渋谷文化プロジェクト

渋谷をもっと楽しく!働く人、学ぶ人、遊ぶ人のための情報サイト

BOOK × SHIBUYA 渋谷の書店がオススメする3冊

渋谷ではたらく人びとに向け、渋谷にショップを構える書店員が月替わりで「今、読んでおくべき本」を紹介します。

今回のテーマ

書を読んで旅へ出よう!

肌にジリジリと太陽が照りつける夏を迎えるたび、学生時代に大きなバックパックを背負い、異国の地で右往左往した日のことを思い出す。ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」や、沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れて、自分の生きる力を試したくて、答のない何かを見つけたくて、ここではないどこかへ行ってみたくて…。「外国人の友だちをたくさん作ってやろう!」「俺は何かを掴んで帰ってくる!」と意気込み、いざ海外へ飛び出してみたものの、言葉の壁や習慣の違いから孤独感に苛まれ、結果的に同じ境遇の日本人ばかりとつるんでしまう。自分がいかに弱くて臆病なのか、旅を通じて思い知る。その一方で、必要に迫られれば、下手なジャングリッシュでも手振り身振りを交え、旅人同志、見知らぬ外国人とも楽しく会話ができることも学んだ。「旅」という非日常的な時間・体験は、未知の世界へ足を踏み入れる恐怖感と緊張感が伴う反面、私たちの知的好奇心を刺激し、日常では学べないことをたくさん教えてくれる。旅は何も若者だけの特権ではない!仕事に疲れたとき、人生につまずいたとき、一度は諦めた夢を取り戻すため、私たちはいつだって旅に出ることができるのだ。さぁ、書を読んで旅へ出よう。あの頃のように! さて今回の「シブヤ×ブックス」では、渋谷センター街にある「ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店」の書籍担当・大森慧さんにブックセレクターを務めてもらった。「遊べる本屋」として知られるヴィレヴァンは、各ショップの書籍担当が地域性やトレンドなどを敏感にキャッチしながら、個性的でユニークな棚を作り上げているのが特徴。いわば、ヴィレヴァンの棚を見れば、現在の渋谷の若者たちが「何に興味を持っているのか?」「何を面白がっているのか?」、その感性や志向性を広く把握することができるのだ。そこで今回は本格的なレジャーシーズンを迎え、現在、渋谷宇田川店で販売が伸びている「旅本」をテーマに、入社10年目のベテランの域に入った大森さんにピックアップしてもらった。いわゆる普通のガイド本ではない、ヴィレヴァンらしいユニークな3冊は必見!

今月のブックセレクター

書籍担当:大森慧さん(入社10年目)

店 名:
ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店
住 所:
渋谷区宇田川町33-1 渋谷グランドB1F
電 話:
03-5728-4227
営 業:
10時〜24時
取 扱:
和書/洋書/コミック/雑貨・文具

複合型書店「ヴィレッジヴァンガード」は現在、全国に400店舗以上を展開。中でも渋谷駅周辺には「宇田川店」のほか、女性向け雑貨を中心とした「マルイシティ渋谷」、コミックス・フィギュアなどマニアックな商品を揃える「渋谷パルコ」の3店舗が集中し、ヴィレヴァンが注力するエリアの一つ。2011年11月にオープンしたばかりの宇田川店は、地下約300坪の店舗面積を誇り、新しい試みや提案などをしていく旗艦店として位置付け。アート・デザイン、旅、絵本、女性文学、ガールズ、サブカル、料理、コミックなどの通常カテゴリーに加え、バカ・モテ・エロ、ナチュラル(自然・オーガニックなどのライフスタイル系)、虫酸(不快なもの)など、感覚的な棚づくりやレアな品揃えに定評がある。

ブックセレクターからのオススメ

奇跡の世界に出逢う旅−「5日間の休みで行けちゃう!絶景・秘境への旅」

画像
インド洋に浮かぶ驚異の空間、イエメン・ソコトラ島
タイトル
「5日間の休みで行けちゃう!絶景・秘境への旅」
制 作
A-Works
出版社
A-Works
発売日
2012/12/22
価 格
1575円(税込)
サイズ
21cm
ページ
304P

自由人・高橋歩さんがプロデュースする旅先を決めるためのガイド本。「アンテロープキャニオン」(アメリカ)、「バオバブ並木」(マダカスカル)、「イグアスの滝」(アルゼンチン)など、地球が創造した奇跡の別世界を求め、一生の宝物になる最高の景色に出逢う「絶景・秘境40選+α」の旅をフルカラーで紹介する。予算から手配まで、丁寧に解説したガイド付き。
<大森さんのオススメポイント>
宇田川店で一番売れている旅の本。卒業旅行シーズンから夏休みにかけ、10代後半から20代の学生を中心に売れています。美しい秘境の写真が多く、また旅費にかかるだいたいのコストなども掲載されているため、在り来たりの観光地やツアーでは満足しない方にオススメです。私は死ぬ前に一度は「オーロラ」を観てみたいし、この本の中で見つけた「イエメン・ソコトラ島」にも行ってみたいと感じました。大きなキノコのような変わった形を持つ植物が自生し、まるで未知の世界を垣間見ているような気分にさせられます。この本の魅力は、何と言っても掲載されている場所にすべて行けること。たとえば、写真を見ながら「オーロラを見てみたい!」と決めたら、それからネットや専門ガイドなどでカナダのことを深く調べれば良いと思います。「どういう景色が見たいか?」など、取っ掛かりやきっかけをつかむには最適。私自身、海外は言葉が通じないので、怖くてなかなか行けないのですが、この本を通じて「秘境を見てみたいなー」という興味が湧いてきました。

