明るい瞳 Les Yeux clairs
上映・公演は終了しました。

2005年/フランス/87分/配給:アステア/©2005 THEUS PRODUCTIONS-FRANCE 2 CINEMA
フランスの村からドイツの森へ──。
ずっと孤独と隣り合わせに生きてきたファニーがはじめて優しい愛に出逢うまでを描いた心のロードムービー
不思議な幸福感に溢れた大人のおとぎ話
ファニーはちょっと、いいえ、かなりおかしな女の子。女の子と言うには、もう、すっかり大人だけど……。お兄さんのガブリエルと、お兄さんの妻と同居しているものの、どうにも居心地が悪い。お父さんのお葬式に参列できなかったことも、心に暗い影を落としている。「私はお父さんに愛されていたの?」そんなある日、兄嫁の秘密を目撃してしまったファニーは、イライラを募らせていく。そこでファニーは一大決心。大きな目的を胸に秘め、冒険の旅に出る。国境を越え、深い森を抜けていくと──。
明るい光が差し込むログハウスに暮らす、若い木こりのオスカーに出逢ったファニーは、初めて優しい愛を知る。
物語は、フランスの兄の家での暮らしぶり、ドイツの森の中で見つけたひと時の安らぎと、前後半で微妙にテイストを変えながら紡がれる。うまく社会に馴染めない一人の女性の物語でありながら、その内面世界の変貌を繊細に細やかに、そしてユーモアを湛えて描き出した本作は、見る者の心をほぐし、クスクス笑いさえ沸き起こす。そして後半、言葉も通じない2人が、視線を交わすことで心を通わせていく交流は、何とも言えぬ幸福感に溢れ、眩しい輝きに満ちている。
“みにくいアヒルの子が、森でクマさんに出逢い、美しい白鳥となって飛び立とうとしている”──そんなおとぎ話を思わせる映画である。
なぜか女性が癒されるファニーの魅力
ファニーの行動は、兄嫁から嫌われるし、村の子供たちからも変人扱いされるが、不思議と見る私たちは不快感を覚えるどころか、いつの間にかファニーの面白さ、純粋さ、正直さに惹かれていく。お兄さんの部屋のクローゼットの中に隠れたり、旅の途中で、隣の人のパンを口に放り込んでおすまししたり。ファニーの言動に驚かされながらも、何だか憎めない、まるで子供みたいなそのキャラに、あなたも虜になってしまうだろう。ファニーを演じた主演女優のナタリー・ブトゥフが、「彼女は臆病でもあり、ちょっとズル賢くもあり……、彼女のような人は数多くいる。誰かとうまく関係が結べず、馴染めないなんて人はたくさん」と言っているように、私たちはファニーの中に自分の断片を見つけるから、愛しく思えるのかもしれない。
コミュニケーション、人と違うこと、自己再生、ロハス生活など……現代の気になるテーマがいっぱい!益々他人とのコミュニケーション能力の低下が指摘され、「人と違うこと」がイジメを誘引するような殺伐とした現代。監督が、「確かに病的なところはあるけれど、ファニーは自らの意思で孤立し、本当は他の人よりずっと強い。少なくとも彼女の兄や兄嫁よりはね」と語るように、これは“他人に合わせて自分を誤魔化し、妥協して社会に適合することを、そうした成長を拒否した女の子の話”でもある。そんな彼女が、不器用ながらも自分の居場所を見いだしていく姿が、人間関係に疲れ、ストレスを抱える現代女性の心に深く響くのだ。と同時に、人と繋がることにおける“言葉の無力さ”も感じさせてくれる。コミュニケーションの本質や、人と繋がることの意味、大切さを深く考え、心で感じさせてくれる映画なのだ。
一方で見終えた後、私たちの心に清涼感や瑞々しさが残るのは、映像による魅力も大きい。木こりのオスカーが暮らす森の中の暮らしは、現代人の憧れのロハス生活。大自然に抱かれ、木漏れ日を浴びながら、おいしい空気を胸いっぱいに吸う満たされた気持ちを、映像からたっぷり味わえるはずだ。
さらにファニーの“ダサ可愛いファッション”や、オスカーの家の居心地よさげな親密な空間、色とりどりの椅子椅子を抱えて歩く男の滑稽な姿、またその黄色の一脚がオスカーの家に置かれるなど、ユニークかつ精密な色彩設計、絶妙なセンスも本作の大きな魅力だ。
2005年ジャン・ヴィゴ賞を受賞!期待の若手有望監督
監督は、長編第2作となる本作で、新鮮味のある叙情的な作風が評価され、フランスの映画賞で新人賞にあたる「ジャン・ヴィゴ賞」を受賞したジェローム・ボネル。本作はまたベルリン国際映画祭「フォーラム部門」にも出品されている。01年の長篇デビュー作『Le Chignon d'Olga』もシカゴ国際映画祭で国際批評家連盟賞を与えられるなど、既に世界的に高い評価を得た新鋭。3月には新作『J'attends quelqu'un』の公開も控え、最近、復調を見せるフランス映画界で、まさに今、次世代を担う新たな存在として期待を集める注目の若手監督だ。
映画を彩る4人の個性派俳優たち
主演のファニーを演じたナタリー・ブトゥフは、ジェローム・ボネル監督が短編を撮り始めた頃からコラボレーションをスタート。近年ではパトリス・シェロー監督『ソン・フレール 兄との約束』、アルノー・デプレシャン監督『キングス&クイーン』や諏訪敦彦監督『不完全なふたり』など、作家性の強い作品に出演する個性派女優だ。教師、兄、夫の顔をそれぞれ繊細に演じ分けたファニーの兄ガブリエル役のマルク・チッティもまた、監督と短編時代からの付き合い。主な主演作はパトリス・シェロー監督『王妃マルゴ』やジャック・オーディアール監督『天使が隣で眠る夜』など。ガブリエルの妻セシルを演じたジュディット・レミーは、セドリック・クラピッシュ監督の短編や、ファニー役のナタリー・ブトゥフの短編監督作などに脇役として出演。
木こりのオスカーを演じたラルス・ルドルフは、ドイツ出身の前衛ミュージシャン。現在もバンド活動をしているが、その強い存在感は、主演を務めたタル・ベーラ監督の幻想的な映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』で証明済み。4人の強い個性が、絶妙にぶつかり、融合し、『明るい瞳』の世界が完成した。
洋画
監督:ジェローム・ボネル 出演:ナタリー・ブトゥフ、マルク・チッティ、ジュディット・レミー、ラルス・ルドルフ、オリヴィエ・ラブーダン、ポーレット・デュボスト、エリック・ボニカット
料金:施設参照
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