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再開発が進む今だからこそ、「街の記録」として保存しておきたい一冊

再開発に伴い、日本一激変する街「渋谷」。「さみしい〜」などとノルタルジーに浸っている暇がないほど、私たちが見ている街の風景は刻々と変わっていく。

こうした街の変化を記録するべく、現在、マガジンハウスから「Hanako FOR MEN 特別保存版 渋谷(区)新地図」が発売されている。すでに手に入れたという渋谷人もきっと多いことだろう。

同企画のナビゲーター役は、生まれも育ちも原宿という、ミュージシャン・小宮山雄飛さん。小宮山さんと渋谷に縁の深い145人のキーパーソンたちが、お薦めするお店やスポット215軒をガイドするという構成だ。

巻頭では小宮山さんと、かつてチーマ−として渋谷の街でヤンチャをしていたZeebraさんが対談し、80年代の渋谷の音楽シーンを振り返る。昼の渋谷区観光大使である小宮山さんと、夜の渋谷区観光大使ナイトアンバサダーであるZeebraさんのお二人は「これから渋谷でしかできないことを仕掛けていきたい」と意気投合。
若い頃はとても近づける雰囲気ではなかったZeebraさんですが、だいぶ角が取れたような。渋谷で遊んでいた若者たちが歳を重ねて、自分の原点である地元渋谷に回帰する姿はどこか微笑ましい。

同特集では「渋谷(区)新地図」として、「宇田川町/道玄坂/円山町/神南/神泉町」「上原/西原/元代々木/富ヶ谷1丁目/代々木4・5丁目/初台」「渋谷1〜4丁目」「松濤/神山町/富ヶ谷2丁目」「桜丘町/南平台/鉢山町/猿楽町/代官山町/鶯谷町」「笹塚/幡ヶ谷/本町/大山町」「千駄ヶ谷/代々木1・2丁目」「神宮前1〜6丁目」「東1〜4丁目」「恵比寿/恵比寿西/恵比寿南/広尾」と10エリアに分類。駅周辺の繁華街から高級住宅地、ラブホ街、若いオーナーたちが集積するカルチャー色の強いストリートなど、各エリアでガラリと変わる街の個性や雰囲気を、誌面を通じて丁寧に伝える。「人種のるつぼ」「モザイク」「カオス」「マルチカルチャー」「ダイバーシティ」など渋谷の街は様々な言葉で表現されることが多いが、多様な人種や文化、年齢、職業などを受け入れる寛容性の高さこそが、渋谷の街の一番の魅力と言えるだろう。
たとえば、道玄坂エリアでは、ITベンチャーが集積する「新大宗ビル3号館」に取材し、入居する若き起業家たちを取り上げるなど、新たな街のトレンドをいち早く捉える。また店主の対面接客が楽しい居心地の良いカウンターのある飲食店やコーヒースタンド、ミュージックバーなど幅広い道玄坂エリアの魅力を紹介する。奥渋谷として人気急増中の松濤・神山町エリアでは、個性派カフェや神出鬼没なオシャレ屋台バーなど。笹塚・幡ヶ谷エリアでは、古き良き昭和の雰囲気を残す商店街や笹塚ボウルなど、渋谷が持つバラエティ豊かな街の面白さに改めて気付かされる。

そのほか、長谷部区長、酒場ライター・吉田類さん、NHKプロデューサー・尾関憲一さん、歌手・野宮真貴さん、作家・角田光代さん、放送作家・小山薫堂さんなど、渋谷と縁のある著名人がお薦めする私的なスポットはとても興味深い。

日ごろ渋谷で働く人、遊んでいる人、住んでいる人でさえも満足させる十分な情報量。ただ、雑誌の大きさがA4ワイドと大きいため、「ガイド片手にお散歩」というわけにも行かないが、気になるところはメモ代わりにスマホなどで写真を撮って持ち歩くのもいいだろう。もちろん渋谷の街の新陳代謝は早く、最新のガイドブックでも、明日もそこにそのお店があるかどうか分からない。5年後にはガイドとしての役割を果たさないかもしれない。とはいえ、2016年時点の「街の記録」を収録した資料としては興味深く、永久保存版として取っておきたい。新旧が混在する今しか残せない、街の記録がたくさん詰まった一冊と言えるだろう。

Hanako FOR MEN 特別保存版 渋谷(区)新地図。
ホフディラン小宮山雄飛が145人の仲間とローカル渋谷215軒をガイドする

〇出版社:マガジンハウス
〇ページ: 114ページ
〇発 売:2016年10月24日
〇サイズ:30 x 23.4 x 0.8 cm
〇定 価:741円(税別)

編集部・フジイタカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。

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