東京都写真美術館では2月21日より、「映像」をテーマにした7回にわたるイベント『映像をめぐる7夜』を開催する。映像作品の上映だけでなく、トークやレクチャー、ライブパフォーマンスなどにより、映像表現の可能性や知覚の構造を追求し、新しい視聴覚体験を味わうことができる。参加しているのは映像作家のほか、現代美術や音響など様々なジャンルで実験的な活動をしているアーティストばかり。写真展示だけでなく、アニメやミュージックビデオなど、枠にとらわれずに同時代の映像表現を積極的にサポートしてきた東京都写真美術館だからこそできるイベントだ。
Q-AXシネマで上映中の映画『フローズン・タイム』は、気鋭のイギリス人写真家による長編作品。ファンタジックで優美な映像表現の中に、一瞬を切り取る写真家ならではの感性や視点が十分に表れた意欲的な作品だ。Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ルノワール+ルノワール展』は、画家の父による絵画と、映画監督である息子の作品のワンシーンを並べて展示することで、両者の作品制作の根底にある原風景や憧憬をビジュアルで比較するといった好企画。視覚表現の先にあるものを探す実験的な試みも、既存の表現に新しい視線を加えることで浮き上がる光景を鑑賞することも、どちらも刺激的な視聴覚体験になることだろう。
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さまざまな角度から「映像」を考え、実験を楽しむための新企画。東京都写真美術館地下1階展示室を会場に、7夜にわたり多彩なゲストを迎え、上映、展示、ライヴ・パフォーマンス、レクチャーを日替わりで行う。 |

「映像をめぐる7夜」より第1夜『反復する壁』
写真左:足立智美 パフォーマンス風景、写真右:石田尚志 パフォーマンス風景

「映像をめぐる7夜」より第5夜『the Voice-over 〜 内なる映像』
写真:山川冬樹 パフォーマンス風景(撮影:小原大貴)
![]() ©2005 LEFT TURN FILMS/ CASHBACK FILMS ALL RIGHTS RESERVED. |
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数々の一流ファッション誌のフォトグラファーとして活躍し、ファッション・フォトに映画的エモーションを取り入れたことで世界的に注目された俊英ショーン・エリス。シャッターの“一瞬”を切り取ることが仕事だったエリスは、その時間に対する独特な感性を一本の映画として表現してみせた。映画監督として長編処女作となる本作は「もし、映画のなかで時間を“フリーズ”させたら、どんな物語と映像が生まれるだろう」という単純にして痛快な発想から生まれた、とびっきりロマンティックなラブストーリー。 |


二点とも「フローズン・タイム」より
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![]() 写真:ピエール=オーギュスト・ルノワール 《田舎のダンス》(部分) 1883年 ©輟hoto RMN/H. Lewandowski/digital file by DNPAC |
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偉大な画家ルノワールと偉大な映画監督ルノワールの二人展。ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841‐1919)は印象派の巨匠として、美術界に絶大な影響を与え、その次男にあたるジャン・ルノワール(1894‐1979)は、フランス映画界を代表する巨匠に成長した。この展覧会では、家族、父と子、共通の知人や場所といった視点を軸に、ときには会場で油彩画と映像の抜粋を直接対比させながら、二人の作品の共通項を探っていく。 |