野宮真貴、渋谷系を語る。
野宮真貴(のみや・まき)
ピチカート・ファイヴの3代目ヴォーカリスト。「元祖渋谷系の女王」として90年代に一世を風靡した渋谷系カルチャーの音楽・ファッションアイコンとなる。2011年にデビュー30周年。2013年より、ビルボード東京・大阪で「野宮真貴、渋谷系を歌う。」のライブを続けている。
聞き手:西樹(にし・たてき)
シブヤ経済新聞 編集長。2000年4月、広域渋谷圏のニュースサイト「シブヤ経済新聞」を開設。各地のパートナー企業と共に「みんなの経済新聞ネットワーク」を形成し、現在、海外10エリアを含む全113エリアで展開中。
西:今秋11月にニューアルバム「野宮真貴、渋谷系を歌う」をリリースするそうですが、20年を経て、なぜ「渋谷系」を改めて歌おうと考えたのですか?
野宮:「野宮真貴、渋谷系を歌う」というタイトルで、2年前から赤坂のBillboard Live TOKYOでライブを行っています。ピチカートを解散してからソロで歌っていて、2011年に歌手デビュー30周年を迎えたときに、高橋幸宏さんや小山田圭吾さん、雅-MIYAVI-さん、ヒャダインさんなどの豪華アーティストに1曲ずつプロデューサーとしてもらい、今までの集大成としてセルフカバーアルバムを出しました。じゃ、その後はどうしようかと悩んでいたときに、渋谷系の大ルーツであるバート・バカラックさんが来日して、そのライブを観に行ったのです。ライブ後に知人に今後どうするかと相談をしていた時に、はじめは「バート・バカラックのカバーアルバムを作ったら、いいかもね」なんて話していたのですが、次第にバカラックやロジャー・ニコルズなども含めて、渋谷系を大きく括ってカバーしたらどうかと。30年間ずっと歌い続けている自分が、90年代の渋谷系の歌をスタンダードナンバーとして歌い継いでいくことが、私の使命ではないかと思い始めて(笑)。
西:それは熱い!
野宮:昔のジャズミュージシャンは、自分のオリジナルナンバーをたくさん持っているわけではなく、過去の名曲を自分の曲にして、スタンダード化していっていたと思う。私はシンガーソングライターではなく、ソンガーなので、常にいい歌をうたっていきたい。だからこそ、90年代の名曲を歌い継いでいきたいと思うんです。
西:実際に90年代のヒット曲をカバーしはじめて、ファンの層は広がりましたか?
野宮:結構、若い人もいますね。親がピチカートを聞いていたとか、家でいつも音楽がかかっていたとか。また、親子でライブにいらっしゃる方もいますよ。
西:若い人には新鮮でしょうし、当時をよく知る人には、改めて90年代のサウンドに触れるいい機会になっているのでしょうね。
撮影協力:東急シアターオーブ
西:野宮さんといえば女性たち憧れのファションリーダーでもありますが、90年代から渋谷のファションの変遷を見てきて、どう感じていらっしゃいますか?
野宮:90年代の渋谷ファッションを振り返ると、アニエスベーのボーダーなどを着ている子と、安室奈美恵ちゃんのような、SHIBUYA109のコギャル・ファッションの2つのタイプがあったと思う。実はSHIBUYA109の洋服が好きだったんですよ。「MOUSSY(マウジー)」の森本容子ちゃんと仲が良かったこともあるのですが、私は割と瘦せていたので、タイトなジーンズや服のほうが自分のサイズに合っていたんです。あと、SHIBUYA109のデザイナーは、歴史がどうのとかは全く関係なく、直感的に「70年代の服がかわいい」とかで受け入れてしまう。例えばベルボトムのジーンズなど、70年代をリアルに生きた自分が知っているもの、懐かしいと思うものと、彼女たちがいいなと思う感覚がとても近くて、そこに面白さを感じていた時期もありました。
西:そうですか、SHIBUYA109の洋服も着ていたとは驚きです。さて、ファッションといえば、野宮さんは10月25日に渋谷で開催される「渋谷ファッションウイーク」に参加し、文化村通りでランウェイとライブを行うそうですが、過去に渋谷の街中でイベントを行った経験はありますか?
野宮:考えてみれば、「渋谷系」と言いながら、今まで渋谷の街でPVを撮影したり、野外イベントを行ったりしたことはありません。そういう計画はいくつかあったみたいなのですが…。
西:渋谷の屋外は規制が多く、なかなか許可が下りませんからね。今回のイベントでは道玄坂や文化村通り一帯が完全に交通規制されるそうですので、思う存分ライブができますよ。渋谷のど真ん中で歌う気持ちはいかがですか?
野宮:ようやく地元で歌える感じ(笑)
西:もう、歌う曲は決めているのですか?
野宮:代表曲を2〜3曲歌おうと考えていますが、曲や演出、衣装などはこれから。
西:「東京は夜の七時」とかですかね、当日がすごく楽しみです。最後に今秋のファッションで、特に注目しているキーワードやアイテムがあったら教えてください。
野宮:「赤い口紅」です。結構、赤い口紅はつけるのに勇気がいるものなので、女性の中には「今までに一回もつけたことがない」という人もきっといると思います。でも、赤い色は気持ちをすごく上げてくれるし、顔色も良く見えます。例えば、今日の私のように赤い服に赤い口紅でもいいし、真っ黒のコーディネートに赤い口紅だけをつけるのもすてき。口紅をファッションアクセサリーの一つと考えてもらえればいいんじゃないかな。女性たちには、この秋、ぜひ勇気を持ってチャレンジしてほしいです。