全面リニューアルで発信力を大幅に強化!
音楽の街・渋谷に新たな勢いをもたらしたい
1966年三重県生まれ。高校・大学時代は音楽浸けの日々を過ごす。1990年、タワーレコードに入社し、渋谷店に配属。その後、札幌プリウィ店、心斎橋店、梅田大阪マルビル店など大型店舗の店長を経て、2003年に渋谷店の店長兼スーパーバイザーに就任。2005年、タワー・リテール・オペレーション・カンパニーのヴァイスプレジデントに着任し、2008年から再び渋谷店店長兼統括部長を務める。
音楽の街・渋谷のシンボルともいえる存在が、世界最大規模のCDショップ・タワーレコード渋谷店。その渋谷店が、2012年11月23日、全面リニューアルをしてグランドオープンしました。カフェのオープンやUst配信、ライブハウスの開設など、たくさんの目玉がある今回のリニューアルのねらいについて、タワーレコード渋谷店・店長兼統括部長の栢森信友さんにうかがいました。
--全面リニューアルのねらいについて教えてください。
1995年3月に宇田川町から現在の場所に移ってから、初めての全面リニューアルです。「360℃エンターテイメント・ストア」をコンセプト、そして「ライブ感」をキーワードとして、すべてのフロアを見直しました。近年、音楽マーケットが大きく変遷していることに加え、2年前にHMV渋谷さんが閉店され、「音楽の街」としての渋谷の空気がやや薄れているため、今のタイミングでリニューアルして存在感や発信力を高め、再び街を盛り上げたいという思いがあります。
--具体的には、どのように変わるのでしょうか。
では何が変わるのかを順にご説明しましょう。まず、売り場面積は50坪増床して世界最大規模の1550坪となるほか、世界一の品揃えを誇るCDショップを目指して在庫枚数も10万枚増強し、80万枚となります。数を増やすだけでなく、フェイス陳列の棚を充実させるなど提案性も向上させました。またタワーレコードオリジナルのタブレット端末によるデジタル視聴機を約70台導入。国内盤として発売している楽曲は、邦楽・洋楽を問わず、基本的に全曲をフルヴァージョンで視聴していただけるようになりました。さらに店内BGMにも工夫を加え、今までの新譜中心を改め、新旧を織り交ぜておすすめの楽曲を提案します。こうしたリニューアルにより、これまで以上に「これ、良さそうだな」などと新たな発見をしていただきやすい売り場になると思います。
--新たにカフェもオープンするそうですね。
はい、2Fに「TOWER RECORDS CAFE」というカフェをオープンします。コンセプトは、「TAMARIBA-溜り場-」。落ち着いた色調の木を基調とした空間で、お買い物中に一休みをしたり、カフェのみのご利用で寛いだり、思い思いに過ごしていただきたいと考えています。また7Fにあった「TOWER BOOK」を2Fに移動してカフェに併設しました。書籍や雑誌は、レジにお持ちする前に、カフェに持ち込んで、ゆっくりと選んでいただくこともできます。もちろん、BGMにもこだわります。渋谷店のバイヤーがセレクトしたプレイで心地よい空間を演出します。リニューアルオープンと同時に、オリジナルのカフェミュージックのコンピレーション・アルバムも発売します。
--そのほか、リニューアル内容を教えてください。
目玉の一つが、地下にあった従来のイベントスペース「STAGE ONE」を、ライブストリーミングスペース「CUTUP STUDIO」としてリニューアルしたこと。これまではインストアイベントが中心でしたが、ライブハウスとして有料イベントを積極的に実施します。CUTUP STUDIOでは、USTREAMなどの配信機能を充実させていて、ライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」と提携してライブなどの番組も配信します。さらに新たに8Fに設けるのが、その名も「Space HACHIKAI」という約50坪の多目的スペース。これまでは1Fのラウンジスペースでアーティストの展示企画を行ってきましたが、それをスケールアップして開催するほか、トークショーやアーティストのオフィシャルグッズの販売など多彩なイベントを行う予定です。オープニング企画として、今年10月、11年8か月ぶりシングルを発売して復活し、大きな話題となっているTHE YELLOW MONKEYの企画展示を開催します。そのほか、店内オペレーションも見直し、より快適にお買い物を楽しんでいただけるようにしました。例えば、これまでは基本的にフロアごとのお会計でしたが、ショッピングバッグに商品を入れてエスカレーターで移動し、どのフロアでもまとめてお会計をできるようにしました。また店内の混雑時にはお会計をお待たせしてしまうこともありましたが、1Fに特典お渡しカウンターを設け、各フロアでのお会計をできるだけスピーディーにするように改善しています。
--グランドオープンを迎えた意気込みをぜひ。
ここ数年、渋谷でビジネスをしている人と会うと、あまり景気の良い話を聞きません。これは渋谷に限らず、日本全体の話かもしれませんが。そんな中でタワーレコード渋谷店は、幸いにも売上が伸び続けています。リニューアルによってさらに勢いを付け、より広域からお客様を集めて、渋谷の街を牽引するような役割を担いたいと考えています。50代でパンクを聴く人も、20代で演歌を聴く人もいるなど、音楽は個人によって好みが異なるため、今回のリニューアルでは特にターゲットは絞っていません。CDショップから少し足が遠のいている人、もともとタワレコにあまり来店しない人などにも、この機会に新たに来店していただけると嬉しいです。
--最近、音楽のダウンロード配信も活発になっていますが、リアルショップの強みは何だと思いますか?
リアルショップだけではなく、ダウンロードしたり、eコマースで購入したり、音楽との出合い方がとても幅広くなったのは良いことだと思います。うまく使い分ければ、これまで以上に音楽が身近な存在になるでしょう。リアルショップは、利便性や価格の面ではダウンロードやeコマースには勝てませんが、他にはない強みがたくさんあります。まず、PCなどで検索して自分から情報を拾いにいく場合と比較し、来店すると実に多くの情報が目や耳から飛び込んできます。リアルショップに来店されるお客様の多くが、そのような新たな出合いに期待しています。お店とお客様のつながりがダイレクトであることもリアルショップの特徴です。陳列やコメントカードなどによって、おすすめのアーティストを強くアピールでき、これまでには渋谷店がプッシュしたことでブレイクしたアーティストもいました。特に、コメントカードを楽しみにしてくださるお客様は多いです。自分のお気に入りのアーティストがカードで熱心にすすめられているのを見て、「スタッフにもファンがいるんだな」と喜ばれてリピーターになってくださるお客様も少なくないようです。