ミニシアターが次々と閉館し、日本の映画産業が縮小を続ける一方で、自主制作・自主配給作品として昨年10月に公開されて以来話題を集めた日本映画「サウダーヂ」。これに代表されるように、現在日本の映画製作の現場では、既存の枠には当てはまらないさまざまなスタイルで新しい作品が生まれている。
今回は渋谷のミニシアターで公開中の作品から、それぞれのフィールドで独自のスタイルを貫く3作をピックアップ。俳優からの「ラブコール」を受けて完成させた気鋭監督作、ヒットを飛ばすインディペンデント映画製作集団が手掛ける期待作、注目の劇団の劇作家兼演出家の監督デビュー作ーーーーそれぞれを通して見えてくる、新しい日本映画の潮流とは?
- タイトル
- playback
- 上映場所
- オーディトリウム渋谷
- 上映期間
- 2012年11月10日〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- 三宅唱
- 出 演
- 村上淳 渋川清彦 三浦誠己 河井青葉 小林ユウキチ 汐見ゆかり テイ龍進 山本浩司 渡辺真起子 菅田俊
オーディトリウム渋谷では現在、28歳の気鋭監督・三宅唱さんの長編デビュー作「playback」を公開中。三宅さんは2007年に映画美学校を修了後、2009年にシネアスト・オーガニゼーション・大阪(CO2)で最優秀賞を受賞。CO2の助成を受けて製作・監督した「やくたたず」が俳優・村上淳さんの心を捉え、村上さんからの「ラブコール」を受ける形で同作の企画をスタートさせた。 村上さん演じる主人公の職業は「俳優」。作中では40歳を手前にして「いままで自分は何をしてきたのか、そしてこの先どうなるのか」という不安を抱えた主人公が、「高校時代」にタイムトラベルして自らが生きてきた道を辿り直す。震災後の茨城県水戸市を舞台に、かつての自分や仲間たち、故郷の風景を再発見する主人公。現在と過去が交錯し、反復されるその世界で、果たして主人公は再び自分の人生を取り戻せるのだろうか。
- タイトル
- バビロン2-THE OZAWA-
- 上映場所
- UPLINK X
- 上映期間
- 2012年11月10日〜2012年11月23日
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- 相澤虎之助
- 出 演
- 富田克也/ 伊藤仁/ 鷹野毅 ほか
アップリンクXでは、相澤虎之助さんの監督最新作「バビロン2ーTHE OZAWAー」が公開されている。相澤さんは、富田克也監督作「サウダーヂ」で共同脚本を担当した人物。富田さんらとともに映像制作集団「空族」として活動しており、自身でも「花物語バビロン」「かたびら街」を監督。同作は東南アジアを舞台にした「バビロン」シリーズ第二弾で、作中では新宿でキャッチをしていた主人公が単身でベトナムへ渡航。革命家だと名乗るひとりの日本人との出会いきっかけにインドシナをさまよい、いつしか、ベトナムの戦場にまよいこむーー。主演は富田克也さん、伊藤仁(「国道20号線」主演)さんの2人。ほかに全編を彩る英語のナレーションは「サウダーヂ」の主演女優である尾崎愛さんが担当するなど、「空族」オールスターが名を連ねる。
ユーロスペースでは11月17日から、劇団「THE SHAMPOO HAT」の劇作家・演出家・俳優の赤堀雅秋さんの初監督作「その夜の侍」の公開がスタート。もともと劇団の舞台作だった同作。映画化を依頼されたのをきっかけに脚本化に着手し、「この作品と赤堀雅秋は一体化している」というプロデューサーの思いを受けて、初監督に挑戦した。キャスティングには堺雅人さん、山田孝之さん、新井浩文さん、田口トモロヲさんなど豪華な俳優陣がラインアップ。最愛の妻をひき逃げした犯人に復讐を果たすため、心に孤独や葛藤を抱えた男は、復讐の意味を問いながら犯人だけでなく自分自身も追い詰める。狂気と日常の狭間を生きながら、答えを見出していく姿を極限まで描き出す。