■インタビュー・渋谷は世界的にも類をみない音楽先進エリアなんです
・小学生の頃、友達とも遊ばず、ひたすらラジオのヒットチャートを記録していました(笑)
・HTEを続けながら、小林克也さんになるのが目標
■プロフィールさわだ・たいようさん 1970年生まれ。音楽ジャーナリスト。NHKにて音楽番組の制作に携わった後、1999年からフリーの音楽ジャーナリストとなり「クロスビート」「Yahoo! Music」「BARKS」などの音楽メディアへの寄稿やCDの解説執筆、ラジオ番組の出演・構成などを手掛ける。2004年からは海外インディロック系のフリーペーパー&クラブ・イベント「Hard To Explain」を主宰。世界音楽知識クイズ(RMAT)2000、2001年の日本人チャンピオンでもある。
“渋谷系”という言葉もかつて存在したように、渋谷と音楽の関係は非常に密接なもの。数々のレコードショップが立ち並び、イベントスペースやライブハウスなどが多数あるこのエリアからは、日々新しい音楽シーンが生まれていきます。中でも、「タワーレコード渋谷店」は、渋谷を代表する音楽発信基地として多くの音楽ファンが集まる場所。音楽ジャーナリストで、海外インディロック系のフリーペーパー&クラブ・イベント「Hard To Explain」を主宰する沢田太陽さんが、タワーレコード渋谷店を訪れ、自らの音楽情報収集法や、今後の音楽シーンについて思うところを、熱く語ってくれました。
--タワーレコード渋谷店はよく利用されるそうですね?
タワーレコード渋谷店は音楽情報収集に欠かせない場所で、それは、昔から変わりません。最近、事務所兼自宅が横浜に引っ越したのですが、それでも最低でも週に1度は通っていますよ。特に7階の書籍フロアは僕にとって非常に重要な空間。基本的には洋楽雑誌にしか目を通さないのですが、ここは、洋楽の音楽情報誌の充実度が、他と比べても類を見ないんです。NME、Q、UNCUT、ROLLING STONE、BLENDER…など、少なくとも10誌くらいはチェックします。入荷スピードも速くて、いつも海外の最新情報にふれることができるのが魅力ですよね。僕は音楽ジャーナリストの名に懸けて、どの年代にどのようなアーティストや曲が支持されていたのかをきちんと知っておきたいのですが、年代別のヒットチャートをまとめたものも多数置かれているのでとても重宝しています。それから、社会的背景も合わせて流行の音楽を理解しておきたいというポリシーがあるのですが、その点でも、ここには音楽以外の資料本なんかも揃っているのでうれしいですね。また、本当にいい音楽に出会うためには、とにかくたくさんの曲を試聴して、それで本当にいいものを取捨選択していくことが大切だと考えているのですが、タワーレコード渋谷店は試聴コーナーが充実しているのも良いですよね。
--渋谷と音楽は相性がいいのでしょうか?
好むと好まざるとは別にして、渋谷と音楽の関わりは非常に深いものがあると確信しています。CDショップも充実していて、タワーレコード渋谷店もそのひとつですが、世界的にも類を見ない大型ショップがある。そうした意味でも、渋谷は音楽先進エリアなんですよ。僕が編集長をやっている雑誌「HARD TO EXPLAIN(以下、HTE)」でも、音楽イベントを開催しているのですが、場所は、必ずといっていいほど渋谷界隈にこだわっています。それというのも、外国人が集まりやすいというのが理由のひとつ。実際に、イベント参加者の2〜3割は外国人で、それも音楽感度の高い人がほとんど。六本木なんかにも外国人はたくさん集まっているけど、経験上、国境を越えたハイレベルな音楽情報交換は、やっぱり渋谷でないと難しいんです。
--沢田さんと音楽との出合いは?
母親が自宅でピアノの先生をやっていたこともあり、幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ちました。音楽そのものに興味を持ち始めたのは小学校2年生のとき。TVで見た沢田研二の「勝手にしやがれ」にロックの衝撃を受けました。ちょうどその頃、7歳年上のお姉ちゃんがビートルズに興味を持ちはじめ、僕自身も洋楽にも触れるように。そして、小学校5年生になって、九州朝日放送(KBC)の「今週のポピュラー・ベストテン」という洋楽カウント・ダウン系の番組にはまって、友達と遊ぶのも忘れて、ひたすらヒットチャートを記録していました(笑)。小学校6年生になると、「ミュージックライフ」といった音楽雑誌を読みふけるようになって、そこで始めてレビューを書いたり、インタビューをする仕事があるんだということを知り、将来こういうことをしたい、いや、絶対するんだと、強く心に決めました。まだ職業名もわかりませんでしたが(笑)。中学生になると、「ベストヒットUSA」に出合い、ここでさらなる衝撃を受けました。アメリカのヒットチャートが時差を置かずそのまま入ってくることにとにかく感激したんです。本当に良い音楽は、世界規模で同タイミングで聴けるのだということを理解した気がします。そして、この番組でVJをやっていた小林克也さんは、僕にとってとてつもなく大きな存在で、今でも強い憧れを抱いています。カメラ割りや番組構成、台詞なんかもすべて覚えて、ひとりで克也さんのマネをしていました(笑)。