変化し続け、発信し続ける「渋谷の街」は
新しいライフスタイルを提案する事業に適している
2005年5月、東京工業大学在学中に有限会社グローバルエージェンツを設立。2006年4月、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。マーチャント・バンキング部門にて、グローバルのファンド資金を利用した国内の不動産投資に携わり、7件合計約6,000億円の投資案件を担当。2009年1月ゴールドマン・サックスを退職、グローバルエージェンツ代表取締役に再就任して現在に至る。
--山崎さんと渋谷との出会いについてお話ください。
実家は国立市でしたが、新宿にある中学・高校に通っていたため、高田馬場・渋谷・新宿・池袋ではよく遊びました。ただ、中学生の頃は高田馬場が庭という感じで、渋谷はセンター街で絡まれそうなイメージがあってちょっと怖かったですね。まあ、中学生の頃は、高田馬場でも、絡まれる時は絡まれるのですが(笑)。高校になると、もっぱら遊びは渋谷でした。当時は意識していませんでしたが、渋谷は競争が激しいため、カラオケなど安い店がたくさんあって、お金のない高校生が遊ぶのに適しているんですよね。何をして遊んでいたかといえば…、当時の高校生がしていたような一般的な遊びですよ(笑)
--起業した当初から渋谷に事務所を置かれていますね。
新しいチャレンジやサービスはまず渋谷から。という一種の共通認識が存在するくらい新しいものが生まれては消えたり広がったりする特別な街だと思うんです。私も新しいライフスタイルを発信するという事業をしている以上、情報発信力のある渋谷を拠点にするのがふさわしいという考えが初めからありました。物件のオーナーから信頼を得るためには、丸の内や大手町、西新宿などに事務所があるといいのでしょうが、私たちのお客様はオーナーではなく入居者です。入居者が集まれば、自然とオーナーは付いてきますから。そのように入居者目線で考えても、やはり渋谷に事務所を置くのは自然な流れでしたね。実際、首都圏の物件では、渋谷で働いている入居者がものすごく多いんですね。内覧の時などに、「渋谷から何分」という基準で話す人たちはとても多いです。情報感度が高い人が渋谷に集まるということなのでしょう。
--今後、恵比寿の他、渋谷エリアに物件を運営するお考えはありますか。
渋谷エリアであれば、どこでも運営したいですね。ただ、さすがに渋谷の中心部は賃料が見合わなくて難しそうです。私はゴールドマン・サックス証券時代にも渋谷エリアを担当していましたが、渋谷は中心部から、商業施設、オフィス、住宅街と、幾層もの円を描くように街が広がり、さらに交通のハブにもなっているという稀有な町です。賃料は、商業施設、オフィス、住宅の順に下がっていくため、ソーシャルアパートメントを運営するなら、桜丘町や神泉、渋谷三丁目といった駅から徒歩10分程度の住宅街が現実的かもしれません。
--渋谷につくってほしいもの、残してほしいものはありますか。
渋谷ヒカリエが掲げている「日本にもっとスタンディング・オベーションを」というキャッチコピーに、とても感動しました。そう、日本には、知らない人たちと感動を共有し分かち合い、一体感を生み出せる場が足りていないと思います。そういう場所が渋谷にできるのは本当に嬉しいことです。それから個人的には、もっと渋谷は新陳代謝があってもいいのかなと思いますね。地主の数が多いからでしょうが、とても良い立地に小さくて古いビルが残っていることがあります。そういう空間が新しい文化を発信する場所に変わっていけば、渋谷の発信力はもっと高まると思いますし、景観的にも面白くなるでしょう。「残すこと」に固執する必要はないのでは。あえていえば、変わり続け、発信し続けるという文化を渋谷に残してほしいですね。
--さらに新たなサービスを展開するお考えはありますか。
物件の一つである「麻布十番クラウド」では実験的に「クラウド型」のライフスタイルを提案しています。これは、自分のパソコンの中ではなく、ネットワーク上でデータを管理する「クラウド・コンピューティング」の考え方を参考にしています。クラウド・コンピューティングは、「いつでも・どこでも」自分のデータを管理できるのがメリットですが、今のところ、私たちのサービスでは「いつでも」を実現しています。少し具体的に説明しましょう。深夜まで残業したり、お酒を飲みすぎたりして、家に帰るのが大変な時、ホテルを利用するという考え方があります。しかし、ホテルには使い慣れた私物がなく、寛げないという人も多いでしょう。そこで、麻布十番クラウドにはストレージを設けており、私物を置いておくことができます。そして利用したい時に私物をもって部屋に入り、擬似的に自室をつくり出すことができるのです。これがクラウド型のソーシャルアパートメントです。平日はソーシャルアパートメントに泊まり、週末は郊外の家に帰るという暮らしが実現できますし、逆に郊外に住んでいる人が週末だけ都心に泊まって遊ぶというライフスタイルも想定できるでしょう。その先には「好きなとき」「好きな場所」で、自分の私物のある部屋に泊まることが出来るサービスの実現も見据えています。
--今後の目標についてお話ください。
私は結婚して間もないのですが、ソーシャルアパートメントの物件の一つに夫婦で住んでいます。新しいライフスタイルですから、自分自身がそこに住んで提案し修正していかなければいけないと思っていますので。今のソーシャルアパートメントの入居者は単身者が大半ですが、人生のステージが進んでいく中で、どのようなソーシャルアパートメントの在り方が可能かと、模索しています。例えば、子どもを外で安心して遊ばせられない、また近所とのつながりが希薄になっているという社会変化があるのならば、ソーシャルアパートメントという「家」の中で多くの人に見守られながら子育てをするという在り方があっても良いのではないかと思います。また高齢化が進む中で、アクティブシニアと呼ばれる層が増えています。そういう方々が若者との交流を望んでいることも多く、ソーシャルアパートメントという住を通じて世代間ギャップを崩していくことも考えています。どのような形態になるにせよ、ソーシャルアパートメントをごく一部の人たちの住み方では終わらせず、文化として、インフラとして根付かせて、一般的なライフスタイルの選択肢の一つとして定着させることが、私たちグローバルエージェンツの目標です。
「ソーシャルアパートメント恵比寿」
恵比寿駅と目黒駅の中間地点、どちらの駅からも徒歩12分程度の立地。もともとファミリー向けの高級マンションだった建物を単身者向けにリノベーションした物件で、大使館等の高級住宅街に囲まれた環境の良さも魅力。恵比寿、目黒、中目黒を見渡せる屋上階のルーフトップバルコニーは住人たちの憩いの場となっている。
【ラウンジ】コミュニケーションの場となるラウンジ。入居者が寛いで話に花を咲かせられるように大きなソファを設置し、大型テレビやテレビゲームなども用意している。入居者が友人などを呼んでパーティーが開かれることもしばしば。
【キッチン】キッチンも共用。冷蔵庫やガスコンロなど必要な調理器具が揃い、個々のストレージスペースがある。料理を作り合うことからコミュニケーションが生まれることも多い。
【部屋】サイズや形状は部屋によっていろいろ。白を基調としたシンプルで明るいインテリア。ベッドやエアコン、デスク&チェア、冷蔵庫などの家具が備え付けられている。
【シャワー室・トイレ】シャワー室やランドリー、トイレなどは入居者が共同で使用する。定期的に清掃業者が入るため、入居者が清掃をする必要はない。水廻りが個室にひと通り揃った通常のマンションタイプの物件もある。
【屋上】屋上が開放できる物件は、入居者の格好のコミュニケーションの場となる。パーティーを開催したり、夏場はビアガーデンになったり、入居者が思い思いに過ごしている。