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KEY PERSON キーパーソンが語る渋谷の未来

渋谷を中心に活躍する【キーパーソン】のロングインタビュー。彼らの言葉を通じて「渋谷の魅力」を発信します。

インタビューアイコン

中西幸子さん
(パルコ・エンタテインメント事業部プロデューサー)

ストリートダンスを発信する街は、インディペンデントな文化が共存する渋谷しか考えられなかった。

プロフィール

カンバーセーションにて、ジェーン・バーキン、騎馬オペラ『ジンガロ』、横浜みなとみらいを劇場にした野外スペクタクル「Les Mécaniques Savantes (博識な機械)」をはじめ、アジア、アフリカ、中南米など世界各国より多ジャンルの招聘舞台公演を企画制作。2011年3月パルコ入社、ASTERISK、s**t kingz、DANCE DANCE ASIA ~Crossing the Movementsなどストリートダンス舞台公演公演のプロデュースを手がける。

ストリートダンスにうちこむ若者を見ていると、この国の未来が明るく感じられる。

_渋谷ストリートダンスウィークの見どころを教えてください。

これまでストリートダンスと接点がなかった方々にもアピールしたいという思いでダンサーたちとプログラムを考えました。通りすがりの人でもふらりと立ち寄る代々木公園をメイン会場にして、無料で楽しめるプログラムを多くしたのもそのためです。実は、世界の名だたるコンテストやダンスバトルでは、日本のダンサーは常に上位にランクインし、世界的に非常に高く評価されています。先入観を持たずに見ていただけると、きっとポジティブなエネルギーが感じられると思います。国内外のバトル・コンテストで総獲得タイトル200冠以上の90年代生まれのアジアのスーパーダンサーたちによる舞台作品「A Frame」、世界レベルのストリートダンサーがコラボレーションする「SSDW night 〜immix〜」では、本格的なステージでストリートダンスのパワーを感じてください。この2企画は屋内ですが、そのほか、高校生対抗ストリートダンス選手権、ダンスバトル、さらにキッズからシニアまで初心者も参加できるダンスのワークショップなどは代々木公園で開催します。

_今後、渋谷の街でストリートダンスをどう定着させ、発展させていきたいですか。

渋谷には、ストリートダンサーの練習する姿が見られる宮下公園や、海外からも受講生が集まる日本を代表的する「En Dance Studio」や「DANCE WORKS」を初め、大小数多くのダンススタジオがあり、まさにメッカと言えます。Shibuya StreetDance Weekは、2020年のオリンピックイヤーには、渋谷中の劇場やライブハウスのほか、渋谷音楽祭のように、それこそ街中のストリートで参加したり鑑賞できるようなイベントに育てたいです。さらにダンス以外のストリートカルチャーであるグラフィティや音楽をミックスしたイベントも渋谷から紹介したいです。

_ストリートダンスに対して大きな可能性を感じられているのが伝わってきます。

小・中学校と高校で体育のカリキュラムにとりいれられ、現状ストリートダンス人口は400万人と言われていますが、今後5年間授業でストリートダンスに触れる生徒は2020年には2000万人に達する計算となります。今後、多くの若者が触れる機会を持ち、より身近に感じられるようになるジャンルと言えます。さらに私がストリートダンスに可能性を感じているのは、ダンスをする若者の真摯な態度に接したことが大きいです。プロとして食べていけるのはほんの一握りに過ぎませんから、ほとんどは日中アルバイトをして、夜遅くに仲間と集まって練習し、少しの睡眠を取ってまた仕事に行くような生活を送っています。踊ることへの情熱。ストリートダンスのイメージがわるくならないように、多くのダンサーはとても礼儀正しく真面目で、中にはコンテストの楽屋は来た時より帰る時のほうがきれいになっているほど。本当に「日本の若者も捨てたもんじゃない」と感心します。恵まれた状況にいなくても、目指していること、信念がある若者は、ネガティブをポジティブに変えて前に進む力を持つと、実感します。

