渋谷文化 PROJECT

ペットと暮らすというライフスタイルがますます広がる近年、動物の存在は、わたしたちにとってグッと身近なものになっている。たしかに、玄関口まで帰りを迎えにきてくれる犬や、布団に潜り込んでくるネコなど、彼らの「かわいい」行動は人間そのもの。まるで家族や恋人のように、ついつい彼らを擬人化してしまいがちだ。今回は、そんな私たちに、「動物」が本来持っている特性や機能を伝える映画や展覧会をピックアップ。「かわいい」姿にハマりきらない動物たちの存在感は、ペットと暮らす私たちに何を教えてくれるのだろうか？

2005年、５億ドル突破のヒットを記録したドリーム・ワークスの動物アニメ『マダガスカル』。その続編『マダガスカル２』が、3月14日からシネセゾン渋谷にて公開される。ＮＹの動物園から逃げ出したライオンのアレックス、シマウマのマーティ、キリンのメルマン、カバのグロリアの仲良し４頭組と、４匹のペンギンズたちが登場する本作。前作ではこの大都会の人気者たちが、思いもよらずマダガスカル島にたどり着いてしまった様子が描かれたが、本作の舞台となるのは、大自然が広がるアフリカ大陸である。故郷であるはずのその場所で、かつての仲間であった野生動物たちに戸惑う彼ら。ライオンのボス争いから知る競争社会の厳しさや、群れで行動するシマウマの特性を巡ってのアイデンティティの喪失など、彼らが直面する問題の多くは、人間社会に生きる私たち自身の問題と重なる。困難を乗り越え成長していくまるで人間のような彼らの姿が、野生動物たちの迫力ある映像とともに展開するのは、本作ならではの魅力と言えるだろう。 3月6日から、ロゴスギャラリーでは、写真展『湯沢英治　写真展　BONES 動物の骨格と機能美』が開催されている。本展は、2008年刊行の骨格標本の写真と解説文からなる写真集『BONES　動物の骨格と機能美』からの作品展。同書は、動物形態学とアートの融合が実現したものとして高く評価されている。これらの写真を撮影したのは、広告、雑誌の分野でカメラマンとして実績をつむかたわら、シュールレアリスムをテーマとした作品の個展も多数開催している写真家、湯沢英治。今回の撮影にあたって、湯沢氏は自然光にこだわり「果てしなく深い闇の黒、強い光の白、そして背景に写り込む軟らかい光を表現すること」をコンセプトに撮影した、という。暗闇に刺す強い自然光から浮かび上がるのは、まるで生きているようなたくましさをたたえる、様々な動物の頭蓋骨、背骨、足骨など。文字通り贅肉のそぎ落とされたフォルムに宿る、動物たちの隠された機能美に、思わず息を飲む。
ヒューマントラストシネマ渋谷では、3月19日まで、『旭山動物園物語〜ペンギンが空をとぶ〜』が公開中だ。本作の舞台は、北海道旭川市の旭山動物園。何度も閉園の危機に追い込まれたという本園は、1997年から、「動物たちが野生で暮らす現場を再現し、そこでの生活スタイルを観客に見せる」という「行動展示」を始めたこときっかけに徐々に人気を獲得し、現在では年間入場者数300万人を記録している。映画の中でも、旭山動物園の大きな魅力である、空を飛ぶように泳ぐペンギン、地上17メートルに張ったロープを悠々と伝うオランウータンなど、動物たちが本来の特性を生かして動き回る姿が、ふんだんに映し出される。また、実際の園長らの話を参考に現在までの旭山動物園の道のりを映画化した本作のテーマは、弱肉強食の世界に生きる動物たちの姿と並んで浮かび上がる、強い者が弱い者を生かす人間ならではの「英知」。動物と人間がいかに共存していくか…本作は、現代社会に横たわる難しいテーマに、１つの答えを教えてくれる。

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