「渋谷が日本経済やトレンドを反映」
西:次のキーワードは「自宅から近い」。福井さん、これはどういう意味ですか?
西:後半は普段遊んでいて、「どういうことを感じているのか?」ということを聞いていきたいと思います。 「時代と共に、レコードやCDショップが減ったり、渋谷系と呼ばれるトレンドや情報発信が少なくなった」 これは、レコードが入っていますので、TAROさんだと思いますが、渋谷ならではの情報が少なくなったということですかね。
DJ TARO:日本経済とか、トレンドを含めて、渋谷が反映しちゃっているのかなっていうところがありますよね。例えば、音楽はだんだんデータダウンロードが主流になって、レコード屋が減ったとか、そういったところも、渋谷には如実に表れている。
西:確かにそうですよね。
「ギャルは、何だろう、(私たちみたいな)こういう感じで(笑)。年齢は関係ない」
西:愛奈さんの意見で、「109にギャルが減った。高校生が多い」って。これは、ギャルと高校生が別のものを指しているのか、同じものを指しているのかが僕はよく分からなかったのですが。ギャルと高校生には違いがあるの?
愛奈:そうですね。ギャルは、何だろう、(私たちみたいな)こういう感じで(笑)。高校生は、高校生です。もう、普通に学校に通ってる高校生。ギャルはこういう感じなんですよ
西:顔の色は、黒ですか。
ゆまち:黒い。
愛奈:黒とか。昔、わたしが知ってる渋谷とか109は、もうちょっと年齢が高かった気がして、もうほんとにザ・ギャル。うちらなんかよりも、もっと黒肌で、金髪で超もってて、それがギャルだったんですよ。わたしはそれに憧れて、渋谷に行きたいなあと思ってて。でも、今は普通の子、そういうのに憧れている子が、マルキューにもセンターにも多いなあって思いますね。
西:ギャルっていうのは、ちなみに大体、今、何歳から何歳ぐらいの人が一番多いと感じますか?
愛奈:多いのはやっぱり高校生。でも、今はもう中学生とかでも、髪の毛を染めてる人がいたり、わたしたちの時じゃちょっと考えられない。
西:中学生でも、(ゆまちさん、愛奈さんみたいな)こういうイメージであれば、その子たちはギャルと呼べるんですね。
愛奈:ギャルですね。
西:じゃあ、ギャルというのは世代じゃないんですね。
愛奈:年齢はたぶん関係ないと思います。
DJ TARO:そこ、僕、ちょっと一言、口を挟んでいいですか。
西:はい、ぜひ。
DJ TARO:ギャルの選定前提っていうのが、時代と共に常に推移しているんですね。それは、僕がずっとクラブでDJやっておりまして、そうすると、僕、今、38歳なんですけど、自分が例えば大学生ぐらいのころ、女子大生っていうと、やたら大人っぽかったんですよ。ワンレンで、眉毛太くて、ボディコンで、服装とかも大人びた感じで。だけど、だんだん年齢と共に大人になりたくないっていう声が増えていて、女性のファッションとかにも、だんだん表れてきていますよね。例えば僕が渋谷のアトムとかでDJをしていると、暗がりですし、ほんと申し訳ないですけど大体8割ぐらいはギャルっていう感じではあるんですけど。DJ後に、「きょう、楽しかったです」「ありがとうございます」とか言って、近づいて、ちょっと飲み物を飲みながら話すわけですよ。「どこから来たの?何しているの?」っていう具合に話をしているとき、ふっと年齢の話が出た時に「え! そんな上なの?」っていう。でも、ギャルなんですよ。若作りではなくて、昔よりもファッションとか、女性の感覚に年齢差がなくなってきている。僕、よく109に行くんですけど、昔よりも年齢層が幅広くなったと思うんですよね。
ゆまち:広い。
DJ TARO:お母さんと一緒に買い物に行くんですよね。
ゆまち&愛奈:はい。
西:ベビーカーも増えましたよね。
DJ TARO:そうなんですね。そういう意味ではギャル定義の帯域幅が広いと思うんですよ。
西:ギャルって、僕らよく言葉では簡単に使うんですけど、実はよく知らないですよね。それはこういう場で、当人たちに話を聞くのが一番手っ取り早い。
山口:あ、すみません、当人でなくて(笑)
西:109に来ている女の子たちの数はあんまり減ってないわけですね、トータルでは?
