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こほろぎ嬢

上映・公演は終了しました。

2006年/日本/95分/ 製作・配給:旦々舎

三つの変てこな恋の物語。
最初が、少女・小野町子の「片恋」、つまり相手が振り返ってくれることを期待しないで、純粋に思い続ける恋だ。町子が、故郷でお祖母さんと暮らしているところに、兄の友人の心理学研究者、幸田当八が訪れ、戯曲の恋のセリフを、町子に朗読させる。最初はためらいながらも、ロマンチックな恋のセリフを、何日か朗読した町子は、当八が去った後、彼の面影を胸にいだいて、毎日を夢見るように暮らしている。現実の当八というよりは、戯曲の恋の言葉によって触発された、ほのかで、はかない少女の恋だ。

そんな町子が、たまたまお萩とおたまじゃくしのビンを持って訪ねたのが、二つ目の恋の主人公、引きこもり詩人の土田九作。
九作は、町子がおたまじゃくしを眺めながら、深いため息をつくのを聞いて、彼女が片恋をしていることに気づく。心のなかで、急速に町子に惹かれる九作。彼はいつも、片恋や失恋をしている女の子を好きになるが、現実に恋をしてしまうと、恋の詩が書けなくなるといって、自分から町子を遠ざける。そして、心が悲しいときや苦しいときに、それを口ずさむと心が軽くなる詩を、町子に教えてあげる。恋の詩を書くために、現実の世界では恋を封印する、詩人の恋だ。

町子のように、片恋をして面影を追い、おたまじゃくしとも心を通じ合わせるような少女が、大人になったのが、三つ目の恋の主人公、こほろぎ嬢。彼女の恋の相手は、一人ではなく、また目の前の現実に生きている人でもない。図書館の奥で見つけたイギリスの神秘派の詩人シャープ氏と、彼の恋人の女性詩人マクロード嬢だ。こほろぎ嬢が調べたところによると、どうも二人は、二人で一人らしい。ひとつの身体に、男女ふたつの心が棲んでいる。そんな二人に時空を超えて「恋」をするこほろぎ嬢も、不思議な人だ。

三つの恋のどれもが、現実の世界ではけっして実ることのない、静かで、夢か幻のような恋ばかりだが、みんな自分の「恋の言葉」を大切に抱きしめている。尾崎翠は、孤独であっても恐れることはない、心のなかの、もうひとつの世界で、言葉によって紡がれる、幻想的な恋こそが、美しく、ゆたかなのだと言ってるようだ。

邦画

監督:浜野佐知、原作:尾崎翠 出演:石井あす香、鳥居しのぶ、大方斐紗子、外波山文明、片桐夕子、吉行和子

料金:当日券:一般1800円、学生1500円、シニア・会員1000円

※表示されている料金は全て税込みです。
※やむを得ない都合により、開催スケジュール及び内容が変更になる事があります。詳細は各主催者へお問い合わせ下さい。

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