子どもに学ぶ映画
東京オリンピック、原発問題、社会保障の充実、幅広い論点で争われる2014年東京都知事選。有権者は、より希望ある未来のために各々の考え方で候補者に一票を投じることとなる。どんな未来が自分にとって希望が持てるのか、どの候補者に投票すればその未来が実現に近づくのか、さまざまな可能性を案じて思い悩む人も多いのでは? そこで今回は、「子ども」の目を通して世界を見つめる3作品をピックアップした。親たちの都合に振り回される複雑な環境に育ちながらも、自分の居場所をとてもシンプルに探し出す「メイジー」、美しい自然を背景に6歳児程度の知能しかもたない父親との自由な人生を謳歌する5歳児「ニラー」、そして、胎内記憶を足がかりに人の存在価値を見つめなおす作品。「子ども」とは、将来を背負って立つ大人たちであり、見聞を広げて大人になった自分自身でもある。子どもの視点を選択肢の一つとして、理想の世界のあり方を探りたい。
メイジーの瞳
シネマライズでは1月31日から、離婚した夫婦の世界を6歳の少女を通して描いた「メイジーの瞳」が公開されている。
離婚した両親の家を10日ごとに行き来することになったNYに住む6歳のメイジー。ベビーシッターだったマーゴが、父の新居にいることに戸惑うが、元々仲良しだった彼女にすぐに打ち解ける。母が再婚した心優しいリンカーンも、メイジーの大切な友だちになった。自分のことに忙しい両親は、次第にそれぞれのパートナーにメイジーの世話を押し付け、彼らの気まぐれに我慢の限界を超えたマーゴとリンカーンは家を出て行く。母はツアーに向かい、メイジーは独り夜の街に置き去りにされてしまうのだが─。
子どもの瞳で世界を見れば、家族とは、愛とは何かが、とてもシンプルに見えてくる。子どもの心を通して、私たち大人のおかしくも切ない未熟さを感じ、見えなくなっていた大切なことを、思い出してみてはいかがだろう?
神さまがくれた娘
ユーロスペースでは2月15日から、6歳児の心を持った父と5歳の娘のひたむきな親子愛を描いた映画「神さまがくれた娘」がスタートする。
チョコレート工場で働くクリシュナは、6歳児程度の知能しか持っていないが、嘘のつき方も知らない正直者でみんなに愛されていた。そんな彼も結婚をして子供を授かるが、妻のバーヌマティは娘を残して亡くなってしまう。娘にニラー(お月様)と名づけたクリシュナは、周囲の助けを借りながら彼女を育てるのだった。時は流れ、ニラーは素直で可愛らしい5歳の女の子に成長。そんなある日、町の有力者であるバーヌマティの父は、クリシュナ親子の存在を知り「子どものような親に子育てはできない」と、ニラーを連れ去ってしまう。
カミナリの夜はベッドの下にもぐり、晴れた日は緑の丘で歌い、眠る前は指人形でおしゃべりする。そしてニラーの幸せを心から願うクリシュナが、初めてついたあまりにも切ない嘘とは…。
派手なダンスやパワフルなスタントシーンで知られるインド映画のイメージを覆す、陽ざしのように暖かい無垢な父と、月のように希望を照らす娘の深い愛を味わいたい。
かみさまとのやくそく 〜胎内記憶を語る子どもたち〜
- タイトル
- かみさまとのやくそく 〜胎内記憶を語る子どもたち〜
- 上映場所
- アップリンク
- 上映期間
- 2014年2月8日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- 荻久保則男
- 出 演
- 池川明、南山みどり、大門正幸、飛谷ユミ子、かがみ知加子 他
アップリンクでは2月8日から、胎内記憶とインナーチャイルドをテーマにしたドキュメンタリー「かみさまとのやくそく 〜胎内記憶を語る子どもたち〜」が公開されている。
胎内記憶とは、お母さんのお腹の中にいたときの記憶や、その前の記憶のこと。2〜4才の子どもたちが話すと言われている。インナーチャイルドとは、自分の中にいる内なる子ども。心の深奥部に潜み、幼児期の体験によって傷つけられたり抑圧されたりしている自己を指す。
同作では、子どもたちへの胎内記憶についての聞き取り調査や子育ての実践、内なる子どもへの自己肯定ワークの過程を紹介。研究者、教育者、たいわ士(胎児や赤ちゃんの通訳)が、子ども達と向き合う姿をとらえた。
子育てに悩む大人たちから、子どもを持たずに成長した大人たちまで、それぞれの身近にある「子ども」という存在を通して自分が生まれた意味、幸せのありかについて考えなおしてみては?