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「ハチ公と忠犬ハチ公像」展 開催中! 平和の象徴「忠犬ハチ公像」建立から70年目

「忠犬ハチ公像(2代目)」建立から70年目を記念して、「ハチ公と忠犬ハチ公像」展が8月11日(土)〜10月8日(月)まで、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館で開催されている。
誰もが知る「ハチ公物語」は、1932(昭和7)年の朝日新聞の記事掲載がきっかけ。「渋谷駅前で亡き主人の帰りを毎日待ち続けた」という老犬ハチの美談は一気に広がり、同時に全国から銅像建立に向けた寄付金が寄せられた。1934(昭和9)年、「西郷隆盛像」(鹿児島市)などの作品で知られる渋谷在住の彫刻家・安藤照さんの手により、渋谷駅前に「忠犬ハチ公像(初代)」が建立。ハチ公も出席した除幕式には、歩けないほど多くの人びとが駅や沿道を埋め尽くしたという。
昭和19年、太平洋戦争の戦況悪化に伴い、民間の金属回収運動が高まる。渋谷駅の目立つ場所にあったハチ公像にも供出の波が押し寄せるが、反対する声も多く戦争が終わるまで、保管所で保存されることになる。ところが戦争末期の混乱で管理が上手くいかず、結果的に浜松の工場で溶解されて、蒸気機関車などの部品になったと言われている。

戦後、復興と平和の象徴として「忠犬ハチ公像」の再建の話が持ち上がる。占領下の米・連合国軍司令部(GHQ)の後押しを受け、終戦から丸3年を迎えた1948年8月15日に「忠犬ハチ公像」が渋谷の街に復活する。2代目ハチ公像を手掛けたのは、初代を制作した照さんの長男・士(たけし)さんだ。東京美術学校(現・東京藝術大学)彫刻科で腕を磨くと共に、父が制作したハチ公像のこともよく知っていたことから、再建にはぴったりな人選だった。とはいえ、東京大空襲で初代ハチ公像の原形は焼失し、制作者である照さんも命を落としていた。そのため、2代目ハチ公像は初代のイメージを継承しながらも、初代コピーではない士さんの試行錯誤の後がうかがえる作品として生まれ変わった。

また制作過程には、もう一つ問題があった。金属供出から戦後も銅不足が続き、元型が出来ても直ぐに銅像に仕上げる事が出来なかったのだ。こうした中で、空襲の瓦礫から照さんの代表作である立像『大空に』がたまたま見つかり、士さんは父の作品を溶かして、2代目ハチ公銅像をなんとか完成される。鋳造中のトラブル等も重なりスケジュールは大幅に遅れ、8月15日の除幕式の当日は、まだ銅像が熱かったというエピソードも残っている。今日、観光スポットとして多くの人びとで賑わう「忠犬ハチ公像」は戦争に翻弄されながらも、親子2代にわたる想いが込められた合作であるのだ。
建立70年を記念する同展示は、「2代目ハチ公像の再建」に関わる資料や写真のほか、「ハチ公の生みの親」と呼ばれながら、一般にあまり知られていない日本犬保存会初代会長(現・日本動物愛護協会)の斎藤弘吉さんに関する新資料の展示や、亡き飼い主・上野教授の内縁の妻・坂野八重子さんとハチとの関係など、今まで光を当てられる機会のなかった人たちをクローズアップする。さらにヘレンケラーと忠犬ハチ公との意外なつながりなども紹介している。

再建から70年、皆さんが知る「ハチ公物語」とは異なる、もう一つのサイドストーリーにも注目してみてはいかがだろうか。

併せて9月29日(土)に講演会、9月8(土)・22(土)・10月7日(日)に展示解説が行われる予定。事前予約は不要。

「ハチ公と忠犬ハチ公像」展
〇会期:2018年8月11日(土)〜10月8日(月)11〜17時(最終入場16時半)
〇場所:白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(渋谷区東4-9-1)
〇料金:100円
〇公式:https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka/shirane_index.html

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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