現在、シネマ・アンジェリカでは『ブラックシアター』と題し、作品名を伏せたまま映画を上映する特集を行っている。国内初の試みとなる本特集では、座席に着くまで何の作品だか分からず、未知の映画との出会いを楽しむユニークな企画だ。見ず知らずの作品に心を動かされることもあれば、全く趣味に合わないものもあるかもしれない。鑑賞後の評価は分かれるだろうが、非常に斬新な特集上映だと言える。
一方、個性的な切り口のプログラムで名画の普及に努めているシネマヴェーラ渋谷では、現在、『グラインドハウス A GO GO!タラちゃんとゆかいな仲間たち』と題する特集を上映している。クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲスらが愛したB級映画の専門館(総称=グラインドハウス)に敬意を表し、ポルノ・アクション・ホラーといった特色あるジャンルの作品を集めた。同館で次に控えているミュージカルの特集上映『「踊る人」の系譜』では、和洋問わず「踊る」シーンが印象的な作品をまとめて上映する。また、ユーロスペースでは『ファンタスティック!チェコアニメ映画祭』、『ハンガリアン・フォークテイルズ』と、鑑賞機会の少ない東欧のアニメーションを集中的に上映している。他にもシアター・イメージフォーラム、シネセゾン渋谷、シアターN渋谷など、不定期ではあるものの、気の利いた特集上映を得意とする劇場も少なくない。個性の強い渋谷の映画館が提供する特集上映は、映画の持つ魅力を改めて体感させる、そんな”出会い”の空気に満ちている。
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ブラックシアターとは、様々な作品を「タイトルを非公開のまま上映」するという日本初の試み。上映作品は配給会社DEPが配給する作品の中からアメリカ映画を中心に3本立てで上映される。内容はドラマ・SF・ホラー・アニメ・サスペンス・コメディなどオールジャンルにわたって厳選されている。 「『プログラムは、秘密です』。このコピーがブラックシアターの全てです。上映作品は座席につくまでわかりません。幻の名作、日本未発表の作品も含む厳選された21タイトルのアメリカ映画を3本立てで上映します。上映作品はどれも希少なライブラリの中から厳選されています。各回・各日プログラムが異なるため何度でもお楽しみいただけます。新しい感覚を存分に楽しんで下さい!」(シネマ・アンジェリカ/中尾さん) |
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「グラインドハウスとは、主に60・70年代にアメリカ各地に存在していた、ポルノ/アクション/ホラー系のB級映画を2、3本立てで公開していた映画館のこと。平気で途中のリールが欠けている映画を上映したりなど(ロドリゲスの『プラネット・テラー in グラインドハウス』では、そのことがギャグとして使われている)、劇場も「やる気がない」が、観客の側ももっぱらハッテン場として使用していたりで、似たようなありさま。けれども、若きタランティーノやロドリゲスたちは、こうした映画館で、ブレイク直前の香港映画や今日再評価著しい日本のアクション映画などに目覚めていったのだ。今特集ではタランティーノ=ロドリゲス軍団が、コフィー、ヴィクセン、片腕カンフーをひきつれて、グラインドハウスムービーが狂い咲きます!」(シネマヴェーラ渋谷) |
「ミュージカルなくして何の人生!アステア以外に神はなし! 極上のミュージカルとダンス映画の数々で年末年始をお過ごしください。」(シネマヴェーラ渋谷) 【上映作品】 『オール・ザット・ジャズ』 監督:ボブ・フォッシー 『君も出世ができる』 監督:須川栄三 『踊る大紐育』 監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン 『舞姫 16mm』 監督:成瀬巳喜男 『雨に唄えば』 監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン 『踊りたい夜』 監督:井上梅次 『プロデューサーズ』 監督:メル・ブルックス 『ニューヨーク・ニューヨーク』 監督:マーティン・スコセッシ 『ステッピング・アウト』 監督:ルイス・ギルバート 『ザッツ・エンタテインメントPART3』 監督:バド・フリージェン、マイケル・J・シェリダン 『書かれた顔』 監督:ダニエル・シュミット 『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』 監督:フレデリック・ワイズマン 『魅せられて』 監督:ベルナルド・ベルトルッチ 『Shall weダンス?』 監督:周防正行 『ロミオ+ジュリエット』 監督:バズ・ラーマン 『Hole』 監督:ツァイ・ミンリャン 『タップ・ドッグス』 監督:デイン・ペリー 『ウォーターボーイズ』 監督:矢口史靖 『ムーランルージュ』 監督:バズ・ラーマン 『トーク・トゥ・ハー』 監督:ペドロ・アルモドヴァル 『バレエ・カンパニー』 監督:ロバート・アルトマン 『花とアリス』 監督:岩井俊二 『ライズ』 監督:デヴィッド・ラシャペル 『フラガール』 監督:李相日 |
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1989 年以前の国営時代に作られたアニメーションにスポットを当てて上映する「ファンタスティック!チェコアニメ映画祭」。この時代は、共産時代の社会統制下でありながらも、国営アニメスタジオ(現クラートキー・フィルム・プラハ)は、市民、特に子どもたちに夢を与える作品を豊富に制作していたいわばチェコアニメの黄金期。アニメという限られた表現の中、アイロニーや風刺、ユーモアと普遍的なヒューマニズムを、あふれんばかりのアイデアとテクニックで謳い上げ、そのファンタジックな世界は見るものを魔法仕掛けの世界へトリップさせてくれる。 |
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ハンガリーの昔話を13編のアニメーションにした「ハンガリアン・フォークテイルズ」。マリア・ホルヴァット、イシュトヴァーン・オロス、ケレシュ・ドーラ等々多彩な作家によるリリカルな民話となっている。さらにハンガリーの知られざるショートフィルムの傑作も併映する。 【上映作品】 12月1日(土)〜7日(金)Aプログラム(合計92分) ■ケレシュテス・ドーラ作品 『ムーン・フィルム』、『マジック』、『イチ、ニ、サン』 ■マリア・ホルヴァット作品 『夜の奇跡』、『ドアNo.8』、『ドアNo.9』、『KAFF オープニングフィルム』、『静寂』 ■イシュトヴァーン・オロス作品 『マインド・ザ・ステップ!』、『ザ・ガーデン』、『叫び』 ■『ハンガリアン・フォークテイルズ』A 「フィドルになったお姫さま」、「少年の見た夢」、「貧乏な男と悪魔たち」、「妬みの報い」、「双子の王子の冒険」、「貧者と利口な馬」 12月8日(土)〜14日(金)Bプログラム(合計94分) ■ケレシュテス・ドーラ作品 『顔』、『ゴールデン・バード』、『柳の微笑み』、『ナンダ、ナンダ?』 ■マリア・ホルヴァット作品 『グリーンツリー・ストリート66番地』 ■イシュトヴァーン・オロス作品 『ブラックホール--ホワイトホール』、『タイム・サイト』 ■『ハンガリアン・フォークテイルズ』B 「かくかくしかじか」、「靴をはきつぶす王女たち」、「天使の羊」、「とんまな妻」、「金の毛の小羊」、「魔法の南京錠」、「ツェルセルーシュカ」 |