殺人の容疑者そっくりの風貌なのである。クモスケが買った片目の売春婦が妹の高校の後輩だと知れ、二人はクモスケの眼前で妖しい遊戯へとふけっていく。高校の歴史の授業の記憶が鎧武者のイマージュを呼び寄せる描写が圧巻である。この畸形性は長谷部大輔の人間の裏面への探求とその形象化への情熱から来ているが、これだけの個性が今後どのように伸びていくか、目が離せない。
『真夜中の羊』
2010/HD/16:9/カラー/73分
監督・脚本:ヤングポール/出演:岡部尚、宮本りえ、山田キヌヲ、松浦祐也、吉岡睦雄、本城丸裕、綾田俊樹、なかみつせいじ
日常を描いた青春ドラマのように始まるが、町への隕石の落下をきっかけに、不気味な影が主人公を覆ってゆく。ジャンルとしては、SFホラーになるのだろうが、印象としては、爽やかさが強く、その二重性が独特である。一見ぶっきらぼうだが、実は緻密な演出なのだ。不動産屋、雑貨屋、とりわけ空き家といった室内空間から、商店街から森へと拡がる野外へと、時折挟まれる動物のインサートを含め、地方都市の表情が交響楽のように展開される。瞬間移動を繰り返すような編集のリズムが素晴らしい。同時に、ヤングポールは役者の魅力を引き出すことに長けた監督でもある。不動産屋に勤務する青年慎二を演じる岡部尚が人生の不条理に接したときの戸惑いを見事に体現する。空き家になった彼の家にいきなり登場する姉の宮本りえの不思議な透明感も特筆に価する。とりわけ終盤、羊の群れに囲まれた異世界の主のような存在ぶりはどうだろう。必見の一作というほかない。
■GEIDAI-ANIMATION 01+
『四ツ谷いろは』(6分32秒)
監督:安西奈々/声:神田山陽
『賢者の贈り物』(12分48秒)
監督:石井寿和/音楽:余田有希子
『収集家の散歩』(6分13秒)
監督:大見明子/サウンドデザイン:Taro Peter Little
『服を着るまで』(9分17秒)
監督:北村愛子|音楽:松岡美弥子
『指を盗んだ女』(4分15秒)
監督:銀木沙織/サウンドデザイン:宮岡和寛
『つままれるコマ』(6分40秒)
監督:田中美妃/音楽:長島みのり
『強迫的な秩序についてのカエル』(4分05秒)
監督:永迫志乃/音楽:磯崎祥吾
『CLIMBER』(5分49秒)
監督:野中晶史/音楽:村上史郎
『PapA』(3分45秒)
監督:松井久美/音楽:村上大輔
『Googuri Googuri』(8分22秒)
監督:三角芳子/音楽:横山夏子
『わからないブタ』(10分00秒)
監督:和田淳/カラーデザイン:尼子実沙
特集上映・映画祭
■GEIDAI-CINEMA #4 =映画専攻第4期生全修了者作品
■GEIDAI-ANIMATION 01+
2008年4月、東京藝術大学大学院映像研究科に新しく設置されたアニメーション専攻第1期生による短編
料金:900円均一
※表示されている料金は全て税込みです。
※やむを得ない都合により、開催スケジュール及び内容が変更になる事があります。詳細は各主催者へお問い合わせ下さい。







