1945年8月15日、昭和天皇が戦争の終結を国民に告げた。当時戦争を20歳で体験していた人は、現在84歳。戦時中に生まれた子どもたちも60歳をとうに超えた。年月が過ぎるのと共に、当事者たちの生の証言が徐々に失われていくことは仕方がないこと。戦争を体験しなかった私たちは、彼らから戦争の悲惨さと平和の尊さを学び、次の世代へと受け継ぐ架け橋にならなければならない。
64回目の終戦記念日を迎えて、戦争をテーマに作られた映画3作品を探し出した。日本未帰還兵の映画、原爆症を患う妻の映画、ヒトラー製作のプロパガンダ映画。それぞれバラバラの3作から見えてくる「戦争」とは、一体どんなものだったのか。
戦争を知らない私たちだからこそ、機会あるごとに思い返してみてはどうだろうか。
- 花と兵隊
- 花と兵隊
- 施 設 名
- シアターイメージフォーラム
- 開催期間
- 2009年8月8日〜
- 上映時間
- 10:15/12:30/14:45
17:00/19:15 - 監 督
- 松林要樹
- 出 演
-
坂井 勇、中野弥一郎、
藤田松吉、伊波廣泰、
花岡 稔、古山十郎
イメージフォーラムでは、タイ・ビルマ国境付近で敗戦を迎えた後、日本に還らなかった未帰還兵6人に迫ったドキュメンタリー「花と兵隊」を上映している。監督は、1979年福岡県生まれの若手監督松林要樹さん。1999年からバックパッカーとしてアジアを回り、自分が日本人だというだけで敵意をもたれたり尊敬されたりしたという経験から、「かつての日本人がそこで何をしてきたのか」に興味を持った。
作中では、戦争を知らない若い監督が、90歳前後の高齢未帰還兵を、彼らの隣に座る「家族」の存在と共に見つめ直す。
ユーロスペースでは、広島で被爆し、現在まで原爆症を患う妻の姿を、50年に渡って撮影し続けてきたアマチュア映像作家川本昭人さんの初の長編ドキュメンタリー「妻の貌(かお)」が公開中。川本さんは広島在住の82歳で、長男の誕生をきっかけに8ミリカメラを手にし、これまで50年間家族をテーマに撮影を続けてきた。
作中では川本さんの母親を10年以上介護した妻、原爆症から時折虚脱感に襲われる妻、夫である自分を責める妻、孫の成長を喜ぶ妻などを捉えながら、広島で過ごした50年の日常生活を通して、原爆が影を落とす広島の歴史を伝える。
シアターN渋谷では、ヒトラーが製作したプロパガンダ映画「意志の勝利」を上映中。監督は、女性監督レニ・リーフェンシュタールで、彼女が主演・監督を務めた映画『青の光』にヒトラーが感動し、撮影を依頼。古都ニュルンベルクで1934年9月4日から6日間行われたナチ党の全国党大会を記録したもので、完成後にはドイツ各地で好評を博し、ナチ党の党勢を拡大する一助となった。海外でも映像美は高く評価され、ヴェネツィア・ビエンナーレでは金メダル、パリ万博でグランプリを獲得。しかし戦後その評価は一転し、リーフェンシュタール監督はプロパガンダによるナチズムへの協力者として訴追される。現在ドイツでは法律で『意志の勝利』の一般上映は禁じられている。
同作を配給する「是空」は公開にあたり「本作を『反面教師』に、二度とあのような歴史を繰り返してはならないという現代社会への警鐘のきっかけにしたい」とコメントしている。