コレとアレとの境界
東シナ海の南西部にある島嶼群「尖閣諸島」。日本と台湾・中国側との間ではこの諸島の領有権をめぐって不法操業や不法越境などの国際問題がしばしば発生している。ほかにもブータンと中国、カザフスタンとウズベキスタン、トルコとアルメニアなど、2国が隣接するエリアについてお互いが領土権を主張する領土争いは、現在も世界中で見られる問題。その背景には、石油などの天然資源や、国境付近にある川、農地、重要建造物などがあり、その所有の有無が国益を左右する場合も多い。 一方でソーシャル・ネットワークが世界各地に普及し、地球の裏側に住む友人の生活にも瞬時にアクセスできる現在。庶民のリアリティ感覚では、国同士の境界線はどんどん希薄になっているようにも感じる。それでも国同士は争うものなのか。国籍は必要なのか。自分がどこかの国民である、ということにどんな意味があるのだろうか。 今回は、2つの対象をめぐる「境界線」に着目して、渋谷で上映中の映画作品をピックアップ。異なる国同士のカップルのもとに生まれた「ハーフ」という存在にフォーカスしたドキュメンタリー、血の繋がった家族だと思っていた子どもが他人だったことを通じて、家族という共同体の意味を見つめなおす劇映画、食料廃棄の現状を通じて「食べもの」と「食べられないもの」の判断基準に疑問を呈するドキュメンタリー。それぞれ対象は異なるけれど、テーマになるのは、どこに境界線を引くのか、その境界線を引くことにどんな意味があるのか、という問題。異なる分野でのそれぞれのアプローチを通して、改めて自分の身近な境界線、自分とは関係無いものとしてきた境界線について、思いを馳せてみては。
ハーフ
アップリンクでは10月5日から、ハーフたちの複雑な心境や多文化的な経験を伝えるドキュメンタリー「ハーフ」が公開される。
人々が頻繁に世界中を移動する時代となり、日本でもますます人々の移動が盛んになっている。厚生労働省の統計によると、日本の新生児の49人に1人が日本人と外国人の間に誕生。外見的に目立つ人もいれば、全く目立たない人もいる。
同作では、日本とオーストラリア、ガーナ、メキシコ、韓国など、別の国の人との間に生まれたハーフを取材。インタビューやナレーションを通して、ハーフたちの生い立ちや家族の関係、教育、時には彼らの外見が影響する彼らの体験を伝える。彼らの中には日本しか知らない人たちもいれば、日本での生活は全くの未知の世界という人たちもおり、またその二つの異なる世界の狭間で生きている人たちもいる。
ハーフであるとは、どういうことなのか? そして、日本人であるという意味は?
そして父になる
- タイトル
- そして父になる
- 上映場所
- 渋谷シネパレス
- TOHOシネマズ渋谷
- 上映期間
- 2013年9月28日(土)〜(9月24日〜先行)
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- 是枝裕和
- 出 演
- 福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー
渋谷シネパレス・TOHOシネマズ渋谷では9月28日から、福山雅治さんが主演を務め、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した話題作「そして父になる」がスタートする。
学歴、仕事、家庭。自分の能力で全てを手にいれ、自分は人生の勝ち組だと信じて疑っていなかった良多(福山雅治)。ある日病院からの連絡で、6年間育てた息子は病院内で取り違えられた他人の夫婦の子供だったことが判明する。妻のみどり(尾野真千子)は気が付かなかった自分を責め、一方良多は優しすぎる息子に抱いていた不満の意味を知る。良多は相手方の家族と戸惑いながらも交流を始めるが、群馬で小さな電気店を営む斎木雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)夫婦の粗野な言動が気に入らない。過去取り違え事件では100パーセント血のつながりをとるというが、息子に一心な愛情を注いできたみどりと、温かでにぎやかな家庭を築いてきた斎木夫婦は育てた子を手放すことに苦しむ。
そしてついに息子の「交換」がスタート。そこから、良多の本当の「父」としての葛藤が始まる…。
家族に起きた「事件」を通して、新たな時代の家族像を模索する同作。血のつながりとは、家族とはいったい何?
もったいない!
- タイトル
- もったいない!
- 上映場所
- 東京都写真美術館ホール
- アップリンク(10月19日〜)
- 上映期間
- 2013年9月21日(土)〜
- 上映時間
- 上映スケジュールの詳細は劇場まで
- 監 督
- バレンティン・トゥルン
- 撮 影
- ロラント・ブライトシュー
東京都写真美術館ホールでは9月21日から、世界の食料廃棄の現状を伝えるドキュメンタリー「もったいない!」が始まった。
国連食糧農業機関(FAO)は9月11日、世界で生産された食料の3分の1、年約13億トンが食べられることなく廃棄されているとする報告書を発表した。最悪の廃棄地域は日中韓を含む「産業化されたアジア」。同作では、日本をはじめ世界各国で、食料が辿るあらゆる段階に関わる人々や専門家の話を聞きながら、その驚愕の現実と原因、影響を紹介。生産の現場で、流通の過程で、小売販売の段階で、そして家庭でも…。
「私の国ではバナナだってめったに食べられないのに、捨てるなんて贅沢すぎるわ!」(パリのフードバンクで働くカメルーン出身のヴェロニク)「食品廃棄は食料の価格を高騰させ、間接的に世界の飢餓を招いている。」(ボン大学教授)「もったいないなぁ、日本人は贅沢だなぁって思うけどね。」(食品リサイクル工場の作業員)
世界では、8人に一人が飢餓に苦しんでいるといわれる一方で、賞味期限が近いなどの理由で食べられる食品が簡単に大量に捨てられている現状。賞味期限とは、食べられなくなることではないはずなのに、それでも減らない食品ロスの根元にある原因はなにか?そして私達は何ができるのか?