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渋谷にファミリー・女性層狙う「MEGAドンキ」−「生鮮食料品」「地域連携」強化

渋谷・文化村通りに5月12日、ドン・キホーテの旗艦店となる「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」がオープンし、大きな話題を集めている。とはいえ、渋谷初進出というわけではなく、もともと東急百貨店本店向かいに「ドン・キテーホ渋谷店」があった。今回のMEGAドン・キホーテ渋谷本店の新規オープンに先立ち、ドン・キホーテ渋谷店は5月7日に18年間の営業を終了している。

ではなぜ、目と鼻の先に新規オープンしたのだろうか?

◎キーワードは「生鮮食料品」「地域連携」
その理由は、ファミリー・女性層に向けた「生鮮食料品売場の新設」と「渋谷エリアに特化し売場づくり」だ。具体的にその理由を紐解いていきたい。1999年にオープンした「ドン・キホ−テ渋谷店」は、ドン・キホーテ20番目の初期店舗の一つ。当時のドン・キホーテは、20、30代のシングル層をターゲットとし、主に高級ブランドや家電、化粧品、パーティグッズ、食品などを取り扱い、狭い通路に「ジャングル」のように圧迫陳列した売り場づくりが特徴だった。渋谷店オープンから18年、その間にドン・キホーテ グループの店舗数は360店舗以上に拡大。特に郊外店舗では従来の若者シングル層のみならず、ファミリー層、女性層までターゲットが広がるなど飛躍的に成長を遂げている。
MWGAドン・キホーテ渋谷本店 地下1F 生鮮食料品売場
その成長を後押しした一番の要因が、2008年の総合スーパーマーケット「長崎屋」の買収だ。もともと長崎屋だった大型店舗は、「野菜」「肉」「魚」「惣菜」を中心とする生鮮食品売場を持つ「MEGAドン・キホ−テ」としてブランドを変更。シングル層向けの「ディスカウントストア」だったドンキが、ファミリー・女性層向けの総合スーパーマーケット」へと変身を遂げるターニングポイントとなった。
地下1F生鮮食料品フロア。広い通路、清潔感あふれる店内
今なお、ドンキを若者向けのディスカウントストアとイメージする人が多いかもしれないが、武蔵小金井や立川、東久留米など「MEGA業態」が集積する東京西部の住人にとっては、スーパーの一つとして捉えている人もきっと少なくないだろう。今回新規オープンした新店舗は、都心最大の「MEGA業態」となる。旧渋谷店が地下1階から地上3階の計4フロアであったのに対し、新店舗は地下1階から地上6階の計7フロア(売場面積5,522平方メートル)で、売場面積が約3倍に拡大。商品アイテム数は従来の約4万点から約8万点に倍増するという。また、表玄関は文化村通り沿いの大通りに、裏玄関はセンター街に面するなど、立地の良さも見逃せない。 ヤマダ電機の斜向かい、H&Mに隣接する好立地
売り場面積の増床、立地は申し分ない。とはいえ、郊外やロードサイト型の「MEGA業態」を、なぜ渋谷で展開する必要があるのだろうか?

◎渋谷の買い物難民救う、駅近の「生鮮食料品売場」誕生
先日オープンした渋谷キャスト1Fに「東急ストア フードステーション」開業の際にも触れたが、渋谷駅周辺は大型・小型含めて「スーパーマーケット不毛地帯」で、「買い物難民」に陥る渋谷住人たちも少なくない。駅から約800メートル先に「ライフ渋谷東店」はあるが、やはり歩くにはやや遠い印象だ。今回の新店舗の商品構成は、生鮮15%、食品20%、日用雑貨・消耗品35%、トレンド品(パーティグッズなど)30%で、旧店舗では取り扱いのなかった生鮮食品が15%を占める。いわば、買い物難民を救う、待ちに待った駅近の「生鮮食料品売場」の誕生と言えるのではないだろうか。
参考記事: 渋谷キャストに「東急ストア フードステーション」出店(2017年4月28日掲載)
さて、地下1階フロアに設けられた生鮮食料品売場を具体的に見ていこう。野菜・果物は毎朝、東京の台所である「太田市場」で買い付けた鮮度の高いものが並ぶ。
玉ねぎや人参、大根、キャベツなどの家庭需要の多い野菜はもちろん、若者、女性人気の高いトマトは数多くの品種がそろえられている。魚類はやや生魚の取り扱いが少なく、ファミリー向けにはやや物足りないかもしれない。生鮮4品の中で、特に目を見張ったのは「精肉コーナー」だ。
牛や豚、鶏肉、ひき肉類などの定番から、焼肉やステーキ用のパーティ需用に向けたパック、さらに「神戸牛」専門カウンターが設けられるなど、幅広い用途や価格帯の商品が展開されている。
「神戸牛」は「KOBE BEEF」と表記され、海外でも人気の高い和牛を外国人観光客向けにアピールする狙いがうかがえる。

