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【レポート】109前で「渋谷盆踊り」が初開催−外国人旅行者らの参加も

8月5日(土)、渋谷の気温は32℃。比較的に過ごしやすい1日となった週末、道玄坂・SHIBUYA109を中心として道玄坂、文化村通りで「第1回 渋谷盆踊り大会」が初めて開催された。地元の住民をはじめ、たまたま居合わせた来街の若者たちや、外国人旅行者などが多数参加し、交差点内に「盆踊り」の大きな輪を作って大いに盛り上がった。

渋谷スクランブル交差点の交通規制の始まった16時半から盆踊り本番まで、当日の様子を時系列でレポートしていきたいと思う。
夏休みの週末、若者や外国人旅行者などでごった返す渋谷駅周辺。事前の告知通り、16時半ちょうどから渋谷駅前のスクランブル交差点西側道路、文化村通り、道玄坂(「SHIBUYA109」)周辺エリアで大規模な交通規制が実施された。
警察のリードのもと、スクランブル交差点の真ん中には、「盆踊り」に合わせて紅白のガードブロックが縦に並べられ、左右を大きく分断して109側への自動車の進入を規制。ハロウィンやカウントダウンなどでも交通規制の経験を持つだけに、こうした対応は手慣れたものだ。
16時半の交通規制と共に、109前の広場にはやぐらとステージ、交差点内には盆踊りの中心となるお立ち台の設営が開始。
本場開始の18時まで、僅か1時間半の間に設営をすべて終わらせる必要があり、慌ただしく準備に追われる関係者の姿が目立った。今回の盆踊りは、渋谷道玄坂商店街振興組合を主催とし、渋谷道玄坂青年会を中心に企画や準備を進めてられてきたもので、あくまでも街の活性化を目指す商店会主導の手作りイベント。主催者不在のハロウィンとは、その点で大きく異なる。そのため、警察の介入は極力抑えられ、商店会のほか、学生らのボランティアスタッフ約80人を中心に民間で警備などが進められていた。
定刻通り、18時から大きな太鼓の音と共に渋谷駅前初の盆踊りがスタート。オープニングでは、渋谷区の子ども達を中心に渋谷道玄坂商店街振興組合・大西賢治会長、渋谷道玄坂青年会・長谷川賀寿夫さん、長谷部健区長らが登壇し、会場を囲むように設置された提灯の点灯式が実施。
赤い提灯が一斉に点灯されると同時に、薄暮時の落ち着いた雰囲気からお祭り気分へと会場のテンションも一気に上がった。
イベント冒頭の挨拶で長谷部区長は「今後、渋谷は国際都市として成熟していく。盆踊りなど日本の伝統文化が都心で引き継がれていくことが大事だと思う。渋谷を愛する多くの人びとが集まって、交じり合いながら、新しい価値文化を渋谷から日本へ、世界へ発信していきたい」と、「盆踊り」通じて渋谷をアピールしていくと語った。
盆踊りの1曲目には、元祖「渋谷系の女王」である歌手・野宮真貴さんが登場し、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」をテーマとする「渋谷区基本構想」のPRソング『夢みる渋谷 YOU MAKE SHIBUYA』の盆踊りバージョンを生熱唱。
野宮さんの透明感のある歌声、ポップなサウンドは、盆踊りソングとは思えぬオシャレ感が会場を包み込んだ。渋谷らしい盆踊りの幕開けといえる。
2部では進行役にテリー伊藤さんが登場し、3年後の東京オリンピック・パラリンピックに向け、新しい「東京五輪音頭-2020-」が披露された。かつて1964年の東京オリンピックでは、三波春夫さんが歌う「東京五輪音頭」がテーマソングとして大ヒットを飛ばしたが、2020年の大会に向け、その現代風のリメークバージョンが発表された。歌うのは石川さゆりさん、加山雄三さん、竹原ピストルさん、 歌詞も振り付けも2020仕様。会場には振付を担当した井手茂太さんが登壇し、「2020」「(新採用競技である)空手・野球・ソフトボール・スポーツクライミング・スケートボード・サーフィン」などの要素を盛り込んだ盆踊りの振り付けを紹介しながら、会場の参加者と共に「東京五輪音頭-2020-」を踊った。
どこか懐かしくて、新しい。1964年の前回大会を知る世代から、全く知らない若い世代まで、老若男女問わず愛される音頭となりそうだ。
続いて、3部ではauのスポンサー枠。auのテレビCMでお馴染みの浦島太郎扮する俳優・桐谷健太さんがサプライズ登場。6月よりオンエアを開始している新CMで、桐谷さんが歌っている盆踊りソング「三太郎音頭」のほか、三線を弾きながらヒット曲「海の声」も熱唱。
「たとえ僕が おじいさんになっても ここで歌っている…」という歌詞の部分を、「たとえ僕が おじいさんになっても 渋谷で歌っている…」と変えて歌うなど、桐谷さんらしいサービス精神あふれるステージで、イベント全体を通して一番の盛り上がりを見せた。
その後、4部ではスタンダードな盆踊りソングを中心に展開し、イベントは21時過ぎまで続いた。主催者によれば、当日の総参加人数は約34,000人を数えたという。

7月21日に「渋谷盆踊り」に開催が発表され、ネット上などでは「大きな混乱が起こるのでは?」など、様々な問題を指摘する声も目立ったが、蓋を開けてみれば、意外や意外、思った以上に平和で落ち着いたお祭りとなった。
ハロウィンのような混雑や混乱を不安視、警戒していた人にとっては肩透かしとも言えるかもしれないが、渋谷の街の中でも、子どもからお年寄りまでが楽しめる盆踊りの開催ができることが証明された。盆踊り全体を通して見ていて感じたのは、「盆踊り」はそもそも死者の霊を鎮魂するためのもの。幼少期から盆踊りソングが身体に馴染む日本人にとっては、盆踊りソングを聞くだけで、なぜか懐かしくノスタルジックな気持ちになり、とても平和で落ち着いた気分にさせられる。盆踊りソングには、人を優しくする効果がきっとあるのだろう。
もちろん、全く課題がなかったわけでもない。踊っている人よりも、スマホで写真を撮影している人のほうが圧倒的に多かったという印象も残る。たまたま渋谷に来街した人や観光客がもっと気軽に参加できたり、踊りの輪を広げていく工夫などは必要だろう。
「渋谷」と「盆踊り」の組み合わせは意外に悪くないことが分かった。今後、夏の恒例イベントとして、ぜひ定着することを期待したい。

(記事:藤井 貴 /写真:松葉 理)

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