平凡な日常に輝きを取り戻す3本
2014年の夏が、そろそろ終わりを告げようとしている。今年は東京でも雨が続き、例年と比べてなんだかあっという間だったように感じる人も多いのでは?そんな短かった夏、休みをとってゆっくりと思い思いの時間を過ごした人はどれ位入るだろうか? 今回は、そんな「夏休みの終わり」にふさわしく、何気ない日常をいつもとは別の視点から捉え直してくれる映画3本をピックアップ。自身の出生の秘密を探りに、母親の知り合いを訪ね歩く「物語る私たち」、平凡な教師が「選ばなかった人生」に思いを馳せる「リスボンに誘われて」、タイムトラベルをモチーフに何気ない1日の価値を伝える「アバウト・タイム 愛おしい時間について」。それぞれアプローチは異なれど、いつもとは違う視点を使って、日常のありがたさを教えてくれる3本。 4月から新年度がスタートして、そろそろ仕事に疲れてきたという人におすすめ。マンネリ化した自身の毎日を思い直すきっかけにしてみてほしい。
物語る私たち
ユーロスペースでは8月30日から、女優サラ・ポーリーが監督兼主演を務め、自身の出生の秘密を尋ねる「物語る私たち」がスタートする。
1979年、カナダ生まれのポーリーは、舞台俳優の父、元女優の母の間に生まれ、4歳で子役として芸能活動をスタートさせた。「死ぬまでにしたい10のこと」「ドーン・オブ・ザ・デッド」などに主演する実力派女優として知られる一方で、20歳から監督・脚本家としての活動も展開。初劇場長編映画「アウェイ・フロム・ハー キミを想う」ではアカデミー賞脚色賞と主演女優賞にもノミネートされている。
同作は、5人兄弟の中で末っ子の自分だけが父親に似ていないことをちょっぴり不安に感じてきたサラが、亡くなった元女優の母ダイアン・ポーリーの秘密の恋に迫る作品。作中ではサラ自身が「探偵」となり、1970年代にダイアンと関わりのあった人々を訪ねる。そして物語は、ともすれば家族に悲劇をもたらし彼女自身を深く傷つけかねない驚くべき事実へ。それがウィットとユーモアに満ち溢れた作品として描き出されるのは、少しばかり奔放過ぎた母へのあふれんばかりの愛情ゆえ。衝撃の事実を揺るぎない愛で受け入れるサラの姿に、あなたも自分の心で自分の家族に改めて思いを馳せるきっかけにしてみては?
リスボンに誘われて
- タイトル
- リスボンに誘われて
- 上映場所
- Bunkamura ル・シネマ
- 上映期間
- 2014年9月13日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- ビレ・アウグスト
- 出 演
- ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、マルティナ・ゲデック、トム・コートネイ、アウグスト・ディール、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、クリストファー・リー、シャーロット・ランプリング
Bunkamuraル・シネマでは9月13日から、ある平凡な高校教師が「選ばなかった人生」を追いかける映画「リスボンに誘われて」がスタートする。
主人公はスイスの高校で古典文献学を教える高校教師ライムント。5年前に離婚して以来孤独な一人暮らしを送り、同じことを繰り返す毎日に特に不満はなかった。ところがある日、橋から飛び降りよとした女を助けて偶然に一冊の本を手にする。その一言一句に激しく共感し、そこに挟まれた切符を見つけて図らずもリスボンいきの夜行列車に飛び乗るライムント。それは、手にした本の作者を尋ねる度のスタートだったーー。
すでに亡くなっていた作者の親友や教師を訪ね、彼が医者として関わった事件、危険な政治活動への参加、親友を裏切るほど情熱的な恋などを知るライムント。作者の素顔が次第に明らかになり、最後に作者が本を書いた本当の理由を知った時、ライムントに開かれた新たな扉とは?
過去を振り返り、選ばなかった人生に思いを馳せる大人たちに向けて。人生の可能性は、いつだって過去ではなく未来に広がっていることを教えてれる一本だ。
アバウト・タイム 愛おしい時間について
- タイトル
- アバウト・タイム 愛おしい時間について
- 上映場所
- シネマライズ
- 上映期間
- 2014年9月27日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- リチャード・カーティス
- 出 演
- ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、リンゼイ・ダンカンほか
シネマライズでは9月27日から、タイムトラベルをハートフルに描いたリチャード・カーティス監督最新作「アバウト・タイム 愛おしい時間について」がスタートする。
イギリス南西部コーンウォールに住む青年ティムは、両親と妹、伯父の5人家族。どんな天気でも海辺でピクニックを、週末は野外映画上映を楽しむ風変りで仲良しな家族の中で、自分に自信のないティムは年頃になっても彼女ができずにいた。そして迎えた21歳の誕生日、一家に生まれた男たちには、タイムトラベル能力があることを父から知らされることに。自身の能力に驚きつつも恋人ゲットのためにタイムトラベルを繰り返すようになるティム。弁護士を目指してロンドンへ移り住んでからは、チャーミングな女の子メアリーと出会い、恋に落ちる。ところが、タイムトラベルが引き起こす不運によって、二人の出会いはなかったことに!そして、やがて迫られる人生最大の選択??。
世界的に大ヒットを記録した『ラブ・アクチュリー』(03)で長編監督デビューをはたしたカーティスにとって3作目であり、同時に最後の監督作となる同作。タイムトラベルを通して、「時間を巻き戻せたら違う道を選んでいた」という、生きていれば誰しもの頭を幾度かはよぎる思いをベースに、恋人、友人、そして家族というかけがえのない人たちへの愛を解いた。
同作を、なにげない一日を大切に、当たり前のように身近にいる人たちに感謝の気持を伝えるきっかけにしてみては?