愛奈:あ、そうですね、数とかは、全然減ってないんですけども。
西:その中身は少しギャルが減って、普通の女子たちが増えてきたという。
愛奈:小学生とかも普通にいるんで。
西:ほんとに。この10年間、渋谷は「ギャルの存在」に支えられてきたと思うんです、何かと。いわば、ギャルは渋谷の無形の資産と言えるかもしれません。
「109前で声をかけられてモデルデビュー。渋谷は夢にあふれている」
西:次にゆまちさんは「人がいっぱい」「発見がたくさんある」「人間観察が面白い」。それから、「横浜より落ち着く」。それから最後に、「渋谷は夢があふれている」と。
ゆまち:最後の「夢…」というのは、今の若い子って、益若つばさちゃんの影響なのか分からないんですけど、モデルになりたいとか、歌手になりたいって思ってる子が、すっごいいっぱいいるんですね。わたしたちがプロデュースしている、渋谷ギャルズっていう、AKB渋谷版みたいなギャルのグループがあるんですけど。オーディションには何千通も応募が来て、夢、なりたいものとして、歌手、モデル。ゆまと愛奈も109前でeggの編集部の方に声をかけられてモデルデビューしたのがきっかけなんですが、私たちのブログでも、「どこに行ったら、モデルになれますか?」とか、「どこに行ったら、雑誌に載れますか」っていうコメントが結構来たり。だから、渋谷には夢見る子が、ほんと集まるのかなって。
西:渋谷に向かって、みんな来るわけですね。
ゆまち:来てると思う。やっぱりトレンドの中心とか、きっかけになるのは、渋谷が一番多いのかな。
西:僕らの世代では夢にあふれているって感覚、あんまりないんですね。でも若い子たちは、そういうふうに渋谷を見ている。
ゆまち:思っている子、多いと思います。
「気づくと無意識に、スクランブル交差点、センター街を避けている」
西:じゃあ、今度は逆に、渋谷で嫌なこととか、遊び場として足りないものを聞いていきましょう。「いろいろあって楽しい所だけど、やはり中心部については無意識に避けてしまう」。これは?
山口:はい。センター街通って行けば近いのに、わざわざ横道から行ったりとか、そういうときもありますね。(笑)
愛奈:ちょっと分かる。
山口:そこが面白い時もあるんですけど、気がつくと無意識に、そこを真っすぐ行けば近いのに避けている時があります。人が多い、混んでいるというのはもちろんなんですが。後はセンター街にも、もちろん地価が高いというのがあるんですけど、もう少し渋谷にしかない店があると面白いのにと思ったりもします。
西:渋谷にしかないものが減っているのかもしれませんね。
山口:そうですね。センター街って、何かの激戦区になっている所は歩いていて面白いんですけど。すし戦争があったり、ラーメン戦争があったり、牛丼戦争があったり、今だと居酒屋戦争ですか。そういうトレンドを見る面白さはあるんですけど、でも、実際そこに入るかなって思うと、僕ぐらいの年齢になると難しい。
西:そうですね。
「ご飯食べて、カラオケ行って、『さあ、何する』ってときに何もない」
西:次に「R1みたいなスポーツがない」。これ、ゆまちさん?さて R1って何ですか?
ゆまち:ラウンドワンです。
西:あ、ラウンドワンのことですね(笑)
ゆまち:ラウンドワンのスポッチャとか。ショッピングして、ご飯食べて、カラオケ行って、「さあ、何する」ってなったときに、何もないんですよ。もう、街ぶらぶらするしかなかったり。ほんとは遊園地って書こうと思ったんですけど、そんな土地はないなと。
西:みんなで集まった時に行く場所がない?
