#シブラバ?渋谷で働く、遊ぶ、暮らす魅力を探る

KEYPERSON

フロントラインに若者のユースカルチャーが存在 それが渋谷のドライビングエネルギーになっている

株式会社シー・アイ・エー/ブランド・アーキテクト・グループ代表取締役シー・ユー・チェンさん

プロフィール

1980年にロサンゼルスでChina Clubをプロデュース。1984年より、東京で株式会社シー・アイ・エーを設立し、メトロポール、ザ・ウォールなど数多くの建築プロジェクトを手がける。戦略洞察力とマーケティングの視点から、プランニング、ブランド開発、デザイン開発などのサービスをトータルに提供し、ユニクロ、GAP、Nikeなど大規模なブランドの成長を多数手がける。近年では、青山フラワーマーケット、上島珈琲店、三菱東京UFJ銀行のプライベートバンキングオフィス開発を成功へ導いている。リテールビジネスおよびフード&ビバレッジ分野においても幅広い経験を有し、世界中のスペシャリスト達とチームを編成して、数多くのブランド構築および再構築、ランドマーク、ストア開発、マーケティング戦略開発等のプロジェクトを成功させている。国土交通省および都市基盤整備公団の委員の他、GAP、ユニクロ、Nikeの顧問を務める。1996年に東京都建築士会住宅建築賞を受賞。著書に「インプレサリオ 成功請負人」(2005年12月、ダイヤモンド社刊)。


時代の先端を行くレストランや商業空間、ホテルなどの開発やブランド戦略などを手がけるCIA代表のシー・ユー・チェンさん。渋谷・宇田川町にオフィスを構え、GAPや銀行など渋谷に位置する空間開発にも数多く携わってきたチェンさんに、渋谷の街づくりについて話をうかがいました。

「パンテオン」ができた時の記憶が強烈に焼き付いてますね

--チェンさんが渋谷の街と最初に出会ったのはいつごろですか?

幼年時代田園調布に住んでいたので、子どものころから渋谷にはなじみが深く、とにかく街に出るのは渋谷。東急文化会館のプラネタリムにもよく通っていましたし、「パンテオン」ができた時の記憶も強烈に焼き付いてますね。渋谷は、もともと道玄坂しかなかったのが、その後パルコができて、公園通りの方に人が流れていくようになっていき、公園通りがファッション化されドンドン活性化していって街が広がっていきましたよね。あのころはちょうど高度成長期の日本で、どんどん日本でオリジナルな文化を作っていく、ファッションを発信していくっていう部分では、やはり渋谷が発信地だったと思います。

--銀座とか新宿と比べても、やっぱり渋谷の方が魅力的ですか?

渋谷の方が落ち着きますよね。銀座はおしゃれで大人の街だったり、六本木は再開発で活性化されてきれいなイメージに変わってきていると思いますが、渋谷は渋谷なりに若者もいるし大人も混在していて、若い人たちがエネルギーを持っている街だと思うんですよ。だからあまりきれいにしちゃうといけない街だと思います。やっぱり「村」的にみんながいろんなことをやっていて、いろんな要素があるところが渋谷の良さだと思うんですよ。

--そういうものを残すのも難しいところがありますよね?

最近の開発のトレンドっていうのは、できる限り不動産のバリューを上げるっていう意味で、ボリュームをたくさん上げて、下の方にブランド化された商業集積をして、高い家賃の棚卸しをしていこうと、みなさん開発していきますよね。それをやっていくと、人間らしい無駄な部分が全部排除されていくんですよ。で、排除されていくとすごくつまらない街になっていく…。だから若者の場合はみんなつまらないところにこだわったり、いろんな無駄なことをやっているかもしれないけれど、面白いことができるという街がないと…。みんな編集していく時代なので、同じような街ができてしまう可能性がある中で、どこに行っても同じ店舗、同じブランドというのを、渋谷の開発ではしてはいけない。我々は海外のブランドの進出を随分手伝っているのですが、やはり海外の新しいブランドも若者をターゲットにした場合、渋谷に出たいとか、必ず渋谷・原宿・裏原に出て、やっぱり渋谷が一番いいねと言います。そういう意味ではやっぱり若者文化、ユースカルチャーというものをとらえていった時に、それが渋谷の良さだと思いますね。その後ろに松濤があったり、大人の文化というのもあると思いますが、やはりフロントラインに若者のユースカルチャーが存在していることを無視してはいけないと思います。それが一番渋谷のドライビングエネルギーになっていると思いますね。

渋谷は、はい上がってきたブランドがストリートに出てくる可能性を一番与えてくれる街

--それを生かした街というのが、これからポイントになってきますか?