◎施設内で調理する「出来たての惣菜・弁当」、モバイルフードも充実
サラリーマンやOL層のランチ需用に応えて、お弁当や惣菜のバリエーションも多い。渋谷店ならではの商品群では、箸などを必要とせず、手持ちで食べられる「おにぎらす」「手巻き寿司」「カップ入りのから揚げ」などの「モバイルフード」が目立つ。
お弁当や惣菜に貼られたシール(写真右下)をよく見ると、製造者欄に「MEGAドン・キホーテ渋谷本店 渋谷区宇田川…」という表記が確認できる。販売スタッフに聞いてみたところ、同7階にキッチンスペースを設け、すべての調理をそこで行っているのだそうだ。施設内にキッチンスペースを持つことは、売れ行きを見ながら製造を微調整でき、食品の廃棄ロスを減らせるという店側のメリットがある。さらにお客さん側にとっても「出来たての惣菜」が食べられるという利点が高い。地域性に合わせた季節メニューの投入や、顧客ニーズに合わせた柔軟なカスタマイズもしやすいだろう。
「駅近」「安値」の生鮮食品売場は、渋谷で暮らす地域住人はもちろんのこと、渋谷で働く人、渋谷で飲食店を営む人びとにもありがたい存在と言える。例えば、渋谷で働き、郊外に住むサラリーマン、OLの場合、仕事で帰宅が遅くなると自宅近くのスーパーの営業時間に間に合わないということも少なくないだろう。新店舗は24時間営業のため、渋谷で買い物を済ませてから帰宅するという新たな選択肢が増えそうだ。

◎近隣飲食店ニーズに応える「業務用カット野菜」の注文
文化村通りやセンター街周辺で、飲食店を営む店主にも朗報がある。万が一、営業中に食材を切らしたとしても、近くに24時間営業しているお店があれば心強い。さらに飲食店向けの新サービスとして、「業務用のカット野菜」の注文販売を始めている。
例えば、人参の場合、短冊、銀杏3mm・5mm、乱切5g・10g・20g、千切り、みじん5mm、皮むきと計8種類、量も300g、500g、1kgなどのバリエーションがある。人参以外にも大根、かぼちゃ、かぶ、ピーマン、レタス、じゃがいも、玉ねぎなど、飲食店で展開するメニュー内容に合わせて、様々なカット野菜が用意されている。そのほか、野菜以外でも業務用のハムやソーセージ、漬け物等々、大容量の商品がそろう。いずれも「地域最安値に挑戦」を掲げており、大都会・渋谷らしからぬ値付けにテンションが上がるはずだ。

◎インバウンド需用に応える「渋谷みやげ」販売
「生鮮食品売場」のほか、もう一つ新店舗のアピールポイントがある。それが「渋谷エリアに特化した売場づくり」だ。昨年の秋、渋谷区の「ハロウィンごみゼロ大作戦 in 渋谷 2016」に同社が賛同し、トイレや更衣室の提供や、ゴミの持ち帰りなどマナー向上を呼び掛ける活動に参加。その活動をきっかけとして、渋谷で商売をする一企業として「地域連携」を深めている。新店舗で「地域連携」を最も意識した売場が、1Fフロアに設置された「渋谷みやげ」コ−ナーだ。「忠犬ハチ公像」「スクランブ交差点」など、渋谷には外国人観光客を集客できるコンテンツがあるにも関わらず、名物と言える「おみやげ」が全くない。ドン・キホ−テグループ全体の数字を見ても、インバウンドの売上の高い上位店舗は、1位「道頓堀御堂筋店(大阪)」、2位「道頓堀店(大阪)」、3位「国際通り店(沖縄)」。都内店舗では、5位「新宿東口店(東京)」、7位に「銀座本店(東京)」がランクインしたが、渋谷店はベスト10圏外だという。以前から問題視されていることだが、渋谷のまち全体として「渋谷みやげ」を充実させていくことが大きな課題とされている。
そこで新店舗では外国人観光客へのアピールを狙い、渋谷の名所や「ハチ公」「モヤイ像」「ガングロ」などをモチーフにしたクッキーやケーキなど、渋谷区観光協会が推奨する「渋谷みやげ」を一番目に付く1Fフロアで展開。「渋谷みやげ」のほか、「東京みやげ」「各地方のみやげ」などインバウンド需用に応える「日本全国のみやげ」も数多くそろえている。また、3Fの免税カウンターでは、英語・韓国語・中国語が話せるスタッフを常駐させ、外国人観光客の対応に備えている。
免税カウンター横には、外国人に人気のガチャポンを設置。特にワンピース、ドラゴンゴールなど、マンガのキャラクターものが人気だという。

◎タイバ−シティを目指し、LGBTにも配慮した「個別トイレ」
『ちがいを ちからに 変える街。渋谷区』をスローガンに掲げ、渋谷区が推進する「ダイバーシティ型のまちづくり」にも積極的に取り組む。中でも注目は「男性用トイレ」「女性用トイレ」、障がい者や赤ちゃんを抱える親子向けの「多目的トイレ」に加え、性的マイノリティ(LGBT)に配慮し、性差関係なく誰でも自由に使える「ALL GENDER(オールジェンダー)の個室トイレ」を導入している。隣の男性、女性トイレが混み合っているときなどにも便利だ。 そのほか、店舗内のエスカレーター、エレベーター、各フロアのサインなどに「渋谷スクランブル交差点」をイメージさせるデザインや、渋谷の街の写真を内装に取り入れ、「渋谷との地域連携」を意識した店づくりが行われている。
「生鮮食料品」「地域連携」「インバウンド」を強化した新店舗。売上目標は年商100億円(旧店舗の年商40億円)、1日の来客数は1万人を目指すという。ファミリー、女性層も取り込む郊外型の「MEGA業態」が渋谷で成功するのか、今後の動向に注目が寄せられる。ただ、ひと昔前の若者向けのジャングル陳列のドンキをイメージし、敬遠されている方も多いかもしれないが、かつてのドンキとは異なり、売場通路も広く店内も清潔感にあふれている。一度、偵察がてら店内をのぞいてみて欲しい。きっと印象が変わるはずだ。

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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