海外市場を目指せ!「ジャパンブランド」への熱い想いが集結したイベント開催
<イベント概要>
JAPAN BRAND FESTIVAL 2018〜「フロムジャパン」がつながり拡がる3日間
〇開催:2018年3月2日(金)〜4日(日)
〇会場:渋谷ヒカリエ8Fのイベントスペース「8/COURT」/ギャラリースペース「CUBE」
◯主催:JAPAN BRAND FESTIVAL 実行委員会
◯公式:http://jbfes.com/
「ジャパンブランド」に関わる人びとが集結するイベント「JAPAN BRAND FESTIVAL 2018(ジャパンブランドフェスティバル)『フロムジャパン』がつながり拡がる3日間」が2日(金)〜4日(日)の期間、渋谷ヒカリエ8Fの「8/COURT」と「CUBE」で開催された。
現在、全国各地の行政や中小企業などが「メイド・イン・ジャパン」「ジャパンブランド」の発信を世界に向けて展開している。3回目となる今回の「ジャパンブランドフェスティバル」でも、特に日本企業の99%を占めると言われる中小企業を支援して産業を盛り上げていくため、これらの人びとが集う場を提供し、トークセッションや商談会などを通じての情報共有を目指している。いわば、ジャパンブランドに情熱を傾ける人なら誰でも参加できる現代版「楽市・楽座」を作ろうとしているのだ。
取材を行ったイベント初日となる2日(金)は、オープニングセッションのほか、プラットフォームメンバー(出展者)によるトークイベントなどが賑やかに行われていた。今回のレポートでは、そのトークイベント中からピックアップして紹介し、ジャパンブランドフェスティバルの雰囲気や様子をお伝えしたい。
|江戸小紋をムスリムへ、自分たちが気づかないところに魅力がある。
東京の地場産業の一つである「東京染小紋」。その染色事業者が中心となって組織する「東京染小紋海外市場進出促進委員会」では「江戸小紋をムスリム市場に売る!」と題して、上質で伝統のある「東京染小紋」をムスリム市場に向けて販売するプロジェクトをプレゼンテーション。3年前のスタートから現在まで、紆余曲折しながらの成果を振り返っていた。
江戸小紋を手掛ける富田染工芸の富田篤さんは、全世界にイスラム教徒(ムスリム)が16億人以上いるとされていることに注目。その女性が日常的に身に付ける「ヒジャブ」に江戸小紋を活かせないかと考えたという。だが、ムスリムが多いマレーシアで市場調査をしたところ、日常使いのヒジャブは低価格で求められている傾向にあることが判明。そこで、現地の人気デザイナーらと組んでコレクションとして発表することに方向転換したというのだ。デザイナーと何度も打ち合わせをしてコレクションを発表した結果、すぐに完売するほどの人気を博したという。
富田氏に現地デザイナーを紹介したのは、イスラム圏とのビジネスマッチングなどをサポートするヴィラーゴの中村直子さん。自分が売りたいと考えている地域(ローカル)のニーズをつかむ重要性を指摘した上で、「1点だけ言いたいのは、自分の商品に自信があると売りつける傾向にある。実は自分たちがいいと思っていているところが相手にとって必ずしもその商品の魅力でなかったりして、逆に自分たちが気づいていないところを魅力だと思ってくれているケースもある。今回のようにディスカッションを重ねて、お互いに理解できれば進出できるのではないか?」と中村さんは来場者に向けてアドバイスを送った。
富田さんも「最初はヒジャブをやれば絶対売れると思っていました。しかし、現地に行ってみたら彼らの感覚って違うんですよね。そこで戦略を練り直した。我々は衣料でやっていますが、(衣料以外でも)まだまだ日本製品が欲しいという人がいっぱいいると思う」と、ジャパンブランドの海外進出を呼び掛けた。
|日本の伝統的な織りの技術を活用して、都市の暑い夏を変える。
続いて、「心地よさ」をテーマに都市温暖化対策に取り組む「こもれびシティプロジェクト」が登壇し、「都市を一夜で森にする!心地よさから始まる都市づくり」をテーマにプレゼンを行った。夏の強い日差しを受けて木々の葉が生み出す「こもれび」に着目し、電力を使わずに「布」を使って人工的にこもれびを作り、真夏の暑さ対策を実現するという取り組みだ。
同プロジェクトでは、自然の樹木の構造などを研究して布製の「フラクタルひよけ」を開発。羽田空港に設置して計測したところ、日射遮蔽率は83.4%で、15度以上の冷却効果もあったという。さらに、「フラクタルひよけ」製作は繊細なことから、日本の伝統的な織物技術を生かしていると紹介。現在は祭りの会場や動物園などに導入されているほか、世界でも注目を集め始め、カンボジアのホテルや中国の「太極拳の庭」などにも設置されているそうだ。
「こもれび」は確かに心地よく、電力を使わずに空間を作れるのが一番の魅力。日本より暑い国がたくさんあることから、今後、この技術はもっと世界に広まっていくのではないだろうか。
また初日ということで、オープニングセッションも開催された。実行委員の二本柳友彦さんと堀田拓哉さんは、3回目となる今回を機に「協創プラットフォーム」としての役割を強めるとし、「本気で求める人には必ず応えるネットワークを築く」と宣言。例えば、海外の展示会に出展したい人には事業支援の情報を提供などと、プラットフォームを通じて本当に必要な関係性を築かれる場を提供していくという。
そのほか、トークイベント会場と隣接するギャラリースペース「CUBE」では、日本の魅力を発信するため、外務省が積極的に海外で進める「ジャパン・ハウス」に関する紹介をはじめ、ラジオ番組「日本カワイイ計画。with みんなの経済新聞」と宮城県の水産加工品メーカーがコラボして生まれた「蘇るサバ缶」や、兵庫県篠山市の「丹波焼」の事例など、13のプラットフォームの活動が展示された。担当者の話に熱心に耳を傾ける来場者の姿も見られ、「ジャパンブランド」への関心の高さをうかがわせた。
今回のイベントで感じたのは、自分たちが手掛ける「ジャパンブランド」への誇りと海外に展開していきたいという地方の中小企業や職人たちの熱い思い。難しいことも多々あるだろうが、このプラットフォームがうまく機能し、世界中の人々が素晴らしい「メイド・イン・ジャパン」に触れる機会をたくさん作ってもらいたい。
重野マコト
社会部記者として新聞社に入社後、イベントプランナー、コンテンツディレクター、飲食店経営を経て、現在はフリーライター。インタビューやイベントレポートなどの現場取材をメインに活動する。