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米発コワーキングスペース「WeWork Iceberg(アイスバーグ)」オープン、原宿からイノベーションを起こす

ニューヨークに本社を置き、世界22カ国283カ所以上でコミュニティ型ワークスペースを提供する「WeWork(ウィーワーク)が2018年8月1日、国内6拠点目で旗艦店となる「WeWork Iceberg(アイスバーグ)」(渋谷・神宮前6丁目)をオープンした。
▲渋谷と原宿の間、明治通り沿いに国内6拠点がオープン
そもそも国内におけるコワーキングスペースの広がりを振り返れば、空きビル、空きテナントの遊休不動産の有効活用策として、2011年ごろから渋谷を中心にスペースが出来はじめて、スタートアップ企業やフリーランス、ノマドワーカーらの利用者を巻き込みながら急増。都会的な「新しい働き方」の一つとして、次第に全国にもスペースが波及していったという経緯がある。最近ではフリーランスやベンチャー企業にかかわらず、大手企業でも「サテライトスペース」「テレワークスペース」、さらには企業間の垣根を超えたコミュニティやコラボレーションの場としての活用が目立ち始めている。もはや固定した席や、オフィスで仕事をする時代ではなくなりつつあるのだ。
こうしたワークスタイルの変革が進みつつある中で、海外から黒船のごとくやってきたのが、世界最大のコワーキングスペースの運営会社である「WeWork」だ。UberやAirbnbと並ぶ、米発ベンチャーのユニコーン企業として大きな注目を集めている。今年2月に東京六本木アークヒルズサウスタワーに1号店をオープンしたのを皮切りに、銀座、丸の内北口、新橋、日比谷公と続き、今回の渋谷・アイスバーグを含めて僅か半年足らずで6拠点目を数える。もともと遊休不動産の利活用から拡大してきた国内のコワーキングスペースとは異なり、その際立つ規模や設備の充実ぶりには目を見張るものがある。特にニューオープンしたばかりのアイスバーグは1〜7階までスペースを構え、定員700人を収容する巨大なキャパシティを誇っている。

先日、メディア向けの内覧会が開かれたので、アイスバーグの内部が一体どうなっているのかをいち早くご紹介したいと思う。
場所は神宮前6丁目、渋谷と原宿をつなぐ明治通り沿いの好立地。全面ガラス張りの建物は青みを帯び、「氷山」を意味する施設名称「The Iceberg(アイスバーグ)」のごとく、氷塊やクリスタルの結晶のようなデザインが印象的である。もともとアウディの大型ショールーム「アウディフォーラム東京」が入居していた建物といえば、「ああ、あのすごい建物ね」と分かってもらえるはずだ。
▲一般客も利用できるカフェカウンター
まず1F入口を入ると、すぐ目に飛び込んでくるのがカフェカウンターである。原宿エリアで人気を誇る「STREAMER COFFEE(ストリーマーコーヒー)」が運営を行い、WeWorkのメンバーに限らず、一般のお客さんの利用もできる。
WeWorkがプロデュースするカフェは世界初の試みで、このショップでしか味わえない限定のソフトクリーム「Milk Cream Typtoon(ミルク・クリーム・タイフーン)」や、濃厚な抹茶ラテ「Military Latte(ミリタリー・ラテ)」なども提供するという。
さてメンバーのみのスペースへと足を踏み入れてみたい。1Fカフェカウンターの奥には、メンバ−共用のコミュニティスペースが広がる。
天井高で開放的な空間には、リラックスできるソファー席や、仕事に集中できるテーブル席など、人数や用途に合わせた利用が可能。またDJブースやAV機器等も設置し、今後は同スペースで週2、3回のペースでゲストスピーカーを招いてのトークイベントやパネルディスカッション、メンバーによる新製品発表会、ワークショップなど、バラエティ豊かなコミュニティイベントを展開していく。
世代や業種、職種を問わずに様々な人びとが触れ合う交流の場として1Fフロアを位置づけ、新しい出会いの機会を提供していくという。
従来のコワーキングスペースとの違いについて、GM(ゼネラル・マネジャー)の高橋正巳さんは「単なるスペースプロバイダではなく、コミュニティに重点を置いている。アイスバーグはコンセプトとして『Center of Gravity for Entrepreneurs』を掲げているが、起業家マインドを持つ人たちがここに集まり、イノベーションンを起こす場にしてもらいたい」とアイデアやコラボーションを生むハブ的な役割を担いたいと期待を込める。
1Fにはセルフでコーヒーやお茶、ビールなどが自由に飲めるパントリースペースを設置。仕事の合間にちょっとひと息吐き、コーヒーを飲みながらメンバー間が親しく話し、互いに好意を醸成していく装置の一つとなっている。スペース内もストリーマーカフェがコーヒーを提供している。
夕方以降は、ビールを飲みながら談笑するメンバーの姿も多いという。
2階から7階はワークスペース。メンバープランは「ホットデスク(固定席のない会員)」「専用デスク(固定席のある会員)」「プライベートオフィス(チームの人数に合わせた独立した部屋)」の3つ。
▲2Fのワークスペース。ホットデスクプランに契約すれば、自由に使える
ちなみに固定席のない「ホットデスク」の月額利用料は10万1,000円〜。高速Wi-Fiのほか、コピーやプリンターも一定枚数までは月額内で利用できる。さらに日本初の取り組みとして、プライベートオフィスのみではあるが、犬を連れての通勤もOK。昨今、グーグルやアマゾンなど海外のIT大手企業では、社内コミュニケーションの活性化や仕事効率の向上も見込めるため、ペットとの通勤を許可しているというが、そうした新しいワークスタイルのトレンドもフレキシブルに取り入れている。
▲専用アプリから予約できる「個室スペース」
メンバーが打ち合わせや会議などを行う場合、メンバー専用のスマホアプリから用途に合わせて、形状や大きさの異なる個室スペースが簡単に予約できる。そのほか、電話やオンライン会議などに使える「ホーンルーム」や、子どもの授乳や宗教のお祈りなどに利用できる「ウェルネスルーム」なども用意されている。

