#シブラバ?渋谷で働く、遊ぶ、暮らす魅力を探る

KEYPERSON

いつまでも歩ける街、歩きたくなる街であってほしい
私も歩き続けて渋谷と原宿の人とストリートを撮り続ける

フォトグラファーシトウレイさん

プロフィール

石川県出身。早稲田大学教育学部卒業。大学在学中にスカウトされてモデルデビュー。卒業後、 STREET FASHION CULTURE誌「STREET」「FRUiTS」「TUNE」でフォトグラファーとしてキャリアを積み、2008年に自身のブログ「STYLE from TOKYO」を開設。原宿を中心に東京のストリートのファッションを、国内外に向けて発信し続ける。 2011年写真集「STYLE from TOKYO」をリリース、2012年東京ガイドブック「日々是東京百景」をリリース、2013年J-WAVE「TOKYO-GRAPH」のナビゲーターとしての活動をスタートするなど、ますます活動の幅を広げる。

渋谷と原宿が融合してミクスチャーカルチャーが生まれている

_そもそも、初めて渋谷や原宿を訪れたのはいつ頃でしょうか。

渋谷駅西口の陸橋は、シトウさんのモデルデビューの思い出深い場所。

大学に入ってすぐですね。豪徳寺に姉と一緒に住んでいましたが、渋谷にアクセスしやすいように、わざわざ遠回りして下北沢で乗り換えて大学に通っていました。当時は、とにかく街がはじけていた印象ですね。キャットストリートの路地で、勝手に洋服を売っている人がいたりして。お金がなく見るだけでしたが、面白かったですね。大学時代の渋谷といえば、モデルになって初めての仕事がSTUSSY(ステューシー)のワールドキャンペーンだったのですが、外国人カメラマンの希望で、国道246の陸橋の上で撮影をしました(笑)。外国人はこんな場所に「渋谷」を感じるのか、とか思いながら。

_原宿はどのように変化していますか。

2008年に明治通りにH&Mができたことは、いわゆるファストファッションの広がりを象徴的に表していると思います。近年、全体的におしゃれな人が増えていますが、半面、「ものすごくおしゃれ」な人は減りました。そこそこおしゃれな中間層は増えていますが、トレンドの先の先をいくような、トレンドつくり出せるようなカリスマ的な人が減っている気がします。ファストファッションがない時代は、工夫しなければおしゃれになれないから、頑張って着回したり、切ったり貼ったりと工夫していました。その点、ファストファッションは安くて可愛いから、いっぱい買えて工夫せずに可愛くなれる。そんな背景があって、おしゃれな子が増えているのは確かですが、自分で考えてファッションを作り出すクリエイティブ気質の人は減っているのだと思います。

_渋谷と原宿に変化は感じていますか。

昔に比べると、渋谷と原宿がどんどん融合していると感じます。渋谷のギャルが原宿に来るし、原宿キッズが渋谷に行くし。ミクスチャーが進んで、棲み分けがなくなっている気がします。原宿っぽい店が渋谷に入り、溶け合ってボーダレスになっていることなどは、とても面白い現象だと思いますね。ギャルと原宿が結び付いて違うジャンルが現れるのを見ていると、すごく日本的だなあと思います。

予定調和の人生を避けるために、歩く文化を提案したい

_渋谷や原宿はプライベートで、どのように利用していますか。

年中カメラをぶら下げて歩いていますし、あまり仕事とプライベートは区別して考えていません。仕事が遊びみたいなものですから。お気に入りはいろいろとありますが、渋谷区神南にDISCOというネイルサロンは、爪の手入れで通う大好きなショップです。ネイリストは、世界のトップネイリストに選ばれた若い女性です。そんな、世界に通用する人がビルの一角にいるというのも、渋谷の面白さでしょうね。

_渋谷では再開発が進んでいますが、「こんなふうに変わってほしい」「ここは変えてほしくない」といったことはありますか。

大きな建物が駅周辺だけに集中するのは危険だと思います。街を歩かなくなると、思考が停止してしまいますから。ファイヤー通りあたりまで歩くと、ポツポツと小さな路面店がありますよね。そこまで歩かなくなり、駅前の一つの館で完結してしまう人生になるのは、とても寂しい。私は歩く文化を提案したいです。渋谷を、歩いて楽しめる街として残したい。今はファッションに限りませんが、どんどん人が動かなくなっています。何でもネットで買えてしまうし。でも、歩くと発見があります。ブラブラと歩く中で目的以外の物を見つけることにより、人生が予定調和にならず、豊かになると思っています。だから、いつまでも歩ける街、歩きたくなる街であってほしい。そのためには、隙間というか余白を残すことが大切だと思います。

_4,500人以上のスナップを撮影する中で、今の若い人たちに何か感じることはありますか。

街で若い人の話を聞いていると、自分に自信がなかったり、自分を嫌いに思っていたりしている子が多いです。「自分探しをしている」という声もよく聞きます。私自身は、自分探しをしたことがありません。高校時代の友人の言葉で心に残っているのが、「自分探しをしている間は、自分は見つからない」というもの。そうなんですよね。自分探しとは、自分の影を踏もうとしているようなものだから、決して上手くいかない。大体、昨日と今日で考え方は変わるのだから、自分を見つける必要すらない。そんなイタチごっこをしている時間があるのなら、他にやることがあるはずだと、私は思っています。スナップの被写体になってくださる方々には「有名人になってスポットライトを浴びる人生も素敵だけど、あなた自身もオリジナリティがあって素敵だよ」と伝えてあげたい。私が紹介できるのはその人の人生のほんの一部に過ぎませんが、写真と言葉で自伝を書いているつもりです。当然、私自身も10代の頃は迷いがありました。当時の自分が言われたかったことを言っているような気がします。

_この先の目標をお話ください。

世界中で写真展の巡業をやりたいです。最後、日本に凱旋して渋谷ヒカリエで開催できると尚いいです(笑)。以前、モスクワで写真展を開きましたが、とても評価していただけました。浮世絵もそうでしたが、日本人は自己評価が低い傾向があると思います。最初に世界で評価されてから日本に戻ってくれば、「自分たちはすごいんだ」と感じてもらいやすくなると思うんです。目標としては、もっともっとスナップを続けたいということもありますね。自分が好きなものを見つけるという行為は、自分の感度を高めていくこと。自分が何が好きかを毎日考えているから、感度が研ぎ澄まされていく感じがします。そんな毎日が、楽しくてたまりません。

>>STYLE from TOKYO

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