サラバンド
上映・公演は終了しました。

2003年/スウェーデン/112分/後援:スウェーデン大使館/配給:シネフィル・イマジカ/地方配給:ユーロスペース/©SVT 2006. All Rights Reserved
7月30日に逝去されたイングマール・ベルイマン監督の遺作となった『サラバンド』を追悼上映。
巨匠イングマール・ベルイマン監督、最高にして最後の傑作
バッハの音楽に秘められた、激情の四重奏――
<プロローグ>
ひとりの女性が大きなテーブルに山積みになった写真を前に、おだやかに語り始める。1枚ずつ、昔の写真を取り出しながら。女性の名前はマリアン(リヴ・ウルマン)。離婚して30年になるかつての夫ヨハン(エルランド・ヨセフソン)のこと。ふたりの娘、いまは精神を病んで療養所生活をするマッタと、結婚してオーストラリアに移住したサーラのこと。やがてなにかの啓示のように、30年ぶりにヨハンに会うために、彼の別荘を訪ねる決心をする。
<第1章〈マリアン、計画を実行に移す〉>
森と湖が広がるその場所に、ヨハンの別荘はあった。年月の乖離など感じさせぬような二人の再会。かつての夫婦は、過去の軋轢を乗り越えたかのような、穏やかで、親密な関係性を見せる。マリアンはすでに63歳、ヨハンもゆうに80歳を超えていた。わずかな滞在を予測していたマリアンは、すでにそこでの長逗留を意識せざるをえなかった。
<第2章〈ほぼ、1週間が経過〉>
別荘のそばには、ヨハンの息子のヘンリック(ボリエ・アールステット)とその娘カーリン(ユーリア・ダフヴェニウス)が住んでいた。二人はカーリンが音楽学校に入学するため、ヨハンが所有する別宅でチェロの訓練を昼夜問わず重ねていたのだ。
そんなある日、ヨハンの留守中、マリアンのもとへカーリンが動揺を隠しきれない表情で飛び込んでくる。初対面であるにも関らず、カーリンは自分の不安と怒りをマリアンにぶつける。父親のエゴイスティックな指導、そして激しい束縛と確執。そのあふれんばかりの感情に、マリアンは飲み込まれそうになっていく。
<第3章〈アンナについて〉>
マリアンとひとときを過ごしたカーリンは、落ち着きを取り戻して父親の元に戻る。ヘンリックは途方に暮れた表情で娘を待ちうけていた。そして娘と一緒のベッドで、2年前に病死した妻アンナとの思い出について、娘に語り始める。結婚直前にアンナを失いそうになったことを。カーリンが家を出たとき、それを思い出していかに動揺したかを。アンナはヘンリックにとって生命の一部だった。それをヘンリックは“奇跡”と呼んだ。そして「私にはやがて、厳しい天罰が下るだろう」と自分の運命を予知するのだった。
<第4章〈約1週間後、ヘンリックは父を訪ねる〉>
ある日、ヘンリックは父親のヨハンを訪ねる。父親とは思えぬ憎悪の表情で息子に対峙するヨハン。うろたえるヘンリック。ヘンリックはカーリンのために、父親に借金を申し出たのだ。チェロの名器があり、それを彼女に買い与えたいと。しかし、侮辱にまみれた言葉で息子を追い詰めるヨハン。そこには50年にも渡る父子の憎しみの感情が横たわっていた。50年前に息子が吐いた「あなたは父親ですらない」という一言に引きずられるように、憎しみを増幅させてきたヨハン。そしてそのヘンリックに対して「お前は無だ。存在すらしない」と吐き捨てるように言う。
<第5章〈バッハ〉>
教会ではヘンリックが弾く、バッハの《トリオ・ソナタ》の第1楽章が荘厳に流れていた。そこを訪れるマリアン。ヘンリックはそこで、カーリンへの、ひいてはアンナへの強い愛情をマリアンに吐露する。アンナが亡くなったいま、死はいとも簡単に、近くにある、と。ひとりになった教会で、マリアンは窓からふいにさしこむ強い光に誘われ祭壇の前に行き、そして神に祈るばかりだった。
