SHIBUYA109レジ通過数No.1の集客を誇る人気ショップ「SBY」のプロデュースをはじめ、人気モデルを起用したカラコンの企画販売、SHIBUYA No,1パーティーロッカーあっくんやFIG&VIPER クリエイティブディレクター植野有砂、ギャル界のドン渡辺かおるらが名を連ね、渋谷を拠点に多角的な事業を展開するエイチジェイ(HJ)。その母体は、社長・池田隼人さんが高校時代に仲間とともに立ち上げたイベントサークル(イベサー)だったという。かつては100以上のイベサーを統括するイベントプロデューサーであった池田隼人さんの人望は厚く、渋谷の若者たちから一目置かれる存在。今回は21歳で会社を立ち上げてから、渋谷にこだわって走り続けてきた10年間を振り返ると共に、池田隼人さんが仕掛ける「女子高生ミスコン」についてもお話を聞きました。
「渋谷で一番のファミリー」でいることが企業としての理念
_最初に、エイチジェイ(HJ)の事業内容からお話ください。
エイチジェイは2016年2月22日に設立から10年を迎えました。現在は、SHIBUYA109の「SBY」をはじめとした店舗プロデュース事業をはじめ、イベントプロデュース事業、メディア事業、広告代理店事業、不動産事業など、それこそ「何でも屋」のような展開ですが、全ては「渋谷」を拠点としている点で一貫しています。設立当初から「渋谷を拠点に新たなムーブメントを起こす」というミッションのもと、「渋谷で一番最高なファミリーを築く」というマインド、そして「繋がりの力でみんなの夢を実現する」という夢を持って走り続けてきました。といっても、10年前に今の仕事の姿がイメージできたわけではありません。ビジネスをどうつくってきたかというと、例えば、仲間が飲食店や洋服店、サロンをやりたいと思ったら、それを渋谷ファミリーが全力で応援して成功させる。基本的にはその繰り返しのイメージです。私が専務取締役を務める芸能プロダクション「エーライツ」にしても、最初から「芸能事務所をやろう」と考えたわけではなく、モデルやタレントになりたい子を雑誌に紹介するなどして応援していたら、いつの間にか一線で活躍する子が増えてきて。これは自分たちでマネージメントした方が早いなと気付いて、そうしただけのこと。だから、10年後の会社が何をしているかという具体的なイメージもないし、むしろ事業内容は何でもいいとさえ思っています。ファミリーの繋がりの力で、一人ひとりが夢を叶えられる環境をつくり続けることがエイチジェイの存在意義ですから。ただ、自信を持って言えるのは、10年後も「渋谷で一番のファミリー」であり続けるということ。何を持って一番かというと、「良い仲間」として「あいつらが渋谷で一番楽しそうだ」と、誰からも言われるファミリーでありたいですね。
_エイチジェイの設立の経緯を教えてください。
高校時代、地元の仲間と渋谷でサークルをつくってイベントをプロデュースしていました。高校生による高校生だけのイベントとか、遊びの延長でしたが、「どれだけカッコいいイベントをつくるか」に全力を注いでいました。大学生になると、当時、渋谷に130くらいあったイベサーのうち100サークルくらいの面倒を見るようになり、Zepp東京に3,000人集めたり、全国30都市で連動イベントをやったり規模が大きくなってきまして。「これは仕事になる」と思い、2006年2月22日、21歳のときに仲間とともにエイチジェイを立ち上げました。一番初めにやろうと思ったのは「飲食店」だったのですが、なんせ渋谷は出店料が高くて、失敗したときのリスクが大きい。そこで思いついたのが「海の家」でした。それなら2カ月で終わるから赤字にも限度があるし、何より毎日がイベントという、こんなに自分らにぴったりなお店はないんじゃないかと。2007年に江ノ島に海の家「GALAXY」を初出店し、それこそ渋谷中のギャルたちに声をかけたら、「江ノ島で一番の集客」と言われるほどの大成功を収めることが出来ました。その噂を聞きつけたのか、ある日、SHIBUYA109の広告代理店の方が海の家にやって来て、「この集客力を渋谷で生かさないか」と持ちかけられ、翌年SHIBUYA109に「SBY」を出店することになったんです。SBYは、コスメを中心に最先端のモノや情報を入手できたり、読者モデルと会えたり、今でこそ珍しくなくなりましたが、女子高生のアイデアを反映してケータイの充電用コンセントや、メイクカウンターもいち早く設置しました。店名のSBYは「S(hi)B(u)Y(a)」の略称で、ニューヨークがNY、ロサンゼルスがLAなどと表記されるのと同じイメージで世界を意識して名づけました。ちなみにエイチジェイ(HJ)という社名は、自分らがやっていた「H Jangle」というサークルグループの名から。学生気分で通用するほど甘くないと思っていましたが、原点として名前は変えたくありませんでした。それでも、自分らのルックス的に「ジャングル」はないなと思い、何かと言い訳できる「エイチジェイ(HJ)」に途中で社名を変更しました(笑)。
SHIBUYA109 8Fフロアで、HJがプロデュースするショップ「SBY(エスビーワイ)」。雑貨やアクセサリーの販売のほか、最新コスメを無料で試せるメイクルームなども併設している。
プロシューマーだから同世代に響く、成功の鍵はSNS!