ゆまち:そうなんです。結構、どこの街に行ってもそうなんですけど、行く場所に悩むんですよね。「きょう、何する?」っていったとき、「じゃあ、またカラオケか」みたいな。
西:カラオケが受け皿になっているんですね。
「当時、代々木公園は大きなローラースケート場みたいな感じでした」
西:これはTAROさんですね。センター街のごみなどはバツ」「夜遅くまでやっている飲食店が実は少ない」「スリー・オン・スリーのコートみたいな場所も少ない」
DJ TARO:そうですね。土地代っていう問題はあると思うんですけど、以前は「空き地」的な要素っていっぱいあったんです。僕もゆまちさん、愛奈さんと同じでやっぱり体を動かしたいので、ちょっとしたフットサルコートができればいいなあと。今、世の中に遊戯施設っていうか、遊び場が全体的に減ってしまったなという気がしていて。僕は子どもの頃、渋谷公会堂(現CCレモンホール)が真正面に見えるところに住んでいまして。毎週土日に大きいトラックが家の前にボーンと停まって、それが貸しローラースケートだったんです。それで、みんな、代々木公園で滑っていた。当時はSHIBUYA-AXもなかったんで、あそこが大きいローラースケート場みたいな感じで、ほんとにニューヨークみたいで(笑)。それが楽しくて、土曜日に靴借りて、ほんとは2時間で返さなきゃいけないのに、お兄さんたちが「明日も来るから、明日まで使ってていいよ」と。当時は公園でスケートをやっちゃいけないとか、そういうルールがなかったんで、大人から子どもまでみんな楽しんでいました。それから代々木公園では壁打ちでテニスやっていたり、ホコ天やバンドがあったり、ダンスがあったり、そういう自由な空間があったんですよね。スポッチャじゃないですけど、もうちょっと代々木公園で何かできないかなと。今はドラえもんにしか出てこない「空き地」ですが、もっと自由に体を動かせるような、そういう所があってほしい。
西:「空き地」って確かにないですね。
DJ TARO:そうなんですよね。もし、そういう場所があったら楽しいと思うんですよね。
ゆまち:自転車のレンタルとか、駅前にあってほしいんですけど。そうしたら、もっと移動も出来るし。
愛奈:スクランブル交差点とか、自転車で(笑)。
DJ TARO:すり鉢を自由に行けるように電動アシスト付きのね。
ゆまち:都内はほんと自転車で行動してる人とかが多いんで。
西:多いですね。
ゆまち:郊外から来た人にもレンタル、1日300円とかで。
西:いいですね。
DJ TARO:それこそ、マップを配って。
ゆまち:してもらえたら、めちゃアゲかなと。
「強めのギャルが増えて、もっと盛り上がってほしい」
西:最後の質問になりますが、「渋谷の街に期待すること」を聞いていきましょう。ギャル増殖ですね、「もっとギャルが増えてほしい」と。
愛奈:わたしですね。さっき言ったんですけど、ギャルが減ってきてるんで、もっと強めのギャルが増えて、もっと盛り上がってほしい。強めと弱めとかあるんですよ、ギャルでも(笑)すごい黒肌で、金髪で、みたいな。
西:それは強め?
愛奈:はい、強めです。
西:今は圧倒的に弱めが増えてきた?
愛奈:弱めっていうより、甘めが増えた。
西:甘めっていうのは、ちなみにどういう?
愛奈:時代がたぶん今、甘めなんで。なんだろうな、かわいい感じ。強めは、かっこいいとかクール。クールとキュートです。分かりますか。
西:ああ、クールとキュートね。
愛奈:今はキュートがすごい増えてるんで、そういうギャルがいっぱい。メッカ(センター街のプリクラショップ)の前とかで溜まってる感じ。それが、わたしたちの渋谷のイメージなんですよ。
「巣鴨のおじいちゃん、おばあちゃんが『せんべい食べに渋谷に行こうよ」みたいな(笑)」
西:じゃあ、次は「美化」「遊べるスポットの増加」「全年齢の人が楽しめる街になってほしい」。
ゆまち:まず、「美化」。きれいになってきてるとは思うんですけど、まだまだいけるんじゃないかなあって。たばこのポイ捨てとか、やっぱり、ある所はあるし。そういうことをもっとみんなに気を付けてほしいなあって。自分が捨てなきゃごみは増えない。全員やれば、ごみはその場に散らばらないから。空気が汚いとか言われるのも嫌なんで。
西:大人から見ると、渋谷を汚しているの、もしかしたら若い人じゃないかという勝手な見方が一部あるんだけど、若い人からするとそういうことはなくて。
ゆまち:それは偏見。こういう身なりだとすごい偏見があるみたいで、電車に乗ってても、白い目されたりとか、別に化粧とか何もしてないのに。大人は大股開いて、目の前におばあちゃんが立ってんのに席を譲ってもあげなかったりとか、そういうのはよくないです。
西:よくないですね。
ゆまち:だから、そういう面でも、ギャルだけじゃなくて、大人の人にも協力してもらって、渋谷の街をきれいにしてほしいなあって。「全年齢の人」、今でも楽しめてると思うんですけど、おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に楽しめるようになったら、最強じゃないかなと。巣鴨のおじいちゃん、おばあちゃんが、「ちょっと、せんべい食べに渋谷に行こうよ」みたいな。(笑)
西:年齢に関係なく遊べる街になってほしいってことですね。
「渋谷川をカヤックで乗り出したくて(笑)、水の街を表情を取り戻してくれたら」
西:これはちょっと渋い所で、「渋谷川を使う」。
山口:やっぱりここは谷の街なんで。渋谷の東横デパート、それから渋谷駅の下ってのは、皆さんご存じのように川が流れているんですよ。
ゆまち:え?
