レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

9月末まで猛暑日を更新した今年の夏は、10月に入ってようやく「終わった」という雰囲気を見せている。30度を超える日数が70日以上も続いた長い夏、「涼」を求めて海水浴に繰り出した人もきっと多かったのでは?
ちなみに私は2度海に出かけたが、一度目は急に大雨が降り出し寒くなり、2度目は海中にいた小さな虫(ゾエア幼生)に大量に刺されて痛くて、楽しかったという記憶が無い。「猛暑」「ゲリラ豪雨」「動植物の大量発生」・・・、どうもここ最近の地球は何かがおかしい。自然の生態系が悲鳴を挙げている証拠なのだろうか? 今回は島国である日本に住む私たちにとって、もっとも身近な自然の一つである「海」を舞台にした作品を3本ピックアップ。一言で「海」と言っても、砂浜、沖合、海底と、海はさまざまな様相で私たちの住む島を取り囲む。美しく、かえがえのない自然でありながら、ときに私たち人間を弄ぶかのように態度を急変させ、容赦なく牙を剥き出し襲いかかる。その幅広い表情から、自然の見せる驚異・魅力を改めて考えてみたい。

自然の魅力と驚異「海岸編」

タイトル
TSUNAMI-ツナミ-
上映場所
渋谷TOEI2
上映期間
2010年9月25日〜
上映時間
11:40 14:00 16:20 18:40
監  督
ユン・ジェギュン
出  演
ソル・ギョング、ハ・ジウォン、パク・ジュンフン、オム・ジョンファ、イ・ミンギ、カン・イェウォン、キム・イングォン

TSUNAMI-ツナミ-

2009年/韓国/107分/配給:CJエンタテインメント、パラマウント/©2009 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved


 渋谷TOEI2では、韓国を代表するリゾート地・海雲台(ヘウンデ)を舞台に、大津波の恐怖を描いたパニック映画「TSUNAMI-ツナミ-」が公開中。同作は2004年のスマトラ沖地震による津波にショックを受けたというユン・ジェギュン監督が、シナリオ制作に2年、ハリウッドのスタッフと手を組んでのCG制作に5年を費やした意欲作。
 「ハリウッド式のヒーロー主義」ではなく「平凡な人間たちによる自分たちの新しい物語を」との思いで生まれた作中では、高さ100m、時速800kmという巨大津波の迫力のある映像と、家族、親子、恋人達によるそれぞれのドラマが折り重なって展開する。あらゆる人々のあらゆる瞬間に一気に押し寄せる自然災害の恐怖が、リアリティのある身近な現実として私たちに迫ってくる。

虚構/現実「実際の街の音」

タイトル
THE LAST MESSAGE 海猿
上映場所
渋東シネタワー
上映期間
2010年9月18日〜
上映時間
〜10/8(金)
9:30/12:20/15:20
/18:10/21:00
※10/9(土)以降の上映スケジュールは劇場まで
監  督
羽住英一郎
出  演
伊藤英明、加藤あい、佐藤隆太、加藤雅也、吹石一恵、三浦翔平、濱田岳、香里奈、勝村政信、鶴見辰吾、石黒賢、時任三郎

THE LAST MESSAGE 海猿

2010年/日本/129分/配給:東宝/©2010 フジテレビジョン ROBOT ポニーキャニオン 東宝 小学館


 渋東シネタワーでは現在、海上保安官を主人公に、海難事件での活躍を描いた物語「THE LAST MESSAGE 海猿」(羽住英一郎監督)が公開されている。漫画家の佐藤秀峰さんの同名漫画を原作とし、現在までに数多くのドラマや映画が制作されている同作。今回の作品は映画版「海猿」(2004年)、「LIMIT OF LOVE 海猿」(2006年)を引き継いだ最終章に位置づけられる。
 物語は、巨大天然ガスプラント「レガリア」で事故が発生するところからスタート。主人公の潜水士・仙崎大輔は、設計主任らと共に施設へ向かうが、救出作業の中突然爆発が起こり、大輔らは施設内に取り残されてしまう。大輔は第七管区の服部とバディを組み、要救助者と共に無事帰還する道を探るのだが…。救助の道を探ろうとする海上保安庁と、国益を優先させる内閣参事官らの対立を背景に、大規模なロケとセット撮影によって、海中を舞台にした臨場感あるドラマが展開。日本メジャー配給初となる3D公開にも注目が集まる。

自然の魅力と驚異「沖合編」

タイトル
老人と海 - ディレクターズ・カット版
上映場所
UPLINK X
上映期間
2010年9月25日〜
上映時間
14:30
監  督
ジャン・ユンカーマン
出  演
糸数繁ほか

老人と海 - ディレクターズ・カット版

2010年/98分/スタンダード/配給:シグロ、スターサンズ


 UPLINK Xでは、沖縄県与那国島を舞台に、ヘミングウェイの不朽の名作『老人と海』をモチーフにしたドキュメンタリー「老人と海」がリバイバル上映されている。小説「老人と海」の舞台であるキューバのハバナ港と、日本最西端に位置する与那国島とは、緯度がほぼ同じで似たような激しい海流が流れている。同作は20年前、この類似に着目したプロデューサー山上徹二郎さんが与那国島を訪れ、小舟に乗ってカジキ漁をする老漁師、糸数繁さんと出会ったことをきっかけに企画化。
1988年に撮影がスタートしたが、1年間糸数さんの針にカジキがかかることはなかったという。長い不漁に苦しみながらも、自然への敬意と漁師の誇りを忘れない糸数さん。そのまっすぐな生き方、自然と人間とが共存する姿に、人が生きる事の根源的な強さと豊かさを噛みしめたい。


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