
プロレスラーの三沢光晴さんが、6月、試合中の事故で亡くなった。享年46歳。日本のプロレス界を代表するレスラーの一人として知られ、どんな攻撃を受けても立ち上がることから「ゾンビ三沢」の愛称で親しまれた三沢さん。1984年に2代目タイガー・マスクとしてデビューし、1990年にはマスクを捨て3冠の王座を奪取した。2000年プロレスリング・ノアの創設後はレスラーと社長業の二足のわらじで活躍。今回は、三沢さんへの想いを寄せて、渋谷で上映中の映画の中から「男」を感じさせる作品をピックアップ。義理や人情を重んじる反面、リングの上ではプライドを掛けて闘う「男のドラマ」を全うした三沢さんの姿を振り返りたい。
●男のドラマ1「信念を貫く」

© Niko Tavernise for all Wrestler Photos
本編は、かつて全米No.1の人気を誇ったプロレスラーが、全盛期を過ぎてもなお試合出場にこだわり続ける姿を描く。妻とは離婚し娘とも疎遠で、リングの外には親しい友人もいない男は、医者には「命が惜しければリングには立つな」と告げられている。それでもスーパーでアルバイトをしながら生計を立て、老いをさらし、尚もリングに向かう…。
自分が輝ける場所はどこか?人生の意味とは?自問自答を繰り返しながらもレスラー人生を貫く男の、有無をいわさぬ存在感に胸が熱くなる。

2008年/アメリカ・フランス/R-15/配給:日活/© Niko Tavernise for all Wrestler Photos
●男のドラマ2「ライバルとの絆」

©2009『劔岳 点の記』製作委員会
舞台は標高3千メートル以上、体感温度氷点下40度の劔岳・立山連峰。前人未到といわれる劔岳に挑戦する「陸軍陸地測量部」と「日本山岳会」は、同じ山の登頂を目指すライバルのような存在だ。しかし、ガレキだらけの尾根や雪崩や暴風雨などの困難を乗り越えるにつれ、勝利のために躍起になっていた測量部は、いつしかライバルと苦しみや喜びを分かち合うように。
のべ200日以上を費やして記録されたという圧倒的な自然を、体あたりで進みながら築き上げた男たちの「絆」。
この不思議な結びつきに、三沢さんとともににプロレス界を牽引した全日本プロレスの武藤敬司さん、新日本プロレスの蝶野正洋さんなどの存在を思い出す人も多いのではないだろうか。

2009年/日本/配給:東映/©2009『劔岳 点の記』製作委員会

©2009『劔岳 点の記』製作委員会

©2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved
本編では、人生の最終章にさしかかった孤独な男が隣人の移民「モン族」のもてなし、孫のような年齢のモン族の少年との交流を通じて、屈強な偏見や先入観から解き放たれていく様子を描く。男は「少年を一人前にすること」を最終目標にすえ、少年も男を通して人生の手本を見出す。そして、希望を見出し始めた少年に、男が最後に伝えるのは「人生の締めくくりかた」。
生きる事の意味は、ただ闇雲に生き続けることではない。年老いて自らの「尊厳」を再び取り戻した男の表情は、最後の時を迎えてひたすら穏やかだった。
三沢さんは、試合中のリングで倒れて命を失った。今も私たちの脳裏に焼き付いているのは、倒れても倒れても相手に立ち向かう三沢さんの勇姿だ。

2008年/アメリカ/116分/配給:ワーナー・ブラザース映画/©2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved