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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

プロフィール

1955年生まれ。渋谷区出身。慶應義塾大学法学部卒業と同時に、祖父が創設した株式会社熊谷商店和食部門を独立させた有限会社蔵社長に就任。1982年、株式会社熊谷商店社長に就任(翌年、有限会社蔵と合併)。2001年、クマガイコーポレーションに改称。現在は、蕎麦店、ピッツェリア、カフェ、居酒屋、ワインショップの5業態9店舗を経営する。渋谷スペイン通り商店会理事、渋谷道玄坂商店街振興組合柳通り支部監査理事、渋谷警察防犯協会理事、少年補導委員ほか。

渋谷は出店意欲をかき立てる街

--渋谷はまだまだ可能性がある街ですか?

私は路面とか2階とか店頭に表現ができるところで仕事をしたいと思っています。ビルインしたくないんですよ。雨が降っていたら雨の日の商売があって、風が吹いていたら風が吹いている日の商売があって…空が見えるところでなるべく仕事がしたいなと思っています。デベロッパーさんが雨の日はこの音楽を流すとか、急に雨が降ったらこうするとか…それは楽しくないなと。なるべく外というか路面の仕事をしたい。ただ、公園通りに面したところだとか、Bunkamura通り、センター街などは賃料が高すぎてさすがにやりきれない。宮益坂だとか明治通り沿いだとかの中で、チャンスがあればという風には思っています。会社でひとつひとつブランドを作っているのは、その地域での一番店を作ろうと思っているんですよ。例えば渋谷に来たら、どこかで休憩しようとか、何かどこかでお茶を飲んでいこうと思ったときに、一番最初に頭に浮かぶお店になりたい。例えば、軽く食事をして帰ろうと思ってピザを食べようと思ったら、「渋谷のピザ屋だったら」と言われる店を作っていきたい。渋谷はある意味、観光地ですが「人間関係」であれば、青学の学生だとかが日常的に絶えず使える店の作り方をしています。

--渋谷の魅力はどこだと思いますか?

やはり渋谷って「谷」の街だなと思います。坂を登っていく先にパルコがあったり、下のところに東急の東横店とかあったり。あと、意外と面が広いですね。渋谷は大型商業施設が散ってくれているので非常にありがたい。坂があり、谷があり、細い道があり、通りが囲碁の目のようにあるんじゃなくてグチャグチャにある。谷をたどっていくと、センター街だったり、ファイアー通りだったり、裏原宿に抜けていたり…そういう街の構造がいいと思います。渋谷の中心の賃料が高くなったので、その周辺に裏原宿とか裏渋谷とかも生まれる。それがあるから渋谷は楽しい。歩いていて「ヒョッ」と見つかるそこそこのお店がたくさんあっていい。地方の人が東京に進出する際や新規参入なんかで、出店先に渋谷を希望する場合が多いと聞きますが、いざ渋谷で物件を見つけたらやっぱり一生懸命店を作るじゃないですか。そういう意欲をかき立てる街なんですよ。それが、街の魅力として積み重ねとなっているんですよ。そこから大きくなって渋谷を卒業した人もいるし、逆に渋谷にこだわり続ける人もいる…その辺が街の魅了かな。ミニシアターも相変わらず多いし、そういうものが絶えずある街。それが蓄積になっているんですよ。今後、大型の商業施設ができても、渋谷はきっと街角でそんなことをやる人たちが必ず出てくる街。私もそうありたいと…街角を曲がった場所に、やはり魅力的な店を作っていきたいですね。すごく大変なことではありますが…。

渋谷の軸は、センター街から時計回りに動いている

--出店意欲がかき立てられるのは、渋谷に来るお客さんに魅力があるからですか?

渋谷に来ている人のうち、買物目的で来ている人は3分の1ほどで、たまたま渋谷を通る学生や、サラリーマンもとても多いですよ。90万人とか言われる来街者のうちのやはり3分の1ぐらいは通過点のサラリーマンじゃないかな。いずれにしてもすごく大きなマーケットで、かつ一番お客様が何かを求めて来てくれる街。渋谷に行ったら何か見つかると思っているんですよ。一方で、それを提供する飲食店やショップが揃っている街。20代の人たちは、「今日も渋谷に来ちゃった」??何かを見つけられると思うお客様の期待。その期待に応えようとするいろんなショップがたくさんあるところが渋谷の魅力なんでしょうね。ただ、何か店を開いたから「ワサワサ」お客様が来てくれるほど甘い街じゃないですね。やはりお客様に対してきちんとプレゼンテーションして出せている店にしかお客様は来てくれない。若い人の目が肥えていますから、優劣のすごくついちゃう街でもありますね。退場している人も多いし、ここですごく鍛えられて大きな会社になるところも多い。そういうところにすごく魅力があるんじゃないかなと思います。

--渋谷に集まってくる10代の変化をどのように見ていますか?

この10年ですごく目立ちたがりの子たちが集まっていた時期がありましたが、それがここ2年で「ピタッ」と収まってきて、何か落ち着いていますよね、今の若い人たちは。これまでは10代の子だけがすごく目立っていたので、年齢的にもう少し上の人とミックスされてきてちょうどいい感じです。過ごしやすいというか使いやすい街になっているんじゃないですか。たまたま私はこの街で少年補導のボランティアをしていますけれど、この街で古くから仕事をしている方は、何らかの形で街にかかわっています。そういう気持ちの方が多いこともあり、渋谷自体の街が崩れていく時の自浄作用みたいなものがありますよね。ガングロの時代やチーマーの時代などもありましたが、必ずそれがもとに戻りますよ、この街って。何で戻って来るのかなと思ったとき、昔から仕事をなさっている人たちが個人だったり、業界や地域の組織だったりで、ボランティアをやられている方が多い。公園通りの植栽も、植える作業をしているのはこの辺りのビルのオーナーたちです。ビルのオーナー自ら月に1、2回街に出て、きちんと植えて水をやって…そういうことがいいんじゃないですかね。

--渋谷の街の課題は何だと思いますか?

大型のビルが建ってナショナルチェーンばかりになると嫌ですね。小さなショップが根を絶やさなきゃいいなと思います。渋谷って恵比寿や代官山など周辺に逃げて行っちゃうところがある、それが一番怖い。中心部はまず無理だとは思いますが、周辺部だけでも、きちんと渋谷の場所の界隈性を持ったショップが残れる環境があってほしいな。例えばレコードショップだとかが随分減っていますよね。寂しいなと思います。

--渋谷は今後もこの個性を残すことはできるでしょうか?

渋谷に来てくださるお客様でありがたいのは、大型商業施設など特定の場所だけに行こうと思っていないところ。例えば、渋谷から抜ける原宿の道がダメになったとしても、今度は違うところに皆さんが展開を始めると思うんですね。探求心旺盛なお客様が多いし、押し出す側もあえてそこに出て行くことで、力を試してみようと…。その相乗効果で街が面白くなっていき、その結果渋谷の軸って、センター街辺りからずっと時計回りに明治通りの方に動いているなという感じがしています。その中の、一レストラン、一カフェ。渋谷の中で凝っている業態で頑張りたいなと思っています。

--未来の渋谷はどんな街になってほしいですか?

いつもちょっと先を行っているショップだとか会社が必ず街の中にある。それがすごく魅力を放っている街だと思います。それを支援するようなより細やかなデベロップメントを的確にやってくるような会社だとかが出てくるといいな思います。

クマガイコーポレーション株式会社

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