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チェチェンへ アレクサンドラの旅

上映・公演は終了しました。

2007年/ロシア/92分/配給:パンドラ+太秦/©Proline-film © Mikhail Lemkhin

INTRODUCTION
◯チェチェンの最前線でオールロケ
「チェチェンへ アレクサンドラの旅」は戦争と人間について描いた作品である。天皇ヒロヒトを描き大ヒットした「太陽」のソクーロフ監督が、現在、報道統制下にあるチェチェン共和国の首都グロズヌイにある、実際のロシア軍駐屯地とその周辺で、25日間をかけてオールロケした本作に、戦闘シーンは全く出てこない。だが戦争の本質と、人生にとり最も大切な家族や友人、見知らぬ人と人との触れ合いを、情感を込めて描き出した。

◯孫へのまなざし 平和への祈り
チェチェン共和国のロシア軍駐屯地。部隊の一将校であるデニス・カザコフのもとに、祖母アレクサンドラ・ニコラエヴナが会いに行く(ロシアでは戦地の家族が兵士を訪ねるのは珍しくないが、戦争が長引くに従い訪れる家族も減っている)。蒸し暑さが滲み出すような赤茶けた画面からは、長年の戦争に倦んだ土地の荒涼とした空気が漂う。7年ぶりに会う愛しい孫が、銃で人を撃つしかできないことをアレクサンドラは嘆く。彼女は兵士と同じテントに泊まりながら、ゆったりと、兵士や現地の人々と親しくなり、僅かの滞在で新たな世界を知る。駐屯地は騒々しく、男だけの世界でぬくもりや安らぎはない。日々の生活は味気なく、兵士たちの表情はまだ少年のようだ。

◯戦争の前線に女性がいるという現象
武器を始めロシア軍の装備は使い古されていてお粗末であり、兵士は勲章を付けたままの軍服などを現地の市場に売りに出す。軍規は乱れているようだ。前線では、毎日、毎時間、生は脅かされ死が迫っている。職業軍人であるデニスは「自分たちは現地の人々から嫌われているばかりでなく、恐れられてもいない。それなのにどうして軍隊を駐留させるのか」と呟く。だが、本作のセリフがすべてこのように直接的であるとは限らない。現在進行中の事態へのロシア映画人としての対応方法を推し量ることができる。またチェチェン人とロシア人の相互の感情も映し出される。高齢女性をたった一人で戦地に投げ出すソクーロフの試みは、前代未聞だ。
アレクサンドラを演じたガリーナ・ヴィシネフスカヤは世界的ソプラノ歌手であり、亡きチェリスト、ロストロポーヴィチ夫人としても知られている。撮影当時80歳。強くて、孫には口やかましいが、気配りが利き、おおらかですべてを受け入れる大地のような女性アレクサンドラを演じ、見る者に強い感動を残す。
なお、主演のアレクサンドラとチェチェン人女性マリカ以外は、出演者はほぼ全員が素人である。中でもデニスの上司である大佐には実際のロシア軍将校が起用された。

◯映画に存在する使命があるとしたら、このような映画にこそ相応しい
ソクーロフ監督は長編16作目のために自分で脚本を書き、ガリーナ・ヴィシネフスカヤを主役に撮るという長年の夢を実現させた。監督のさまざまな時期につながる糸が本作では絡み合っている。<権力者の三部作>(「モレク神」「牡牛座 レーニンの肖像」「太陽」)と同様、歴史を語りながら強烈で非凡な人物を描き、今回は更に現地での撮影である。また、「マザー、サン」「ファザー、サン」など家族や人間関係をテーマとした作品で試みたように、異なる二人の人間を結び合わせている。家族、友達、そして疎遠な人たちなど、似ているところもあれば違う部分もある二人が、何百キロも離れながらひとつの力に引き寄せられるのだ。
現実の政治状況を、その現場を舞台に、しかも大多数をその現場で暮らす人々を起用して、あたかもドキュメンタリーのように描きながら、告発ではなく、人間とは何かという芸術の普遍的テーマにまで言及した本作は、まさにソクーロフ監督の集大成的作品である。映画に使命があるとしたら、このような映画にこそ相応しい。
「チェチェンへ アレクサンドラの旅」はロシア連邦文化映画局・フランス国立映画センターの後援も受けて完成された。2007年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されパルムドール大賞の有力候補となり、ロシア国内、アメリカやヨーロッパで公開され高い評価を受けている。

洋画

監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:ガリーナ・ビシネフスカヤ、ワシーリー・シェフツォフ、ライーサ・ギチャエワ、エフゲーニー・トゥカチュク

料金:一般:1700円

※表示されている料金は全て税込みです。
※やむを得ない都合により、開催スケジュール及び内容が変更になる事があります。詳細は各主催者へお問い合わせ下さい。

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