今回紹介する3人の監督たちは、皆、映画界の先頭で先鋭的な世界観を生み出してきた巨匠監督たちだ。その監督たちが、今、子どもたちに向かって、それぞれの視点で問いかけを投げかけている。阪本監督からは、「大人社会のエゴ」を、押井監督からは「死ぬこと=生きていることの意味」を、宮崎監督からは「触れ合いの喜び」を。イジメや自殺、無差別殺人が社会問題化されている現代の日本に、彼らが、それぞれのやり方で、大きな一歩を踏み出している。
7月19日からは渋東シネタワーで『崖の上のポニョ』が公開中だ。こちらの作品は、2004年『ハウルの動く城』から4年ぶりの宮崎駿監督の新作である。今回は、「紙に描いて動かす」という作画の原点に返り、作画は全て手書きで仕上げられたという。また、これまで「自然」と「科学」の共存など、矛盾をはらんだ壮大な世界観を提示してきた宮崎監督だったが、子どもに向けて「希望」を伝えたいと、人と魚との心のやり取りを通して、生きることのシンプルな喜びが表現されている。
他にもシネ・アミューズ・イースト&ウエストで8月9日から公開される『シティ・オブ・メン』では、『シティ・オブ・ゴッド』のパウロ・モレーリ監督が、同じリオデジャネイロの貧民街「ファヴェーラ」を舞台に、子供たちがギャングの世界に足を踏み入れていく様子を描く。
それぞれの環境で、それぞれの困難を抱える、日本の子ども、世界の子ども。不安な社会情勢に、重たい映画が並ぶが、まず彼らの存在を「見る=知る」ことから、全ての変化が始まることを忘れてはいけない。
- タイトル:
- 闇の子供たち
- 上映場所:
- シネマライズ
- 上映期間:
-
2008年8月2日〜
10:00/12:55/15:50/18:45 - 監 督:
- 阪本順治
- 出 演:
- 江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市、鈴木砂羽、豊原功補、プラパドン・スワンバーン、プライマー・ラッチャタ
「闇の子供たち」は誰もが「目を背けたくなる現実」を、ひるむことなく真正面から凝視した社会的なドラマである。何の罪もない無垢な子供たちが、欲望まみれの大人たちのエゴに蹂躙され、虫けらのように扱われる。売春宿に監禁された彼らは、ペドファイル(幼児性愛者)と呼ばれる先進国の外国人客のセックスの玩具にされて心身共に耐えがたい傷を負い、病気にかかればゴミ同然に捨てられてしまう。「人の命は金では買えない」などという言葉は、この闇の世界においてはまったく説得力を持たないのだ。
- タイトル:
- スカイ・クロラ The Sky Crawlers
- 上映場所:
- 渋谷東急
- 上映期間:
-
2008年8月2日〜
11:30/14:00/16:30/19:00 - 監 督:
- 押井 守
- 脚 本:
- 伊藤ちひろ
- 音 楽:
- 川井憲次
- 制 作:
- プロダクション I.G
- 声の出演:
- 菊地凛子、加瀬亮、栗山千明、谷原章介
何度、君と出会い、
何度、空で戦い、
何度、君と愛し合ったんだろう──。
「最初は誰も知らなかった。
知っていても、信じなかった。
でも、だんだん噂が広がっていく。
戦死しないかぎり死なない人間がいるって」
- タイトル:
- 崖の上のポニョ
- 上映場所:
- 渋東シネタワー
- 上映期間:
-
2008年7月19日〜
(9:00)/11:25/13:50
/16:15/18:40/21:00
※9:00の回は土日のみ上映 - 監 督:
- 宮崎 駿
- 声の出演:
- 山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、奈良柚莉愛、土井洋輝、柊瑠美、矢野顕子、吉行和子、奈良岡朋子
海に棲むさかなの子ポニョが、人間の宗介と一緒に生きたいとわがままをつらぬき通し、5歳の宗介が約束を守り抜く物語。
少年と少女、愛と責任、海と生命、神経症と不安の時代に、宮崎駿がためらわずに描く、母と子の物語です。
- タイトル:
- シティ・オブ・メン
- 上映場所:
- シネ・アミューズ・イースト&ウエスト
- 上映期間:
-
2008年8月9日〜
11:45/14:10/16:35/19:00 - 監 督:
- パウロ・モレーリ
- 出 演:
- ドグラス・シルヴァ、ダルラン・キュンハ
ブラジル、リオデジャネイロ。貧民街区ファヴェーラで生まれ育った二人の少年、アセロラとラランジーニャは、幼い時から一緒に育った親友同士。アセロラは2歳の子供を持つ父親だ。
ある日、ラランジーニャの行方不明だった父親がファヴェーラに戻ってきた時から、二人の友情のバランスが崩れ始める。
父との生活を優先したラランジーニャはアセロラと距離を置くようになる。
アセロラに残された道は地元のギャング・グループに入ること。