レイヤーとして若者がいて、大人がいるっていう部分がないと。開発側としては、できるだけ大人の街にして、ブランドにして家賃をいっぱい取りたいなというのがあると思うんですけれど、そうじゃなくて…。渋谷っていうのは、最近の大規模再開発のようになってはいけない。渋谷は独自の渋谷でないといけない。若者文化をきちんと大切にしながら、それを大人もアピールしてくようにしていく。逆に安っぽく見るとストリートカルチャーですが、でも、それはそれですごいエネルギーだと思うんですよ。それは消せない。ストリートカルチャーの中と、そこから若者の文化をどうやって引き出して育てられるかっていうのは六本木にはできないし、銀座にもできないし、やっぱり渋谷にしかできない。それはやっぱり渋谷の面白さだと思うんですよ。

--GAPの渋谷上陸というのも仕事で手がけられていますね?

我々が渋谷に移ってきたちょうど10年ぐらい前は、日本のバブルがはじけてどうしよかって時に、GAPとかナイキなど海外ブランドが進出してきました。渋谷はどうすべきかっていうことで、GAPの不動産開発を当社が担当したんですけれど、やはり渋谷の公園通りがいいとかね…。みなさん海外から来ても、実際に歩いてセンター街の回りの道玄坂がどういう風に工夫して、何人ぐらい1日に人が集まっていて、その周辺の坪単価はどうなっているのかなど、かなり徹底的にリサーチしました。

--海外ブランドの場合、最初に渋谷に出てくるものが多いですよね?

ターゲットとしているブランドが20〜30代を中心にしている場合、渋谷・原宿がコアマーケットになりますし、渋谷駅から原宿に歩いていく明治通りの道を境に、横に入ってパラレルがどういう風になっているかとかですね。今や裏原宿はもうメーンストリートになっちゃっているから、「裏」じゃなくて…。裏原宿に指定するのが逆にかっこいいメジャーブランドになっちゃっているので、ゲリラじゃなくなってしまったんですけどね。で、若い人たちをターゲットにしたブランドっていうのは、ゲリラ的にやりたいんですよ。銀座の大通りにドカンと店を構えるのももちろんあるけれど、若者はそんなんじゃ言うこときかない。若者にとってやっぱり自分たちで発掘する楽しみみたいなものは、「裏通りの方が面白いよね」みたいなカルチャーに強く結びついていると思います。そうした意味で、渋谷、原宿は、海外のブランドにとって出てくるのは当たり前のエリア。何か出来上がった、意図的に仕掛けた(建物の)中に入るよりも、ストリートに出ている方が逆に若者にとってはかっこいいっていう雰囲気がありますね。渋谷は、「自分たち」で、「手作り」ではい上がってきたブランドがストリートに出てくる可能性を一番与えてくれる街なんじゃないかなと思いますね。

--昔から、渋谷は「情報発信基地」と呼ばれていますが…。

渋谷は、隠れるところがいっぱいあるんだよね。例えば仕事をしてて、ずっとオフィスにいて、つまんないなと言うと、ほかの地域だとみんな同じようにチェーン店のカフェに行って帰ってくるわけじゃないですか。でも渋谷の場合はそれもつまんないし、どうしようかと…。あそこに行くと楽器屋があるとか、あそこにいくと変な凝った店があるとかって言いながら探究できる、気分転換できるものがあるんですよ。ぶらぶらしていて発想の転換をしやすい街が渋谷ですね。ほかの街だと、もうOLしかいないとか、なんかある一定の所得層しかいないとか。この辺だとDJがガヤガヤいたり、そこら辺で面白い撮影をやっていたり…すべてのものが混在しているじゃないですか。だからある意味、いろんなものがあることがおもしろい街なんです。あと、ほかの街よりも音楽の匂いがする。楽器屋さんが多いとか…そういうのは自分で楽器を弾けたりするから、「ホッ」とさせてくれる部分ですよね。僕も、楽器屋に行ってギターを弾いていたり、寄り道ばっかり(笑)。渋谷は寄り道できる場所がいっぱいあるんですよ、それが楽しい。

宇田川町にあるCIAのオフィス


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