■インタビュー・他人の日常を小さな穴から覗いた気分
・私って渋谷から出られない女なんです(笑)
・思い立って3日後には「チェルシー」を設立
・ブログの可能性を追求するのが今の楽しみ
■プロフィールまつゆうさん 渋谷育ちの渋谷大好きっ子。15歳の時に小学館『プチセブン』のモデルコンテストで約4000人の中から選ばれてモデル活動を開始。その後、企業スチール・CF系モデルとして活動し、50本以上のCFに出演。1998年からは、ジャンルに関わらず「かわいいもの」を紹介するアートユニット「chelucy(チェルシー)」のリーダーとしての活動も続ける。さらに、映画『リング』、NHK-BS1『デジタル・スタジアム』をはじめとした映画やテレビへの出演、「ヤプース! メールでフォト日記!」の立ち上げ、コスメプロダクトのデザイン、書籍『おしゃれ入門』の出版などマルチな才能をいかんなく発揮して活躍の幅を広げている。
トーキョーワンダーサイトに参加する気鋭の若手作家の絵画や写真から、現代の東京の心象風景を探る「東京画─ささやかなワタシのニチジョウのフーケイ」。7名の作家が、ときに奇抜に、ときに優しい視点から、見慣れたはずの東京の日常を照らし出す作品群は、観る者に新鮮なインスピレーションをもたらします。この展示会を訪れたのは、アートユニット「チェルシー」のリーダーやモデル、デザイナーなど多彩な顔を持つまつゆうさん。同世代の作家たちの作品から、彼女が受け取ったメッセージとは。
--展示をご覧になった感想は?
展示会のタイトルから東京のナチュラルな日常を描いた作品を集めているのかと思っていたら、私にとってはかなり非日常的な世界でした(笑)。作家のみなさんにとっては、これが日常の心象風景なのかと思うと、なんだか、小さな穴から、こっそりと他人の生活を覗いているみたいな楽しい気分になりましたね。そう、作品を見ているうちに、大好きな映画の『ワンダーウォール』を思い出しました。この映画では、地道にミトコンドリアの実験をする教授が、ある日、自宅の壁に開いた小さな穴から光が差し込んでいるのに気付くんですね。なんだろうと思って覗いてみると、穴の向こう側では、ヒッピーの人たちが色んな民族衣装を着て踊ったり、麻薬を吸ったり、寝ていたり、ご飯を食べていたりしているの。教授からすれば絶対にあり得ない非日常なんだけど、向こう側の人たちにとっては、それが普通の日常なんですね。私が展示会を見た感想も、ちょうど、そんな感じでしょうか。
--とくに気に入った作品は?
近藤恵介さんという方の絵がとにかく面白かった。キャンバスの一部を使い、うがい薬の瓶とか、カセットテープとか、「なぜそれがここに?」というものが、とても精巧に描かれているんです。本当にピーター・マックス並みにワケが分からない! とてもシンプルなんだけど、私のなかでは超サイケデリックな感じでしたね。私って、天才と思う人は、褒め言葉として「変人」とか「変態」と呼ぶんです。その意味では、きっと、近藤さんは変人であり変態でしょう。会ったこともない方に対してとっても失礼な話ですけど(笑)。こんな絵は見たことがなかったし、絶対にまねもできないけれど、あんなに小さなキャンバスで、こういう表現ができるんだなぁと、教えられた気がしました。これは全員の作品を見た感想でもありますが、私も何か手作りがしたい!と、すごく感じましたね。みなさんが私とほぼ同世代ということにも、とても刺激を受けました。
--以前にも、トーキョーワンダーサイト渋谷には来たことがありましたか。
今回の展示会が初めてでした。以前、石原都知事とブロガーの集いみたいな会があって、その時に都知事がワンダーサイトについて力説されたんですね。「都には有効活用していない建物がたくさんあるから、それを若いアーティストに開放するんだ!」って。それが渋谷のこんな場所にあるなんて知りませんでした。同じ建物のトーキョーワンダーサイトのカフェはいっつも混雑しているけど、ワンダーサイトの入り口って、ちょっと役所っぽくて気付きにくいですよね。でも、館内は素敵なスペースだし、展示もとても楽しかったし、また来たいと思いましたよ。
--まつゆうさんは、普段から渋谷で行動されているんですよね。
私の実家は神泉駅のすぐそばだったから、子どもの頃から渋谷が遊び場だったんですね。小学生の頃は松涛公園や代官山の西郷山公園で友達と遊んで、週末は親に東急や西武の屋上に連れて行ってもらったりしていました。中学や高校の頃にカラオケやプリクラ、お買物をしたのも、もちろん渋谷でしたよ。高校卒業後は大学には行かずにモデルをしていたのですが、オーディションかなんかで銀座に行っても、「ここは大人の街だな」と感じて落ち着かないから、そそくさと渋谷に帰って遊んでました。ホント、私は渋谷から出られない女なんですよ(笑)。一時期、「渋谷系」という音楽が流行りましたが、真の渋谷系は私だ!と今でも思っていますからね(笑)。