反抗のススメ
スーパーのレジで列に割り込む人、エスカレーターの道を塞ぐ人、カフェで大声で喋る人…。その場でみんなが共有しているはずの暗黙のルールに気が付かない人というのは、街で職場で1日に一回くらいは出会うもの。自分の気持ちに余裕がないときは、特にみんなが「当たり前」に選んでいる居心地のよさを平気な顔で踏みにじるアイツらに腹が立つ。注意する勇気がない自分は、頭のなかでアイツらに注意している場面を想像して緊張することで精一杯。「ちょっと、レジに並んでくださいよー?」「なんでエスカレーターの真ん中で止まってるの?」「静かにして!!」 しかしそうやってこれまでわざわざ口には出さなかった「暗黙のルール」を頭のなかで言語化してみると、どうしてそのルールを守っているのか、説得できるような理由をはっきりと答えられないこともしばしば。頭のなかで言葉に詰まって、「やっぱり注意しなくてよかった」とほっとひと安心すると同時に、じゃあなんで自分はこのルールを律儀に守っているのかと突然バカバカしくなったりもする。 今回は渋谷で公開予定の作品の中から、暗黙のうちに受け入れているたくさんのルールに「反逆」している人々を紹介。夫婦で積み上げた紆余曲折の時間を「表現」として発散するアーティスト、理不尽な法令に独自の方法で抵抗するミュージシャン、政府に拘束されてさえ自分の意見を曲げない現代芸術家…、積極的に社会のルールに立ち向かっていく彼らの姿を通して、自分の中の「当たり前」にもう一度向き合ってみるのはどうだろうか?そのルールのために、自分で自分を縛り付けてはいませんか?
キューティー&ボクサー
- タイトル
- キューティー&ボクサー
- 上映場所
- シネマライズ
- 上映期間
- 2013年12月21日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- ザッカリー・ハインザーリング
- 出 演
- 篠原有司男、篠原乃り子
シネマライズでは12月21日より、岡本太郎が生前に「ひたむきなベラボウさ」と評した現代アーティスト篠原有司男とその妻乃り子の愛と闘いを記録したドキュメンタリー「キューティー&ボクサー」が公開される。
篠原有司男は、1960年に日本で結成された芸術集団「ネオダダイズム・オルガナイザーズ」の中心的メンバー。「ボクシング・ペインティング」で有名になり、1969年に渡米する。1971年、妻・乃り子は19歳のときに美術を学びにやってきたNYで彼と出会い、恋に落ちて結婚。学業の道を捨て、裕福な家族からの仕送りは打ち切られた。
反抗的なモヒカン刈りのアーティストだった若い頃、アクション・ペインティングと路上パフォーマンスで戦後の東京のクリエイティブ・シーンを駆け上がった有司男。NYではウォーホールやラウシェンバーグのような人たちとつるみ、現在もなお絵画と彫刻を旺盛に探求しつづけている。一方で現在59歳の乃り子は、妻であり、母であり、ときにアシスタントであることに甘んじていた。しかし、息子も成長した今、ついに自分を表現する方法に行き着く。それは、夫婦のカオスに満ちた40年の歴史を、自分の分身であるヒロイン“キューティー”に託してドローイングで綴ること。女性のパワーが奔放に、生き生きと爆発したかのようなドローイングからなる“キューティー”シリーズは、有司男とのこれまでの生活を、感覚的に、ユーモラスに描き出す。
同作は、有司男と乃り子の40年間に渡るニューヨークでの波乱に満ちた結婚生活にフォーカス。愛、犠牲、歓び、痛み、情熱、失望、老いていくこと、私たちの人生にも迫るこのテーマに、2人はどんな風に立ち向かっているのか。パーソナルでありながら普遍的でもある2人の人生を味わいたい。
SAVE THE CLUB NOON
- タイトル
- SAVE THE CLUB NOON
- 上映場所
- UPLINK
- 上映期間
- 2013年11月30日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- 宮本杜朗
- 出 演
- 赤犬、いとうせいこう、沖野修也 & 沖野好洋Kyoto Jazz Massive、ハナレグミ、七尾旅人 ほか
UPLINKでは11月30日から、大阪のクラブ「NOON」摘発にあたって開催された奇跡のライブと証言を集めたドキュメンタリー「SAVE THE CLUB NOON」の公開がスタートする。
関西では2010年頃から風営法の取り締まりが強化され、約2年間でおよそ20軒ものクラブが実質的に廃業。そんなただ中の2012年4月4日、大阪中崎町の老舗ナイトクラブ「NOON」が21時43分に「無許可で店内にダンススペースを設け、客にダンスをさせていた」という理由で摘発、経営者を始めスタッフ8人が逮捕された。
メジャー、インディーズを問わず世界中から音楽家が集い、大阪を代表するクラブの一つとして知られた「NOON」。『SAVE THE NOON』は、「NOON」を救済するべく開催されたライブイベントで、2012年7月に4日間に渡って開催。日本全国から約100組のDJ、ミュージシャンが集結した。
同作は「ダンスをさせること」が規制の対象となる風営法に対して、ミュージシャン達それぞれのダイレクトな声をより多くの人に伝えたいという思いを核に、クラウドファンディングによって資金を集めて制作された異色作。作中には、『SAVE THE NOON』に出演したミュージシャンの貴重なインタビューとライブを収めた。
風営法に対して声高に異議を唱えるのではなく、この問題を冷静に捉え、風営法への疑問を通して自分たちが生きている社会をより深く知り、これからの未来を考えていく。同作を、そんな未来への「最初の一歩」にしてみては?
アイ・ウェイウェイは謝らない
- タイトル
- アイ・ウェイウェイは謝らない
- 上映場所
- シアター・イメージフォーラム
- 上映期間
- 2013年11月30日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- アリソン・クレイマン
- 出 演
- アイ・ウェイウェイか
イメージフォーラムでは11月30日より、今も中国秘密警察の24時間の監視下のもと活動を続ける現代アーティスト、アイ・ウェイウェイを追ったドキュメンタリー「アイ・ウェイウェイは謝らない」が公開される。
アイ・ウェイウェイは1957年北京生まれ。2008年オリンピック大会の“鳥の巣”スタジアムのクリエイターのひとりとして参画をしながらも、オリンピック大会を糾弾。以降危険分子の一人として注目されるようになり、2008年5月の四川大地震における校舎倒壊と五千人以上の学童の死についての調査したことにより、彼と中国政府の対立は決定的となった。
監督アリソン・クレイマンは、2006年から2010年まで中国に暮らし、アメリカのPBSのニュース・ドキュメンタリー、AP通信のためにテレビ番組特集の制作に従事したフリージャーナリスト。同作では、アイ・ウェイウェイに2年間に渡り密着。2011年春にアイ・ウェイウェイが中国当局に拘束された際には、CNNインターナショナルをはじめメディアに大量露出。彼の釈放を呼びかけた。
2011年4月3日、香港行きの飛行機に搭乗するために向かった北京首都国際空港で中国当局に拘束され、81日後の6月22日に保釈されたアイ・ウェイウェイ。なぜ、彼は拘留されることになったのか。そして、現在も軟禁の立場の中、140文字のツイッターで“発信”し続けるアイ・ウェイウェイ。
同作を通して、現代美術家、建築家、キュレーター、文化評論家、社会評論家と様々な肩書きを持つ彼の不屈の精神を学びたい。