個室スペースの予約のほか、出張や旅行、移動時など、自分が拠点とするホーム以外のWeWorkの利用を希望する場合も、専用アプリを通じて予約すれば、国内外どこのスペースでも利用ができる。年内には横浜(11月)、大阪(12月)、福岡(12月)など地方都市への出店も予定されていることから、今後、地方の支店・営業所をWeWorkに移す企業も徐々に増えていくのではないだろうか。さらにもう一つアプリが優れているのは、世界25万人のメンバーと瞬時にやり取りできる機能を有している点だ。新製品やイベント等の告知はもちろん、アイデアや課題に対するディスカッションなどもメンバー間で行うことが出来るという。「単なるスペースプロバイダではなく、コミュニティを提供する場である」と強調する理由が、こんな点からもうかがえる。
▲天井高で開放感のあるフロア
現在、「シェアリングエコノミー」という言葉がイノベーションのキーワードの一つになっているが、WeWorkではスペースやアイデア、ネットワークなどの「共有」のほか、各国の施設づくりの点において、もう一つ大事にしているのが「光のシェア」なのだという。「自然光は人びとのクリエイティビティを喚起する効果が持つため、WeWorkでは窓が多い建物に拠点を持つことが多い。メンバーと『光』を共有できるという点で、(全面ガラス張りの)アイスバーグは我々が考えるコミュニティづくりにぴったりの場所だと考えている」(高橋さん)。
アイスバーグは360度どの角度からも光が差し込み、日中なら照明なしでも十分に明るい。

今回メディアに公開されたのは、共用エリアの1、2階のみ。3〜7階のフロアは、プラベートオフィスのため、残念ながら見学することが出来なかった。渋谷、原宿かいわいは日本で最もコワーキングスペースが集積しているエリアで、Wi-Fi環境を求めるワーカー向けに小規模の「ドロップイン型」から、「コミュニティ型」「シェアオフィス型」まで大小様々なスペースがある。こうしたコワーキングスペース激戦区の中において、WeWorkの月額利用料金は他のスペースの相場よりも、2〜3倍くらい高いのではないかと思う。とはいえ、国内6拠点(年内に9拠点に拡大)、世界を含めれば、22カ国75都市283カ所以上で展開する規模から、世界を股にかける、またはこれから世界市場の進出を狙う起業家やベンチャー企業にとってはとても利便性が高そうだ。加えて入居するベンチャー企業やメンバーの質も高く、人脈づくりやコラボレーションの相手を探す場としては申し分ない環境といえそうだ。高いと見るか安いと見るか、その判断はやや難しいところではあるが、立地と設備、アメニティ、コミュニティという点からすれば、とても魅力的なワ−クスペースといえるだろう。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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