映画で知る国際情勢
2013年末に発生したデモを皮切りに国内情勢が激化するウクライナ。親欧米派のウクライナ西部と、親露派の東部という住民対立を基盤に、議会は機能不全に陥ってヤヌコビッチ首相を解任。クリミア自治共和国では今月16日、住民投票によってロシアへの編入が承認され、国内情勢は欧米諸国とロシアの介入で更に深刻さを増してきた。 第3次世界大戦の勃発も噂されるが、第一報として伝わってくる情報を改めて調べてみると、旧ソビエト時代から続く住民感情やユダヤ人問題、資源の問題など、良い・悪いと一概に判断できないとても複雑な問題が積み上がり、現在の状況に陥っていることが見えてくる。そこで今回は、教科書では簡単に学んで終わってしまったり、そもそも教科書には掲載されなかったような国際情勢を、独自の視点であぶり出す作品をピックアップ。 第二次世界大戦の一幕を伝えるものや、犯罪者側の視点で悪を問うものなど、思ってもみない切り口が、世界中で今なお続く国際問題が解決へと向かう一助となるかもしれない。
レイルウェイ 運命の旅路
- タイトル
- レイルウェイ 運命の旅路
- 上映場所
- 渋谷シネパレス
- 上映期間
- 2014年4月19日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- ジョナサン・テプリツキー
- 出 演
- コリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田広之、ジェレミー・アーヴァイン、ステラン・スカルスガルド、石田淡朗、他
渋谷シネパレスでは4月19日より、「エスクァイア」誌ノンフィクション大賞を受賞したエリック・ローマクスの自叙伝を映画化した歴史ドラマ「レイルウェイ 運命の旅路」が公開される。
出演はアカデミー賞(R)受賞のコリン・ファース、二コール・キッドマン、国際派として活躍する真田広之ら。1942年6月、ミッドウェイ海戦に負けた日本軍は、ビルマ戦線の物資輸送のために中国とインドをつなぐ鉄道建設を決断。この鉄道のタイとビルマをつなぐ415キロに及ぶ区間は「死の鉄道」と称され、連合軍捕虜らを使った過酷な労働で多くの死者を出したことで知られる。
同作は、捕虜となった経験を持つ元英国人将校エリックの過酷な戦争体験と、その後の驚くべき人生を綴る。伴侶となったパトリシアの類稀なる愛、夫の過去までをも引き受けようとする勇気…。エリックが辿った心の軌跡、勇気ある行動は、今なお国同士の争いが途絶えることのない現代にこそ求められる、普遍性と感動をもたらすだろう。
アクト・オブ・キリング
- タイトル
- アクト・オブ・キリング
- 上映場所
- シアター・イメージフォーラム
- 上映期間
- 2014年4月12日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- ジョシュア・オッペンハイマー
- 共同監督
- クリスティン・シン、匿名希望
シアター・イメージフォーラムでは4月12日から、鬼才ヘルツォーク監督を「少なくともこの10年間、これほどにパワフルで、超現実的で、恐ろしい映画を観たことがない」と驚かせた異色ドキュメンタリー「アクト・オブ・キリング」がスタートする。
映画の舞台はインドネシア。この国では、かつて60年代に100万人規模の大虐殺
が密かに行われていた。そして驚くべき事に、虐殺を行った殺人者たちは今もなお
“国民的英雄”として優雅に生活。なぜそんなことが起こりえるのか。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは、その理由を知るために殺人者たちに「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」と提案。大の映画ファンだった彼らは大喜びで映画作りに同意し、まるで映画スター気取りで、過去に行った殺人の行為(=アクト)を演技(=アクト)してみせる。しかしその再演は、彼らにある変化をもたらしていく???。
殺人を再現する殺人者…。人間のモラルを揺さぶる衝撃が、静けさの中に立ち上ってくる。
チスル
ユーロスペースでは3月29日から、歴史から抹殺された韓国現代史最大のタブーに迫った映画「チスル」が公開される。
第二次世界大戦で日本が連合国に降伏すると、朝鮮半島ではアメリカ軍とソビエト連邦軍が北緯38度線で半島を南北に分割してそれぞれ占領。アメリカ主導で進められた南だけの単独選挙が国の南北分断を決定的にするとして、済州島では1948年4月3日、選挙に反対する島民が武装蜂起を行った。それが発端となり、米軍が作戦統治を行っていた韓国軍と警察は、海岸線5kmより内陸にいる人間を暴徒と認定。鎮圧の名の下、無差別に虐殺を行った。事態は熾烈を極め、7年もの間に約3万人が犠牲となったが、実はその大半は、思想やイデオロギーとは無縁な人々。日本に逃れた島民も多く、事件前に28万人いた島民は激減。「済州島4・3事件」と称されるこの出来事は、時の体制に「アカの島」で起きた「共産暴動」と烙印を押され、近年まで語ることさえタブーとされてきた。
メガホンを取ったのは、済州島に生まれ育った新鋭オ・ミヨル。未だに真相の究明が十分に果たされていない4・3事件を初めて罪のない島民の視点で描写。済州島出身のキャスト・スタッフが結集し、沈黙を強いられてきた生き証人の声を救い上げた。実際に島民が逃げ込んだ洞窟でも撮影。圧巻的な映像美で彼らの絶望と希望の刹那を描き出した。なぜ殺されるのかわからず死んでいった人々、なぜ殺すのかわからず殺した者、時が過ぎても消えることのない人々の魂の叫び、あなたはどう受け止める?