_広告代理店事業や商品プロデュースの仕事は、どのような流れで始めたのでしょうか。
自分たちがビジネスで特に重視しているのがSNSです。今の10代や20代は、ご飯を食べながらでも、さらにはテレビを見ている時でさえ、タイムラインを眺めているほど。それほどのメディアをビジネスに生かさない手はありません。インフルエンサーと呼ばれるSNSで強い影響力を持つモデルやタレント起用し、カラコンやコスメのメーカーと提携してプロデュースした商品が大ヒットしています。そのヒットの理由はリアルな視点を十分に取り入れていること、さらにSNSによる情報拡散が絶大です。彼女たちは、自分がこだわり抜いてプロデュースした商品だから自信を持ってSNSで発信するし、実際に使っているので常にカバンの中に入っている。「プロシューマー」という言葉がありますが、まさにそれ。プロデューサーでありコンシューマーでもあるから、同世代の消費者に言葉がダイレクトに届くんです。そのほか広告代理店事業として、レセプションパーティーを企画したりします。例えば、店舗のオープンやリニューアルに合わせてパーティーを開き、インフルエンサーを含むSNSで影響力のある女の子たちを呼び込みます。女の子にとっても、「レセプションパーティーに行ってきたよ」なんて、ワンランク上の日常をアピールしたい気持ちがあるので喜んで来てくれます。ここでポイントとなるのは、あくまでも彼女らが感じたままを発信すること。美味しくないのに美味しいと発信したら単なるステマ広告ですし、そんな言葉は消費者の心を動かしませんからね。フェイクではなく、コンシューマーのリアルな目線を持ち続けることを前提にしています。
―今の時代、ビジネスにおいてもSNSの活用がとても大事なんですね。
タイムラインで最も目を引くのは写真ですよね。なので、写真を撮りたくなるきっかけがなければ、タイムラインに写真は上がりません。だから新規事業は、いかに写真を撮りたくさせるかという視点で検討しています。例えば、渋谷肉屋横丁で経営する居酒屋「ちゃんばードン」の店長は、本物のちょんまげを結っているんですよ。お客さんは店長と一緒に写真を撮りたがるし、外国人もすごく興味を持ってくれるから、タイムラインにはこの店長の画像がたくさんアップされています。その流れで「1年のうちで一番写真を撮る日はいつだろう?」と考えたときに、一番に思いつくのがクリスマスです。でもカップルの写真は、SNSにあまり上げたくないという人も結構いる。同じようにお正月に家族と質素に過ごす姿の写真も上げないだろうし、そもそも写真さえ撮らないかも…。そう考えていく中で残ったのが「ハロウィン」「誕生日」、それから「海」。海は「海の家」を既に運営しているので置いておいて、「じゃあ、ハロウィンで何かできないか?」と思い、「渋谷ハロウィン」という商標を取得しイベントを仕掛けることに。昨年のハロウィンではタレントやモデルを巻き込み、SHIBUYA109の前で仮装コンテストやDJ、ライブなどを行ったのですが、狙い通り、タイムラインにはたくさんの写真があふれて、大きな盛り上がりを見せました。これこそが新しいメディアであり、新しい広告のビジネスチャンスだと考えています。
昨年のハロウィンには、SHIBUYA109店頭でイベントを開催したほか、センター街でゴミ収集のボランティア活動も行った。