渋谷には「喜怒哀楽」のすべてがある
だから、いろんなストーリーが生まれる街なんだと思う。
1994年生まれ。福岡県出身。尾崎豊さんに憧れて、13歳で音楽プロデューサー西尾芳彦さん主宰の「音楽塾ヴォイス」の門を叩き、15歳で「サブリナ」を完成。2011年3月、16歳で単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャー・デビュー。同年10月に発売したファースト・アルバム「LEO」がオリコン2週連続2位を記録し、第54回日本レコード大賞最優秀新人賞など数多くの新人賞を受賞。2013年3月に高校を卒業。2014年2月にセカンド・アルバム「a boy」をリリースし、現在、全国縦断ワンマンツアーを行うなど精力的に活動中。
_歌づくりや新しいアルバムについてうかがいます。先ほども尾崎さんの話が出てきましたが、レオさんが初めて尾崎さんの音楽に触れたのはいつですか?
母のCDを聞いたのがきっかけです。13歳の時で、私は女子校に通っていたのですが、学校にいるのがつらいというか、弱い自分を見せたらどんどん居場所がなくなってしまう。どんどん侵略されちゃうという状態で。そんなときに尾崎豊さんの『15の夜』という曲を聞いて、音楽でだったら弱さをさらけ出していいんだと。そこで自分も歌をやりたいな、音楽で何かを伝えたいなと思って曲を作り始めました。
_尾崎さんはそのカリスマ性で若者に圧倒的な支持を持っていましたが、レオさんも同じく若者の代弁者と言われています。なぜ、レオさんが若者から支持を受けているのでしょうか、客観的に自分をどう見ていますか?
どうなんでしょうか、支持されているのか分からないですけど…。でも、中高生からお手紙とか、メッセージをいただいて感じるのは、私が飾らないからだと思います。私の場合、正直なところ飾れないんですけど。例えば、渋谷109の前で、すごいかわいい服を着て、お化粧が上手で、みんなでキャッキャと言っている子を見て、楽しそうだなとは思うんですけど、でも、いいなとは思わない。たぶん、みんな集団の中からはみ出すのが怖いから、一緒の洋服を着て一緒のメイクをしていると思うんです。私は嫌われても生意気だと思われてもいいから、ありままの自分でいたい。元からおしゃれが好きな子はいいと思うんですけど、私はそうじゃなかったので。
_レオさんの歌詞の世界を見ていくと、例えば『Message』の中では「祈る価値もない」とか、『カーニバル』では「エデンの園」とか、「神」を意識したワードが頻繁に出てきます。「神の存在」というか、「見えないものの力」をどう感じていますか?
私は無宗教なんですけど、中学からプロテスタント系の学校に通っていたので、やっぱり聖書に触れる機会が多かったというのもあって、知らず知らずに「エデンの園へ」とか、そういう単語を自分の中でも選んでいるんだと思います。「祈る」という行為も自然なこと。神がいるかいないは分からないですけど、私は「見えない力」が必ず存在すると思っています。だから歌詞も、そういう気持ちで作っているものが多いのかもしれません。
_「見えない力」を信じると、裏切られるときにショックが大きくない?
いや、もともと「信じる」という言葉を使えるのって、相手に裏切られてもいいということが前提だと思います。例えば、神様を信じるというのだったら、「神様に裏切られてもいい」という覚悟がないと信じるという言葉を使っちゃいけない。私は、それだけ重い言葉だと思っています。今の時代、「信じる」って簡単に使いがちだけど、私にとってはすごく重い言葉で。だから誰々のことを信じるっていうひと言も、なかなか言えない。一時期、神様に裏切られたって思ったこともありましたけど、今考えると、そうやって泣いた時期は神様がくれた試練で、自分が自分になっていくための魔法だったのかなと思える。そう考えると、すごく楽です。
_作詞は、どこで作るのですか?
私は家で机に向かうことが多いです。ただ、きっちりした服装でペンを持つと何かきっちりした歌詞になってしまう。だからお風呂上りで、パジャマとかに着替えてふわっと力が抜けた状態のときに、心の奥にある本当の自分を取り出すようにしています。変に格好をつけなくていい気がするので、外だとなかなかダラっとなれないので。
_どこかにヒントがあって、それを吐き出すのですか。それとも机の前に座って初めて出てくるものですか?
ヒントは日常の中にあって、ちっちゃいメモ帳を持ち歩いているんですけど、そこに日々思ったことを書き留めています。家に帰って、それを開いてガーっと書いていく感じです。
_作詞するときに強く意識していることは?
