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貞淑で無邪気なガーリームービー

先日、シアター・イメージフォーラムでリバイバル上映されていた映画『ひなぎく』を鑑賞しました。チェコの女性監督、ヴェラ・ヒティロヴァーが1966年に製作したものの、反政府的な表現が当局の検閲に引っかかり、90年代になってようやく公開されたという経緯があるそうです。




内容は「岡崎京子の漫画に出てきそうな女の子二人組がやりたい放題な行動をとる」ことに尽きますが、気持ちいいほどに自由に立ち回る二人の行動に女の子ならずとも共感を覚える人も多いでしょう。Aラインのワンピースやオプティカル柄の水着といった60年代ファッションや小物で着飾り、よくおしゃべりをして跳びはね、あらゆるものをハサミで切り刻み、部屋の中を飾っている紙に火を付けて燃やしてしまう。そしてよくモノを食べるシーンが多いので、見終わった後、とにかくなにかをお腹いっぱい頬張りたくなるような映画でした。




“お洒落なガーリームービー”としてルックス的な評価の高い作品ではありますが、反体制的で政治絡みのメッセージも随所にちりばめられ、同じくチェコを代表する映画監督、ヤン・シュヴァンクマイエルの『ルナシー』などにも通じる、表現の自由を求める表現者としての気概を感じさせる部分が多々ありました。ラストシーンで唐突に流れる戦争のイメージや、「無邪気・貞淑」を意味する花、ひなぎくをタイトルにする辺りもなかなか皮肉が効いています。版ズレやコラージュ、カットアップなど映像自体も実験的な試みが多く、とりわけ、赤青黄のセロファンをかぶせたような風景の中、列車が光の糸を引きながら早回しで疾走するシーンが、この映画の楽しさと監督の意志を表しているようで、観ていてとても気持ちの良い瞬間でした。

(写真は映画『ひなぎく』より)

編集部・M

1977年東京の下町生まれ。現代アートとフィッシュマンズと松本人志と綱島温泉に目がないです。

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