渋谷は何の情報も持たずに歩いても楽しめる街
いい意味での「ゴチャゴチャ感」を残してほしい
月刊「散歩の達人」編集長。1995年創刊準備から編集部配属、以来一貫して同誌編集部。2005年、編集長就任。都立日比谷高校卒・早稲田大学教育学部卒。1970年、世田谷区池尻に生まれ、品川区上大崎で育つが、その後の住まいは、世田谷区代沢→中野区野方→豊島区西池袋→練馬区小竹町→練馬区桜台と、東京を北上中。バブル期だった学生時代は工事現場の日雇い仕事でいろいろな街を転々とし、一人暮らしの憂さ晴らしだった孤独な街徘徊が、やがて趣味となり、さらに仕事に。現在の趣味はカヤック。4匹の犬と暮らし、毎朝犬とともに散歩にいそしむ。
--渋谷でおすすめの散歩コースを考えるとすると、どのようなコースになりますか?
渋谷って、こっちが下北沢方面で、こっちが青山で、こっちが代官山というのだけ知っていれば歩けちゃう。だから地図を持たずに思いつきで歩いても、どこかの町に抜けていくという期待が持てる。何の情報も持たなくても、ただ来るだけである程度楽しめるという意味では、どんなに地味な人でも派手な人でも遊べちゃうというのは渋谷の魅力じゃないでしょうか。個人的には、やっぱりすり鉢地形の「縁(ふち)」が好きですね。道玄坂の上の千代田稲荷の辺りとか(笑)。あそこを下っていくと、いきなり高級住宅街、松濤になるというのも面白い。あと、のんべい横丁や金王神社付近だと、割と古い酒屋もあったりしますし、路地もいい感じ。あまり注目はされないけれど、いろんな種類の路地があるところも好きです。裏手を行くと、新しい店があるかと思えば、マニアショップみたいなのもあったりして…。飲み屋があるガードの下とかもいいですね。
--渋谷を散歩する上でのポイントを教えてください。
まっすぐじゃない道が多いので、見えない道を探す。坂だったり曲がり道だったり、見えないところに続く道。新宿、池袋、銀座に比べれば、起伏ある渋谷はそういった道が断然多い場所です。白紙のままで歩くのが一番面白いと思うので、街を利用するにしても仕込みすぎないというのが大事だと思います。完璧なコースを作ろうと思えばいくらでも作れるし、おいしい店は知っていたほうがいいというのもありますが、その分発見は少なくなります。街はどんどん便利なように進化しているので、割と自分の気持ちだけで手ぶらで行ってもいろいろ提供してくれます。
--渋谷のここを改善したらいいなというのはありますか?
子どもたちがちょっとしたお金でいい意味で遊べるような仕掛けがあるといいですね。映画だったらずっと500円にしちゃうとか。いろんな人が来ないと街がつまんなくなっちゃうと思います。街の構造だけじゃなくて、街にいる人の種類の「ゴチャゴチャ感」も考えてくれればいいな。成功したビジネスマンがお金を使いに渋谷に来るのもいいかもしれないけど、文化は受取るだけでなく、作りださないとだめなので、消費だけになっちゃうと結局「玉切れ」になっちゃう。クリエーターの事務所が多いというのも、これからなんかやろうという若い人にとって、青山や六本木より親しみやすく、事務所を構えやすかったということがあったのでしょう。ターミナルの街で便利だし。でも、最近は地価も上がって古い物件が減り、クリエーターが減っているようにも感じます。たとえばアトリエ・アパートのようなものを作って、文化を創りだす側の人々を増やすことも必要かもしれません。あと、「渋谷川」を復活してほしい。川が流れていればうれしいです。せっかく土地としていい環境があるんだから、川ができればそこに露店とかも出て、また違う流れが生まれるかもしれない。アップリンクの前に川が流れていたら面白いじゃないですか(笑)。将来的には何年かかってもいいから復活させてほしいです。目に見える自然の流れがあるってすごいことだと思うんですよね。一番とんでもない提案ですけど、「川」ですね(笑)。
1972年にオープンした渋谷駅周辺に現存する唯一のジャズ喫茶。マスターの松尾さんが5000枚のレコード・CDのなかから選曲している。リクエストもでき、アルコールメニューも充実している。12時〜15時はランチセットも提供。
住所:渋谷区桜丘2-3富士商事ビル2F 電話:03-3461-3381
営業時間:12:00〜23:00(火〜木、日)、〜24:00(金)、〜23:30(土) ※月曜休業