チャンスを広げる就活の旅−「セカ就!世界で就職するという選択肢」

画像
働く舞台は日本だけじゃない! 男女5人の実話ベースのストーリー
タイトル
「セカ就! 世界で就職するという選択肢」
著 者
森山たつを
出版社
朝日出版社
発売日
2013/7/18
価 格
1575円(税込)
サイズ
19cm
ページ
280P

「セカ就(世界で就職)」に目を向ければ、チャンスや選択肢はぐんと広がる。登場人物は「ブラック居酒屋店長からのインドネシア就活」した川崎君夫(23)、「スーパー契約社員からのシンガポール就職」した鈴木英子(26)、「ウェブ制作会社からのマレーシア就職」した本田俊輔(25)など、男女5人の実話をもとにした就活ノベル。ほんの少し勇気を出して海外へ飛び出した若者たちの成長物語を描いている。
<大森さんのオススメポイント>
旅行本ではなく、世界で就職するための本。一般的に海外就職の仕方などを指南するハウツー本が多い中で、この本は実体験をもとにした小説です。著者の森山たつをさんは大手企業を渡り歩いたのち、仕事を辞めて自ら海外にバックパッカーに出かけた旅のスペシャリスト。内容はほぼドキュメンタリーなのですが、読み物にすることで、そこまで海外就職を意識していない人にも新しい視点を与えています。いわば、現代版「深夜特急」とも言えるかもしれません。現在、日本の就職環境はブラック企業とか、就職難とか…、将来に不安や暗さを感じずにはいられません。フリーターだった人が思い切って海外に行ってみたら、成功をつかんでバリバリ働けているとか…、世界にはチャンスがまだあるし、狭く下向きになっている目線をもっと広げてほしいというメッセージが込められています。また、この本は単に海外就職を推奨しているわけではなく、むしろ、これを読んで「やっぱり海外は無理だな、日本で頑張ろう」と思う人もいるかもしれない。私も短大卒業後、ヴィレッジヴァンガードで2年ほど働いていましたが、憧れだったお笑い芸人を目指し、一旦仕事を辞めて学校に通っていた時期がありました。「今、このままでいいのか?」「自分のキャリアはどうか?」など、仕事に悩んでいる人に自分を見つめ直すきっかけとして読んでもらいたいです。

創業者の想いを感じるグルメ旅−「全国飲食チェーン本店巡礼〜ルーツをめぐる旅〜」

1992年、「フレッシュネス・バーガー」は渋谷区富ヶ谷で創業
タイトル
「全国飲食チェーン本店巡礼 ~ルーツをめぐる旅~」
著 者
BUBBLE-B
出版社
大和書房
発売日
2013/7/28
価 格
1365円(税込)
サイズ
19.2cm
ページ
160P

誰もが知る大手飲食チェーンの始まりの地、本店スピリットを求めて全国をめぐる新感覚のグルメガイド。著者はテクノ系のコンポーザー、リミキサー、DJとして活躍するBUBBLE-B(バブルビー)さん。2004年から本店めぐりに目覚め、ブログ「本店の旅」を開設。以来、国内外の飲食チェーンをめぐる旅を続ける本店巡礼の第一人者。吉野家、松屋、東京チカラめし、モスバーガー、CoCo壱番屋など、全48店舗、160ページオールカラーで掲載。
<大森さんのオススメポイント>
「サイゼリア」「日高屋」など、誰もが知っている全国チェーンの飲食店の第一号店を紹介する本です。一号店はオーナーさんの思い入れが多いお店だと思うので、本店ならではの味、接客の質、店舗の造りなど、他のお店にはないこだわりも見えてくると思います。ヴィレヴァンも名古屋に本店がありますが、もともとは倉庫を店舗に使っていたので、現在の店舗の様子とだいぶ異なっています。また、東京で仕事をしていながらも、本店の「名古屋」を意識することが多く、たとえば、ナポリタンとカレーを合わせるような、名古屋流のごちゃごちゃ感というか、合わせる巧みさは雑貨や本の組み合わせや、棚作りの際にも意識しています。この本の中には、「富士そば」(渋谷区宇田川町26-6)、「洋麺屋五右衛門」(渋谷区神南1-7-8)、「カプリチョーザ」(渋谷区東1-3-1)、「フレッシュネスバーガー」(渋谷区富ヶ谷2-23)など、渋谷から生まれたお店も紹介されています。特に東京都内には本店が数多く存在していますので、本を片手に一号店を巡るグルメ旅に出かけてみるのも面白いかもしれませんよ。
ヴィレヴァンはお客様が若いので、今回選んだような本を読んで、若いうちにたくさん旅に出て世界を見てほしい。バックバッカーまでいかなくても、とにかく目線を広くしてもらいたいです。それがちゃんとした旅じゃなくても、「チェーン店一号店を見に行こう!」でも何でも。ヴィレヴァンで売っている本は専門書ではないので、まずは、ここで取っ掛かりをつかんでもらい、第一歩を踏み出すきっかけにしてほしい。そして、それに興味を持ったら、次は渋谷の大手本屋さんで専門書を買ってもらえば良いと思います。

バックナンバー

オススメ記事