レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

2011年の年始は週末と重なり、慌ただしく冬休みが終わってしまう社会人も多いだろう。せっかくの長期休暇、有意義に過ごそうと計画を練りつつ、結局家でごろごろして終えてしまうという経験は誰にでもあるもの。もちろんそうやって体の疲れを癒すことも大切だが、自分の外側に広がる多様な世界観が味わえる「旅行」は、日常生活で閉塞してしまった頭の疲れを回復させてくれる栄養剤。
今回は「国」をテーマに3つの映画上映会をピックアップ。現代アメリカの矛盾を炙り出す上映会、イタリアの感性に魅了される上映会、そして日本という国の女性たちの生き様に迫る上映会が、クリスマスの12月25日から渋谷で一挙にスタートする。
明治神宮への参拝の帰りに足を伸ばし、味わえるささやかな渋谷での旅行体験、あなたはどの国に行ってみたい?

渋旅×現代アメリカ

タイトル
リアル!未公開映画祭
開催場所
UPLINK FACTORY
開催期間
2010年12月25日〜2011年1月10日
監  督
「ジーザス・キャンプ」
ハイディ・ユーイング、レイチェル・グラディ
「ビン・ラディンを探せ!」
モーガン・スパーロック
「ステロイド合衆国」
クリス・ベル ほか

リアル!未公開映画祭

「ビン・ラディンを探せ!」©2008 WHERE IN THE WORLD, LLC AND WILD BUNCH S.A., ALLRIGHTS RESERVED


アップリンク・ファクトリーでは、政治、宗教、人種、教育、ビジネスなどを題材にした日本未公開の海外ドキュメンタリー9作を一挙公開。
TOKYO MXの人気番組「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」のスピンオフ企画で、選者は米在住の映画評論家・町山智浩さん。上映するのは、ビッグマックを食べ続けて話題を呼んだ『スーパーサイズ・ミー』の監督モーガン・スパーロックが、「オサマ・ビン・ラディンはどこにいるんだろう?」と質問しながらイスラム諸国を駆け回る『ビン・ラディンを探せ!』、アメリカの病院や医療保険に見られる金儲けのための出産ビジネスに迫る『ビーイング・ボーン』、ステロイドを使った筋肉増強の光と闇を示した『ステロイド合衆国』など。 雑誌やラジオでアメリカ映画・テレビなどをいち早く日本に紹介してきた町山さんが選ぶ未公開作品群には、アメリカのどんな姿が映しだされているのだろうか?

渋旅×イタリア史

タイトル
映画の國シリーズ名作選1 イタリア編
開催場所
シアター・イメージフォーラム
開催期間
2010年12月25日〜2011年2月11日
監  督
「暗殺の森」
ベルナルド・ベルトルッチ
「フェリーニの道化師」
フェデリコ・フェリーニ
「ロベレ将軍」
ロベルト・ロッセリーニ

映画の國シリーズ名作選1 イタリア編

「ロベレ将軍」


シアター・イメージフォーラムでは12月25日より、イタリア映画史に残る3人の名監督の代表作を特集上映する。
企画は映画史上の名作500タイトル以上を擁する紀伊国屋レーベル。 上映されるのは、イタリア映画にリアリズムを持ち込んだ第一人者とも言われるロベルト・ロッセリーニ監督がベネチア映画祭でグランプリを受賞した『ロベレ将軍』(1959年)、巨大なセット撮影を駆使して人工美の世界を構築したフェデリコ・フェリー二監督の『フェリーニの道化師』(1970年)、坂本龍一が音楽を担当したことでも知られる『ラスト・エンペラー』のベルナルド・ベルトルッチ監督が、「道化師」と同年に撮り上げた出世作『暗殺の森』(1970年)の3本。 ともにイタリアを代表する3世代の監督の作風の違いから、イタリアが歩んだ時代の流れを感じ取りたい。

渋旅×日本人女性の美

タイトル
溝口健二傑作選
開催場所
シネマヴェーラ渋谷
開催期間
2010年12月25日〜2011年1月14日
監  督
溝口健二
上映作品
『虞美人草 (16mm上映)』『西鶴一代女』『瀧の白糸 (16mm上映)』『愛怨峡 (16mm上映)』『残菊物語』『元禄忠臣蔵 前篇』『元禄忠臣蔵 後篇』『夜の女たち』『雪夫人絵図』『お遊さま』『武蔵野夫人』『雨月物語』『祇園囃子』『山椒大夫』『噂の女』『近松物語』『楊貴妃』『赤線地帯』

溝口健二傑作選

©角川


シネマヴェーラ渋谷では12月25日より、黒澤明、小津安二郎と並ぶ3大日本映画監督溝口健二がメガホンを取った18作を一挙に公開する。溝口監督は1893年浅草生まれ。古典文学を映画化した『近松物語』(1954年)『雨月物語』(1953年)などで知られ、ワンシーン・ワンカットなど俳優や舞台へのリアリズムを追い求めた独自の演出は国内外の監督たちに多大な影響を残した。一方で、大阪新世界を舞台にした『夜の女たち』(1948年)、吉原を舞台にした『赤線地帯』など、日の当たらない世界で働く同時代の女たちの悲喜こもごもを、執拗なまなざしで捉えた作品も。幅広い作品群を一望しながら、さまざまな環境をたくましく生き抜いた日本人女性の美しい姿に酔いしれたい。



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