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東ちづるさん
(女優/一般社団法人 Get in touch理事長)

4月2日、渋谷がブルーに染まる! 誰もが笑顔の「まぜこぜの社会」を目指して。

プロフィール

広島県出身。会社員を経て芸能界へ。女優業からコメンテーター、講演、執筆など幅広く活躍。4月7日スタートの新ドラマ「ドクターカー」(読売テレビ系)にレギュラー出演する。一方、プライベートでは骨髄バンクやドイツ国際平和村、障がい者アートなどのボランティア活動を23年続けている。2011年10月、3・11東日本大震災をきっかけに、マイノリティを排除しない「まぜこぜの社会」を目指し、一般社団法人 Get in touchを設立、代表として活動中。2012年4月2日「世界自閉症啓発デー」より、街をブルーで彩るイベント「Warm Blue」をスタートさせ、今年で5年目を迎える。

テレビドラマや、情報番組のコメンテ−ターなど幅広く活躍する東ちづるさん。芸能活動のほか、プライベートでは20年以上にわたり、骨髄バンクや障がい者アートなどのボランティア活動を続けている。毎年4月2日の国連が定める「世界自閉症啓発デー」では、自らが理事長を務める一般社団法人「Get in touch」が中心となり、自閉症をはじめ、さまざまなマイノリティへの理解を深めるためのPRイベント「Warm Blue」を企画・運営している。今回のインタビューでは、東さんが女優業の傍らボラティア活動を始めたきっかけから、「渋谷」を拠点に開催されるという今年の「Warm Blue2016」のイベントの内容に至るまで、じっくりとお話を聞きました。さて、東さんが目指す「まぜこぜの社会」とは、一体どんな世界なのでしょうか?

ボランティアを目覚めたのは、17歳の少年との出会いがきっかけ。

_女優業の傍らで、プライベートで「Get in touch」の理事長をされているそうですが、具体的にどのような支援活動をされているのですか?

支援ではなく、マイノリティPR、表現団体です。様々な団体や企業、家族をつなげる活動をしています。「支援をする」というと「される側」ができてしまう。それは結局、支援する側が社会的弱者をつくり続けることになるので。「Get in touch」を立ち上げる以前の23年間は、ずっと一人で行政や学校、企業など、その時ごとにいろいろな団体とつながりながら活動してきました。

_そもそも二十数年前から、東さんがボランティアを始めようと思ったきっかけは?

ある時、自宅で難病の17歳の少年のドキュメンタリー番組を観ていたら、スタジオの司会者が「頑張ってほしいですね」とまとめたんです。それが、私には腑に落ちなかった。もうすでに十分頑張っているでしょうって。なぜ難病の少年がテレビに出演したのか? そこにはきっとメッセージがあるはずなのに、そのメッセージを伝えていないこの番組のつくり方に課題があると思ったんですね。お涙も数字(視聴率)も必要ですよ。私もテレビ側にいる人間ですから。でもこうした番組はメッセージを伝える、一石を投じるということをしなければ、意味がないんじゃないかと思って、その少年を探し出してメッセージを伺いたいと思ったのです。

_テレビ番組とか一切関係なく、プライベートで探したのですか?

はい(笑)。それで、メッセージを聞きました。当時、私は「どうして芸能界にいるのか?」ということに悩んでいたということもあるかもしれません。でも、彼に会って気付いたんです。「私は私を活用できる」って、そこで骨髄バンクの活動を開始したのがボランティアの始まり。それから難病や障がい者とか、親を亡くした子どもたちの就学だとか、戦争で傷ついた子どもたちなど、どんどん活動が広がってきたという自然の流れです。

_女優業と並行して、ボランティア活動をする意味を見出したわけですね。

ボランティアを始めて、仕事の意味もクリアになったんです。仕事はスキルアップのため、利潤追求、組織優先とか、いろいろな理由があるから頑張れる。だけど仕事以外のことは、気持ち一つなんですよね。

浅く広くゆるくつながる、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す。

_今まで一人で活動を続けてきて、なぜ「Get in touch」という団体を作ろうと思ったのですか?

2011年の3・11東日本大震災がきっかけです。当時、被災地の避難所は、「まぜこぜ」でした。まさに日本の縮図です。私は「まぜこぜの社会」という表現をしているのですが、その避難所の中で、多様な人びとが互いに支え合うということが難しかった。やんわりとマイノリティの人たちを追いやってしまう。「ここはバリアフリーじゃないから、他の避難所に行かれたほうがいいんじゃないですか」と悪気なく言ってしまうとか。自閉症の子どもたちがパニックを起こしたときに怒鳴りつけたり、聞こえない、見えない人たちにアナウンスが十分に行き渡らなかったりだとか…。社会が不安に陥った時に、普段から生きづらさを抱えている人たちが追い詰められてしまう現実を知って、活動仲間とつながり合わなければと。20年以上の体験からノウハウや人脈もある程度あったので、彼らに想いを伝え、「一緒にやりましょう」とスクラムを組むことにしました。

_ボランティアをする団体は数多くあると思うのですが、「Get in touch」の活動の特徴は何ですか?

