眠り姫
上映・公演は終了しました。

2007年/日本/80分/配給:charm point
どうも、何かが変なのです。
中学校の非常勤講師をしている青地(つぐみ)は、このごろ学校へ行くのがおっくうで、いくら寝ても寝不足の感じが抜けない。長くつきあい過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ、奇妙な夢。どうも、何かが変だ。面長の同僚教師・野口(西島秀俊)は、自分の顔のことは棚に上げ、青地の顔がだんだん膨らんでいると笑う。トイレに貼った猫の写真は、見るたびに何か言いたげだ。そこはかとない現実への違和感が心を占めていき、やがて青地の中で、意識と無意識の境界線が消えていく…
わたしだってひとりになりたいときがある。誰にも会いたくないことがある。
誰かに会うのがわずらわしい。誰とも話しがしたくない。そんな、誰にでもある、どうしようもない気持ち。毎日、同じ日常の繰り返し。家と職場の往復。何の変化もない毎日は続いていく。そんなひとりの女性が抱える、ぼんやりとした不安。言葉にできない心の中の景色を『眠り姫』は差し出す。
目の前にあるものがただ通り過ぎて行く。目の前にあることに感情が動かない。触ったはずなのに感覚がない。人がいるはずなのにいない。誰にも起こりうる崩壊のきざし−そこに差しのばされた手は「救い」なのだろうか。
独りの若い女性の心にわく、奇妙なズレと違和。その繊細で、大胆な映像化。
『眠り姫』に写し出されるのは、ありふれた日常の、ありえない光景。人間が、ほとんど姿を見せないのだ。登場人物の濃密な気配はするが、声だけが響く。恐ろしいほど美しい心象風景が、人を写す以上に人の孤独を、情感を浮き彫りにする。冬の淡くうつろう光を狙い、足掛け二年の歳月をかけて生み出された、奇蹟のような映像詩。
監督は『のんきな姉さん』で鮮烈なデビューを飾った異才・七里圭。前作に続き、孤高の漫画家・山本直樹の原作に挑んだ。山本直樹の「眠り姫」は、芥川龍之介の死をモチーフにした内田百間の短編小説「山高帽子」が原典。その重層的な物語世界を引き継ぎ、日常と幻想、現実と夢が交錯する、めまいのような映画を作り上げた。
主人公の女性・青地(声/出演)には、つぐみ(『紀子の食卓』『フリージア』)。芥川を彷彿する同僚教師・野口の声に、西島秀俊(『LOFT』『トニー滝谷』)。そして、山本浩司(『サイドカーに犬』『それでも僕はやってない』)、大友三郎(『夢で逢えたら』)、園部貴一(『ソドムの市』)らが脇を固める。
存在すら確かでない登場人物たち…。その声に耳をすまし、不可思議な映像に身をゆだねていると、主人公・青地の心の奥底がいつしかレントゲン写真のように浮かびあがってくる。露わになった人の心の危うさを垣間見るとき、我々はいまだかつて観たことのない、まったく新しい映画体験をする。
邦画
監督:七里圭 出演:つぐみ、西島秀俊、山本浩司、大友三郎、園部貴一、榎本由希、橋爪利博
料金:施設参照
※表示されている料金は全て税込みです。
※やむを得ない都合により、開催スケジュール及び内容が変更になる事があります。詳細は各主催者へお問い合わせ下さい。







