渋谷文化プロジェクト

渋谷をもっと楽しく!働く人、学ぶ人、遊ぶ人のための情報サイト

BOOK × SHIBUYA 渋谷の書店がオススメする3冊

渋谷ではたらく人びとに向け、渋谷にショップを構える書店員が月替わりで「今、読んでおくべき本」を紹介します。

今回のテーマ

飯沢耕太郎さんが選ぶ
「渋谷をぎゅっと凝縮した写真集」

恵比寿にある「写真集食堂 めぐたま」。店内にある写真集を眺めながら、おいしいご飯とたのしいイベントを堪能することができる素敵なカフェだ。ここにある約5000冊の写真集はすべて、写真評論家である飯沢耕太郎氏所蔵のもの。広く皆さんに楽しんでもらいたいという想いから、それまで自宅にあった写真集のうち2/3以上をお店に配置。「言葉のない写真集は、子どもから大人まで、そして外国の人も楽しめる『世界への扉』であり、ページを開けば一瞬でその世界にワープさせる魅力的なツール」と広報担当のときたまさん。

今回の「シブヤ×ブックス」は、飯沢耕太郎さんがブックセレクターとなり、「写真集食堂 めぐたま」の書棚から、渋谷に関わる写真集を3冊ピックアップし、紹介してもらった。渋谷の魅力がぎゅっと凝縮された3冊の写真集。あっと驚くような写真もあるなど、渋谷を再発見するおもしろい作品ばかり。ぜひ一度、手に取ってみてほしい。

今月のブックセレクター

飯沢耕太郎さん(写真評論家。「写真集食堂 めぐたま」写真集担当)

1954年、宮城県生まれ。写真評論家。きのこ文学研究家。1977年、日本大学芸術学部写真学科卒業。1984年、筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。主な著書に『写真美術館へようこそ』(講談社)、『現代日本写真アーカイブ』(青弓社)、『きのこ漫画名作選』(Pヴァイン)他多数。


店 名:
「写真集食堂 めぐたま」
住 所:
渋谷区東3-2-7 1F
電 話:
03-6805-1838
営 業:
平日 11:30〜23:00
(L.O22:00)
土日祭日 12:00〜22:00
(L.O21:00)
定 休:
月曜日
(祭日の場合、翌火曜日が休み)

ブックセレクターからのオススメ

「渋谷の今昔アルバム 激変した渋谷の街のタイムトリップ写真帖」

画像
タイトル
「渋谷の今昔アルバム 激変した渋谷の街のタイムトリップ写真帖」
出版社
彩流社
発売日
2013/5
価 格
1,620円(税込)
サイズ
29.4cm
ページ
63P

乗り物エッセイスト・コラムニストの三好好三(みよしよしぞう)氏と地域史研究家の生田誠氏が手掛ける、渋谷駅周辺をはじめとする新旧の街角風景を紹介した一冊。

<飯沢さんのオススメポイント>
この本は、昔の写真と今の写真を対照して見せる作りとなっています。いままさに渋谷は再開発の真っ只中でここ2〜3年の間でも大きく変わり、今後も変わっていきますが、昭和初期の頃と、この本が出版された2013年の頃を比較してみても、その激変ぶりはすさまじいものがあります。この本を見てまず驚いたのが、昭和26年に現在の東急東横店の7階屋上と東急東横店西館の4階屋上との間にこどもたちをのせるゴンドラが走っていたという事実。しかもとってもかわいい(笑)。存在していたのはたったの2年間だけだったそうですが。ハチ公のある西口も昔は線路があり玉電が走っていた。Bunkamuraのある文化村通りは昔は小学校。神宮通りには八百屋があり、恵比寿駅はまるで人家のような佇まい。この写真を見て、昔から渋谷に住んでいる人は懐かしく思うだろうし、昔を知らない若い世代の人々は少なからずショックを受けるのではないでしょうか。

「東京物語」

画像
タイトル
「東京物語」
出版社
平凡社
発売日
1989/5
価 格
:3,030円
サイズ
29.2cm
ページ
120P

日本を代表する写真家、アラーキーこと荒木経惟氏の名作のひとつ。出版年の1989年からさかのぼること2〜3年に撮影された写真を集めた写真集。


<飯沢さんのオススメポイント>
昭和の終りの頃の東京の街並みを撮影した写真集です。表紙は、できたばかりの渋谷109。マリリン・モンローの絵が印象的ですね。「宮下公園」「渋谷公園通り」など渋谷を舞台にした写真がいくつかあります。たとえば、ホテル街・円山町の駐車場に立つカップルや、渋谷パルコの横にあった手描きの壁画。また、日本国旗をもった少女が電車に乗って天皇誕生日を祝いに行くという写真があるのですが、その彼女が次のページで消え、最後は背中を向けて小さく座る老人の姿で終わります。この老人は昭和天皇に見立てたもので、昭和の終りを表現する。そういった小さいストーリーがあるのもおもしろいですね。とても素晴らしい作品です。また、この写真集が出版された翌年に荒木さんの奥さんである陽子さんが亡くなられています。ひとつの時代の終りと陽子さんの死を漂わせながら、小津安二郎の映画「東京物語」にひっかけて、荒木氏の「東京物語」を作りあげた野心的な一冊です。

「シブヤ、シブヤ」

タイトル
「シブヤ、シブヤ」
出版社
平凡社
発売日
2007/6
価 格
4,104円(税込)
サイズ
26cm
ページ
198P

ベテラン写真家の石元泰博氏が渋谷を舞台に撮った写真集。


<飯沢さんのオススメポイント>
キャリアのある写真家であり、アメリカのモダンな写真のスタイルを日本にもたらしたことで知られる石元泰博(いしもと・やすひろ)氏の最後の写真集です。1921年アメリカで生まれた彼は、アメリカと日本の二重国籍を持ち、両方の国で活躍しました。日本では、桂離宮や仏像を撮っていた石元氏。そんな彼が、80歳を超えていきなり渋谷を舞台に、若者たちのファッションを撮り始めた。「なぜ、渋谷を?」と当然、皆、驚きました。最後まで写真家として意欲的に自分の世界を作っていこうと考えていたんだと思います。写真を見てもらえるとわかる通り、かなり被写体に接近して撮っている。80歳以上の老写真家がこの近距離でシャツやパンツを撮影していたわけで、さすがに不審者と間違われ何度も警察に不審尋問されたそうです。タイトルの「シブヤ、シブヤ」は、彼の出世作であり代表作である「シカゴ、シカゴ」(1969年)にかけたもの。老写真家の執念を感じる一冊です。

バックナンバー

オススメ記事