多様性のあるインディペンデントな文化が共存する素晴らしさ。

_文化的な面では、渋谷をどのような街であると捉えているのでしょうか。

インディペンデントなシアターやライブハウスがたくさんありますよね。大きな街なのに大規模なシネコンがないのは珍しい。産業的に文化を提供するのではなく、企業も個人も手塩にかけて育ててきたものを紹介している街なので、画一されていない個性的な文化をチョイスができる面白さがあります。そうやって個人商店がやっていけるのは、すごく素敵なことだなと思います。もちろん、渋谷に限らず、いろいろな地域がそれぞれのカラーで文化を発信しています。例えば、六本木なら現代アート、池袋なら演劇といったように。どこが一番というわけではなく、それぞれが個性を持って地域を形作っていくことが大事だと思います。そういう個性という点では、渋谷は「多ジャンル・多様性」とでも言いましょうか。ストリートだけではなく、劇場やシアターなど大中小の団体が共存し、それぞれアイデンティティを持っているけど、ボーダレスで境目がないというか。こうした特性がある街を他には知りません。もっともっと熟成することで、街としての魅力はさらに深まるのではないでしょうか。

_そういう街の特性は、どのようにして育まれたとお考えですか。

ともに夢や理念を抱いた創立者がいる東急グループや西武グループの存在は大きいと思います。文化の価値を認める街づくりを進めたからこそ、インディペンデントなシアターやライブハウスなどが根付いて多様なカルチャーが発信されているのではないでしょうか。

もっと文化を身近に感じられる街へ。「文化特区で免税」なんてどうでしょう。

_これからの渋谷に望むことは何ですか?

日本の演劇やオペラのチケット代って、高いですよね。例えば、ベルリンでは、日本なら5万円のオペラ公演が2,000円程度で、買い物カゴをさげた人が見ていたりします。もちろんイブニングドレスを着て特別な席で鑑賞する人もいますが、文化が日常生活の中にあると感じます。今の日本はなかなか気軽に行かれない状況なので、例えば渋谷では文化的な事業は免税するなど特区として、もっと文化が身近に感じられる街になると嬉しいです。あまりお金を持たない若者でも、早くから良質な文化に接することができるといいですね。

_今後の夢や目標をお話ください。

いま最も深くかかわるストリートダンスの舞台公演を通じて、日本のダンサーをもっと世界中の人たちに知って欲しいです。東南アジアで公演すると、既にYOUTUBEで人気の憧れの日本人ダンサーとして熱狂的に迎えられます。ダンサーもそんなひたむきな熱意に刺激され、ダンスを始めた頃の自分を思い出して初心に返り、高みを目指そうとする姿がとてもすがすがしいです。新しいエンタテインメントとして確立して、音楽はもとより演劇やミュージカルのファンも巻き込んで、日本から世界にどんどんその魅力を広めることが今の夢であり、目標です。

「Shibuya StreetDance Week 2015」

渋谷を拠点にした国内最大規模のストリートダンスの祭典。年に一度、勤労感謝の日を中心とした週末にストリートダンスの聖地「渋谷」から、良質なエンタテインメントを国内外に発信していく。初開催となる今回は、90年代生まれの若手ダンサーによる「A Frame」(さくらホール)、世界レベルのダンサーによる「SSDW night 〜immix〜」(HARLEM)のほか、代々木公園で高校生対抗ストリートダンス選手権「SSDW CONTEST」、年齢問わずダンスに挑戦できるワークショップ「Lecture Spot」など、ストリートダンスを身近に感じられるプログラムがそろう。

開催:
2015年11月22日(日)、23日(月・祝)
会場:
代々木公園(野外ステージ・ケヤキ並木・イベント広場)
HARLEM(円山町 2-4 Dr.ジーカンス 2F, 3F)
渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(桜丘町 23-21)
主催:
国際交流基金アジアセンター
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
株式会社パルコ
公式:
「Shibuya StreetDance Week 2015」

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