どの団体も「自分らしく生きていきたい、ありのままで生きていきたい、幸せになりたい」という人権活動なのですが、割と縦割りなんです。これが日本っぽいところで、省庁も政治家も縦割り、団体も企業も縦割りになりがち。競合抜きで互いにつながれば、「社会は変わるはず」と考えたわけです。でも、それは現実的に難しい、じゃあ、つなげていく役割もする団体を作ろうと。

_つなげる団体だから「Get in touch」なのですね。

省庁や超党派の政治家、企業、団体、家族、個人など、つなげながら活動をしていく。なので、支援団体とは違います。「まぜこぜの社会」の居心地の良さをPRしています。違うところばかりを見て、大変な人、困っている人と社会的弱者としてカテゴライズしてしまうことが多いようです。ですが、むしろ共通の部分のほうが多いし、様々な特性のアドバンテージもPRしています。そのためにアートや音楽、スポーツとかファッションとか、美味しいもの、ワクワクするもの、ウキウキするものをツールとして「まぜこぜでいることが居心地いい」を体感してもらう。いくら講演やシンポジウムで説明しても、そこには意識の高い人ばかりが集まっちゃうので、他人事だと思っている人、諦めている人たちに体感してもらいたいと思っています。

_「まぜこぜ」と頭で分かっていても、日本の社会の中ではなかなか体感しづらいですよね。

「なぜ、感じづらいんだろう?」と考えるきっかけにもなればいいなぁと思います。被災地の避難所は、たくさんのマイノティの人たちがいたのに、「なぜ渋谷の街にはいないんだろう?」「なぜデパートにはいないんだろう?」と。どんな特性の人でも、特別に真面目とか暗いということもありません。一緒にいることで「なんだ、みんな同じ人間じゃん、地球人じゃん」ということが楽しく気付ければ。難病や障がいと呼ばれる特性のある人たちは、家族が一番の頼り。だから親御さんの多くは自分たちが亡くなったら「この子はどうなるんだろう」と心配しています。多くの場合は福祉のプロに委ねているのですが、これだけだと依存関係になりがちです。家族や福祉だけではなくて、みんなが浅く広くゆるくつながることが大事だと考えています。それが多様性社会。困っていたら「どうすればいいの?」って気軽に聞ける社会が望ましいと考えています。

_そこを「Get in touch」が一番重視していることなんですね。

日本は絆とか、愛とか、正しい知識・理解と言うでしょう。それは重い。浅く広くゆるくでいいんです。つまり、一緒にいるということ。知識とか理解とかはあったほうがいいけど、全ての特性に対しては無理です。知識や理解は当事者とか家族になってから勉強するもので、いくら自分のお子さんの難病に詳しい人でも、他の難病のことは分からない。障害だって、生きづらさってその人のものだから。テレビコメンテーターも「正しい理解が必要ですね」と言ったりしてるけど、「無理でしょう」ってつっこみたくなる。とにかく同じ時間、空間を共有して、新しい人間関係をつくっていく。どんな状況でもどんな状態でも、誰も排除しない社会が本来の多様性社会で、私たちが言う「まぜこぜの社会」だと思います。

街にバリアフリーがなくても、私たちに工夫と配慮があればいい。

_ちなみに3・11から丸5年が経ちましたが、震災以降に何か感じたことはありますか?

3.11以降にみんなが、「絆」とか、「つながる」とか、「寄り添う」とか言い始めたのですが、ちょっと気持ち悪かった。もちろん悪いことじゃないです、いい言葉です。だけど、その言葉を使って発信することで「つながった気持ちになること」は危険じゃないかと思いました。

_それは偽善という意味ですか?

何かしなきゃいけないと焦ったんでしょうね。実際、仕事や友人以外でつながるのは面倒くさいですよ(笑)。だって仕事はお金が入るし、スキルアップにもつながるので、いろんなことを我慢できます。でも仕事という言い訳がなく、それぞれ違うカルチャーや思想も持つ人たちがつながるというのは、大変なことです。もともと団体をつくらずに、ずっと一人で活動してきたのは人間関係で絶対につまずくと感じていたから。だから、「つながる」とか「寄り添う」とか、そんなに簡単に言っちゃって大丈夫?って思う。でも、震災から5年経過すると、風化していってますよね。阪神大震災の時にも感じていたことですが、普段から「つながる社会」をつくらなければいけないと強く感じました。

_現在、日本では「多様性社会」という言葉が盛んに叫ばれていますが、実際に現場にいる東さんから見て、その状況をどう感じていますか?

「多様性」とか「ダイバーシティ」とか「インクルーシブ」「ノーマライゼーション」という言葉が、ものすごく一人歩きをしていているように感じます。中にはパラリオンピックに向けて「バリアフリー」が必要という声もあるようですが、今から街がバリアフリーになるのは難しいですよね。物理的な問題も、予算の問題もあるでしょうから。でも大丈夫。私たちにバリアがなくなれば。自然に工夫や配慮をし合う社会になればいいですよね。そもそも「まぜこぜの社会」という発想は、まぜご飯から思い付いたんですけど、まぜご飯はいろいろな食材をその食材にあった切り方をして、味付けはシイタケを甘辛くするとか、エビは薄味にするとか、個々に下準備をします。要するに工夫とか配慮があって、混ぜ合わせて美味しくなるんです。

_最初からごちゃまぜじゃない?

障がい者も自閉症の人もみんな一斉に街に出ろ、それはしんどいことです。バリアーのある街に出るんだから、ニーズに応じた配慮が必要。段差があるところは板を敷くとか。例えば、自閉症の人が、店内の音楽が気になるから買い物ができないんだったら、何時から何時まではBGMを止めますよとか、工夫をすれば何だってできる。だけど、みんなと同じ社会性をつけなさいという考え方は、矯正ギプスを付なさいと言っているのと一緒です。

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