山口:東横店、渋谷駅は川が流れていて、もともとは川の街だったわけで、そういう記憶をどこかで留めておければいいなというふうに、よく思っています。個人的に川が好きというのがあって、渋谷を歩いていても、「ああ、ここに川が流れてたんだ」っていうのを何となく二重写しに見たりするのが、好きです。川って入っちゃ行けないって柵がしてある所が多いですが、基本的には公道と同じなんで、誰が入って、そこで何したっていい所なはずなんですよね。僕はカヤックをやるんですけど、そこから船で乗り出したくて(笑)。今、日本橋も桟橋の開発で盛り上がっているし、スカイツリーにも桟橋を造って、船のネットワークをもう1回復活するという東京の計画もありますけど。そういう水辺を見直そうという動きの一つとして、渋谷も、水の街の表情を取り戻してくれたらいいなと思っていて。あとTAROさんもおっしゃってましたが、どうでもいい空間が欲しいですね。全部ねじ締めちゃうような街って、あんまり魅力がない。
西:街中の隙間みたいな所が、新しい何かを生み出してきたわけですね。それが今、減ってきているのかもしれないですね。
「ここにいる皆さんで『空き地プロジェクト』を!元渋谷区民として、手伝いたい」
西:じゃあ最後はTAROさんですね。「若い世代が中心となっていますが、もう少し大人が楽しめる場所に」、なればということですかね、これは。
DJ TARO:そうですね、なってほしいなと。大人が単純に遊べるだけじゃなくて、今、話にでた渋谷川とか、東急文化会館にあった五島プラネタリウムとか。僕らが懐かしさと新しさを感じられるような、そういう憩いの場やシンボルが、また戻ってほしいなと。ひょっとしたら、ここにいらっしゃる皆さんで「空き地プロジェクト」とかをスタートさせたりなど、そういうフットワークの軽さも渋谷の街の良さですから。企業や自治体にとどまらずそういう動きが出てきたらうれしいし、何かできることがあれば、ぜひ私も手伝いたい。元渋谷区民としては、そういうふうにすごく思います。
西:ありがとうごいざいます。そろそろ、時間ですね。2012年にはプラネタリウムがあった東急文化会館の跡にヒカリエが建設され、東横線と副都心線の相互乗り入れが始まります。同時に今の東横線の渋谷駅も、あと2年経つとなくなります。
ゆまち:え?
愛奈:え? え? え? え?
ゆまち:え? 東横線なくなっちゃうんですか。
西:東横線が、今のメトロの副都心線とつながるので、地下へ。
ゆまち:え? じゃあ、渋谷から始発が。
西:なくなっちゃう。
ゆまち&愛奈:えー!(笑)
ゆまち:座って帰れない!(笑)
西:まあ、渋谷始発はたぶん出ると思うけどね。
愛奈:切ない。
ゆまち:写メ撮って帰ろう。記念撮影。
西:このように渋谷はこれから、街としてほんとに大きな変化を遂げていきます。本日、各パネリストの皆さんから出てきました知恵を使いながら、渋谷が「エンタテインメントシティ」として、ほかの街とはまた違った街を目指せるんじゃないかな、と皆さんのお話を通じて確認したような気がします。ありがとうございました。
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