嘘をつかないことです。基本的に自分のことを書いていますが、19の私ができる経験というのは限られています。だから、小説を読んだりとか、映画を観たりしているんですけど。たとえ、私がしたことのない体験でも、映画を観て生まれた感情は、私のものだと思う。そういう意味での嘘ではなくて、いけないのは映画を観て生まれた感情に対して、これをこのまま皆さんに届けたら私は嫌われるかもと思って、それをいじってしまうこと。それだけはしたくない。
_さて、今回のセカンド・アルバム『a boy』ですが、そのタイトルを付けた理由を教えてください。
「男性の声変わり」からヒントを得たんですけど、私は今まで大人になりたくないと思っていました。ただ、いろいろツアーを回っていく中で、初めて守りたいと思えるものに出合ったんです。それは景色だったり、雰囲気だったり…、子どものままだと大切なものが守れないので、自分が大人になって守っていこうと。その大人になることを決意した時期を何て表現すればいいんだろう、って。子ども時代でもないし、大人時代でもないし…。大人になる覚悟ということを深く突き詰めていったときに、「男性の声変わり」という表現がすごくピンと来て。自分の声が低くなったりガラガラってなったりとか、声変わりは少し怖いものなんじゃないかな、と思うんです。でも、それを覚悟して当たり前のようにして受け入れている少年の横顔は、とっても憂いがあるし、切なさがあるし、何より覚悟があるなと思う。私も少年のように大人になることを受け入れ、強くなっていけたらいいなという意味を込めて、『a boy』をタイトルにしました。
_それは二十歳を目前に控え、大人にならなきゃという決意表明ですか?
いや、年齢は記号としてしか捉えていなくて、これは賛否両論あると思いますけど、いくら年数を重ねていても尊敬できない大人は尊敬できないし。でも、自分より年下でも周りに配慮ができる人は、たとえ14歳だとしても尊敬できる。大人って、年数じゃないと思うんです。どれだけ濃い体験をしているかだと思うので、年齢を全く意識しなかったかというと嘘になりますけど、「二十歳になるから大人になります」というつもりはなかった。私が純粋に守りたいと思えるものに出会って、そう感じたんです。
_今まではティーンエイジャーの代弁者として、大人に反抗的な部分もあったと思うのですが、これから声変わりをすることで、大人と子どもの立場が逆転します。今回のアルバムで、大人を意識してものづくりをされている部分はありますか?
ちゃんと汚れ(けがれ)を入れることを意識しました。大人になるって言葉だけで言うと、すごくきれいな響きを持っていますが、実際に大人は社会の闇の部分だったり、世界の裏側だったりとか、いろんなことを知って、その上で何かを守っていかなくちゃいけない立場だと思うんです。そうなると、光だけではなくて、同時に闇も持っていないと大人になれないんじゃないかなと。新しいアルバムには、純粋で透明度の高い楽曲を入れた一方で、『Free』だったり『Kiss Me』だったり、結構ロック調な曲も加えています。それは、本当の意味で大人になりたかったから。家入レオとして生きていくとき、大人になりますって言ったとき、きれいな曲だけじゃなくて、ちゃんとヘビーなものや陰の要素も入れたくて。大人になるからといって、ティーンエイジャーの心が離れていくとも思っていないですし、逆にその時期のことがすごく分かるから、同じ目線で歩いていけるんじゃないかなと思います。
小さいころ、大人になれば、葛藤なんてないんだろうなと考えていました。でも、いざ二十歳を目前に控えると「あー、大人でもいろいろ悩むんだな」って。だから、私はもっといろんな世代の人たちに音楽を届けていかなきゃと思う。「10代が悩んでいることなんて、ちっちゃいことだよ」という大人もいるんですけど、でも15年間しか生きてきていない女の子にとっては、その出来事ってすごく大きい。もちろん30歳になってから見ると、ちっちゃいかもしれないですけど、それを指摘するのは好きじゃない。やっぱり30歳なりの試練があるし、40歳なりの試練もあるんじゃないかなと思うから、その試練は大中小ではない。年代は別にしても、苦しみを持つみなさんと一緒に歩いていきたいし、その気持ちをどんどん歌っていきたいなと思っています。
_最後に今年1年の目標と、これからの夢を教えてください。
とにかく今は学ぶ時期だと思うので、怖がらずに、いろんなことにたくさんトライしていくことかな。基本的に頑固なので「こうしたほうがいいんじゃない?」と人から言われたことは、まずトライ。素直に受け入れていきたいです。それから夢はたくさんあるんですけど……、変わらないでいることですかね。前までは「武道館でライブをしたい」って言っていたんですけど、ファースト、セカンドってツアーを回る中で、会場の大きさとかじゃないんだなと思えてきて。むしろ、ライブで感じた雰囲気を大切にしていきたいと思ったときに、そういうことは意識しなくなりました。もちろん武道館で出来たら嬉しいですけど、それそのものが目標じゃないなと思うし、とにかく自分らしく音楽を届けていくことがなによりも大切だと感じています。
家入レオ 2nd Album 「a boy」
「Message」「君に届け」「太陽の女神」「チョコレート(album ver.)」のほか、19歳シンガーソングライター家入レオさんの今、を詰め込んだ2nd アルバム。
「a boy」初回限定盤
「a boy」通常版