<第6章〈申し出〉>
ブルックナーの交響曲が鳴り響くヨハンの家に、カーリンが祖父を訪ねる。祖父から呼ばれたのだ。ヨハンは友人からだというその手紙を読み上げた。それはヨーロッパでも有数の音楽学校の教授であるその友人から、カーリンへの入学の誘いの手紙だった。父親であるヘンリックを決して通さず、カーリンに直接話したい、というヨハンの確固たる思い。それは彼の、息子への憎悪と、カーリン、そして亡くなったアンナへの強い思いの表れでもあった。
<第7章〈アンナからの手紙〉>
カーリンが一通の手紙を携えて、マリアンの元を訪れた。それは本の間に隠されていたという、アンナからヘンリックに宛てた手紙だった。死の数日前に書かれたもので、ヘンリックのカーリンへの強すぎる愛情を危惧する内容だった。その限界を知らない底なしの愛情は、カーリンを束縛し、やがて深く傷つけることになるだろう、と。だからあの子を自由にしてほしいと、その手紙は訴えていた。母親の危惧が現実になったことに、カーリンは動揺するばかりだった。
<第8章〈サラバンド〉>
家ではヘンリックが、数ヵ月後に父娘コンサートを開催することになったと張り切って娘を迎えた。曲はバッハの《無伴奏チェロ組曲第5番》、サラバンドだと。しかし母親の手紙を隠していたことに怒りを隠せないカーリンは、父親にその思いをぶつけ、自分が探した音楽学校に入学することを決めたと宣言する。生まれて初めて自分が決めたことなのだと。絶望の淵に立たされたヘンリックは、せめて最後にサラバンドを弾いてくれ、と娘に哀願するのだった。
<第9章〈決定的瞬間〉>
ヘンリックが自殺未遂をしたという連絡が、ヨハンとマリアンの元に入る。さらにヘンリックへの憎悪を剥き出しにするヨハン。「カーリンを罪悪感から守れ」とマリアンに、その気持ちをぶつける。
<第10章〈夜明け前〉>
その夜、廊下でひとり、ヨハンは震えながら泣いていた。その震えは止まらず、助けをマリアンに求める。マリアンに促されるように、すべての着衣を脱ぎ、そして今度はマリアンが裸になり、彼女のベッドで一緒に寝る。そこに到るには長い時間が必要だったと言わんばかりに。落ち着きを取り戻すヨハン。「なぜ不意に訪ねてきたのだ?」。そう言うヨハンに、マリアンは「あなたが、呼んでいると」と答えるだけだった。
<エピローグ>
ふたたび、マリアンは膨大な写真が積まれたテーブルの前にいる。そしてその後を回想する。穏やかな数日をヨハンと過ごしたこと。別荘から戻っても、ヨハンと連絡を取り合っていたものの、あるときからぷっつり連絡が取れなくなったことなど。そして写真のなかからアンナの写真を取り出し、彼女がどんな女性だったのか思いを馳せる、と。やがて彼女は療養所にいる娘のマッタと会ったことを回想する。それはヨハンに会ったことに、きっと関係があるのだろうと言いながら。
パイプベッドと椅子だけがある、マッタの療養所の部屋。焦点の合わない目を隠す眼鏡をはずす母親の手は、マッタの顔を慈しむように触れていく。マリアンは言う、「この手で、自分の娘に触れてる。わたしの子に…」と。
特集上映・映画祭
監督:イングマール・ベルイマン 出演:リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ボリエ・アールステット、ユーリア・ダフヴェニウス
料金:施設参照
※表示されている料金は全て税込みです。
※やむを得ない都合により、開催スケジュール及び内容が変更になる事があります。詳細は各主催者へお問い合わせ下さい。







