レコメンド 今週、編集室が推薦するカルチャー

お笑い芸人は、コント・漫才・バラエティ企画などで笑いをとることを生業とする人々のことだ。もともと「面白い人」といえば、どの教室にも大概一人は いたもの。とはいえ、これを商売にするとなると話は全く違う。「あいつ、馬鹿だなぁ」と、おどけた行動や仕草に視聴者から笑われる存在の彼ら。でも、その一つの笑いの影にはネタ作りのセンスや話の構成力、お客さんの反応を観ながらの即興的なリアクション、さらには強いオリジナリティ(個性)など、「企画・脚本・演出・出演」といったマルチな才能が求められる。
そこで今回のリコメンドでは、厳しい世界で凌ぎを削った能力を生かし、「お笑い界」に留まらず映画の世界でも活躍する「お笑いタレントたち」をピックアップ。お笑いで開花した能力が映画のスクリーンでどのように輝くのか、笑い界でも、映画界でもトリックスターを演じる彼らの新たな魅力に期待したい。

芸人俳優×「期待の板尾創路監督作」

タイトル
板尾創路の脱獄王
上映場所
シアターN 渋谷
上映期間
2010年1月16日〜2010年3月5日
上映時間
11:15/13:15/15:15
/17:15/19:15
監  督
板尾創
出  演
板尾創路、國村準、ぼんちおさむ、オール巨人、木村祐一、宮迫博之

板尾創路の脱獄王

2009/日本/配給:角川映画/©2009「板尾創路の脱獄王」製作委員会


シアターN渋谷では現在、お笑い芸人板尾創路が初監督した「板尾創路の脱獄王」を上映している。「(吉本興業が主催する)沖縄映画祭で上映するために作った」という同作は、昭和初期を時代背景に、どんなに過酷な状況に追い込まれようとも、独創的なアイデアと高い身体能力でことごとく脱獄を成功させる男の姿を描いたもの。テーマについては、「0から構想を始め、刑事もの、カンフーアクションなどのアイデアはあったが、行き着いたのは脱獄だった。スティーブ・マックィーン主演の『大脱走』や『パピヨン』など、脱獄映画がきっかけで映画が好きになったので、脱獄ものにはエンターテインメントが詰まっていると考えた」と板尾監督。
俳優としても高い評価を受けてきた板尾監督が、主演・脚本までを手がけた意欲作として期待が集まる。

芸人俳優×「『さまぁ〜ず』がコンビ出演」

タイトル
かずら
上映場所
渋谷シネクイント
上映期間
2010年1月30日〜2010年2月19日
上映時間
21:20
監  督
塚本連平
出  演
三村マサカズ、大竹一樹、芦名星、ベンガル、井森美幸、田中要次、正名僕蔵、酒井敏也、麿赤児

かずら

2009年/日本/94分/配給:クロックワークス/©2010「かずら」製作委員会FILMS-TELECINCO CINEMA-WILD BUNCH-FIDELITE FILMS.


渋谷シネクイントでは、お笑いコンビ「さまぁ〜ず」の共演映画が公開中。同作は小林信也の実体験に基づいたベストセラーエッセイを原案に、「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」や「時効警察」などで知られる塚本連平が監督・脚本を手がけたコメディ。カズラとは能や狂言で役者が被る装具のことで、平たく言えば「カツラ」の意だという。若ハゲに悩むサラリーマンを三村マサカズが、なぞのカツラ店・店主を大竹一樹が演じる劇中では、「生まれ変わった」三村と、いつもどこからともなく現れて三村をサポートする大竹との掛け合いが笑いを誘う。映画初主演となった三村さんは、「(コントと比べて)『全責任を背負わなくていいんだ!』っていう事で、イイ意味で割切って演じられた」と話す。 実際には「ハゲていない」という三村さんが、どのようにサラリーマンを演じきるのかに注目したい。

芸人俳優×「役者鶴瓶さん、減量で役作り」

タイトル
おとうと
上映場所
渋谷シネパレス1・2
上映期間
2010年1月30日〜
上映時間
〜2/18(木)
9:55/12:30/15:05 /17:40/20:15 2/19(金)〜
10:00/12:40/15:20 /18:00
監  督
山田洋次
出  演
吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮

おとうと

2010/日本/配給:松竹/©2010「おとうと」製作委員会


渋谷シネパレスで公開中の「おとうと」は、「男はつらいよ」シリーズで知られる巨匠・山田洋次監督の最新作。2008年に亡くなった市川崑監督の同名作品へのオマージュとなる同作は、京で堅実に暮らす姉・吟子と、大阪で芸人に憧れ、いつしか年齢を重ねてしまった弟・鉄郎との再会と別れを綴った現代劇だ。愚かな弟役を演じるのは、『私は貝になりたい』『ディア・ドクター』などの好演が印象深いお笑いタレントの笑福亭鶴瓶。劇中ではまるで『男はつらいよ』の“寅さん”のように、軽妙洒脱なしゃべりと、無邪気な笑顔、時折見せる傷ついた男の険しい表 情を表現し、問題ばかり起こしてはいるけれど、愛すべき存在である男の姿を熱演する。
終盤のシーンに向けては、「バラエティ番組に出る時はマイナス」とされるほどの減量にも取り組んだという役者・鶴瓶さん。その強い役者魂に魅了されたい。


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